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3話 夕食会

ヒロコは、お隣さんに連れられ、お隣さんの部屋に入る。

入り口からの間取りはヒロコの部屋とほぼ同じで、ダイニングとリビングの二部屋だった。

ダイニングには料理道具が一式揃っていて、お隣さんが料理にこだわっていることが伺える。

一方で、リビングの中は子綺麗に整えられていて、勉強机の上に可愛らしい小物やぬいぐるみが置いてあった。

さらにベッドの上にも抱けるサイズのぬいぐるみが置いてあった。

掛けられている服も、年相応に可愛らしい感じで、ヒロコは胸がキュンとなりつつも、

自身の部屋とまったく違うので居心地の悪さのようなものを感じた。


お隣さんに案内されるがままに、ヒロコは室内の中央の座卓にある座布団に腰掛ける。


「あの、ハンバーグってお好きですか?」

「好きです。」

そう、答えると、お隣さんは嬉しそうにレジ袋からミンチと玉ねぎなどの具材を取り出す。


「ご飯足ります?」

「はい、大丈夫ですよ。」

お隣さんは、笑みを浮かべそう答えると、炊飯器の蓋を開けて、中を見せる。

見ると二合ほど炊かれているようで、二人でも足りそうだった。

もし、私がいなかったら一人で食べたのか?ヒロコは思った。

お隣さんは炊飯器を閉じると、フリフリのエプロンを着用し、料理支度を始めた。


ヒロコはどう切り出そうかと少し迷ったが、直球で尋ねることにした。

「ところで、聞きたいんですけど、名前教えてもらってもいいですか?」

「あっ!すいません、私自己紹介してなかったですね。」

お隣さんはポカンとした後に、驚いたような笑みを浮かべながら言った。

そして、慌ててエプロンを外すと、ヒロコに向き合う形で座る。


「私は、ノゾミと言います。最近このマンションに引っ越してきました。」

「ノゾミさんは、机の上の教科書からして、学生さん?」

「はい、そうなんです。大学生二年生です!」

「へー。若いなぁ。もっと若く見えるけど。」

「えぇ、そうですかぁ?」

フフっと可愛らしくノゾミは笑った。

そして、何か伺うような表情をした。


「あぁ、私ね。私はヒロコ。一応社会人。このマンションは数年前から住んでいます。」

「ヒロコさん、ですね。」

ノゾミは可愛らしく何度もヒロコの名前を唱える。

「ノゾミさん、ノゾミちゃんでいいかな?」

「はい、大丈夫です!!」

ノゾミはそう言うと嬉しそうだった。

そして、エプロンを再び着ると、料理の支度を始めた。


ノゾミが料理している間、ヒロコは手持ち無沙汰だったので、机の上の教科書を開いてみたり、ノゾミの料理する姿を見ていた。

ノゾミは手慣れた動きで、玉ねぎをみじん切りにし、ミンチと混ぜ合わせハンバーグを形作っていく。

フライパンを熱し、ハンバーグを焼いていく。

部屋の中に香ばしく食欲をそそる匂いが蔓延する。

ヒロコは久しぶりの手料理に、実家にいるような、心暖まる気持ちになった。


「お待たせしました。」

ノゾミがそう言うと、ハンバーグ、ライス、野菜の盛り合わせをお盆に乗せて、食卓に運んでくる。

料理は見た目も香りからも美味しそうだった。

「いただきます。」

二人は合掌すると、料理にお箸をつけていく。

料理は美味しく、ヒロコはついつい会話も忘れ、食べ続ける。

普段家で食べる料理と違い暖かく、美味しいので、最後には腹八分を超えて食べてしまった。

もうそんなに食べすぎていい年でもないかったが、満足感で一杯だった。


「ごちそうさまです。本当に美味しかった。」

「フフッ。お粗末様でした。」

ノゾミも、ヒロコが美味しそうに食べるのを見て満足したのか優しい笑みを浮かべていた。

その笑みを見て、ふと、ヒロコは思っていた疑問を聞くことにした。


「ところで、ノゾミちゃんは、何で私を夕ご飯に誘ってくれたの?」

「え!?そ、それは。」

ノゾミの慌てた様子からして、ヒロコは察した。

これは惚れられたなっと。いやー時々あるんだよね。これがみりょ


「……食材を買い過ぎちゃったんです!!」

「え?」

「本当は今日友達とか来るはずだったんですけど、みんな来れなくなって。」

「あっそうですか。」

ヒロコは残念そうに拗ねたように言う。

「でも、ヒロコさんに偶然会えて、来てもらえてよかったです。」

「……。私もこんなに美味しい料理食べれて嬉しかった。」

ヒロコは照れて、呟くように言った。


「あの、もしよかったら、また一緒に夕ご飯食べませんか?」

ノゾミは頬を染め、ヒロコに向かって言った。

「……。都合が合えば良いですよ。」

ヒロコがそう言うと、ノゾミは嬉しそうに微笑んだ。


夕食会はお開きとなり、ヒロコは自身の部屋に戻ろうとした。

立ち上がり、ふとベッドの方を見てみると、

ベッドの上に、ゆるキャラと言った感じの猫のぬいぐるみが置かれていた。


「このぬいぐるみは?」ヒロコがノゾミに尋ねる。

「ああ、子供っぽくて、恥ずかしいんですが、この子がいないと眠れないんです。モモちゃんって言うんです。」

「ふーん。」

よく見てみると、そのモモちゃんと呼ばれるぬいぐるみは綺麗に扱われているようで、大事にされていることが伝わってきた。


「あ、そうだ。ヒロコさんにもプレゼントしますよ。」

「私に?」

ノゾミの方を振り向くと、ノゾミは、一つのぬいぐるみを手にとっていた。


「これなんかどうですか?」

ノゾミは、犬か猫か判別がつかないが愛嬌のあるぬいぐるみを前に差し出す。

「ええー。私はいいよ。そういうのは。」

「そうですか。」

ヒロコは柄にもないので、断ろうとすると、ノゾミは悲しそうに泣きそうな表情をした。


「……。嘘嘘。ぬいぐるみ嬉しいです。」

ヒロコが訂正すると、ノゾミはニカっと笑みを浮かべる。

「本当ですか。じゃあ、どうぞ。ノノちゃんって呼んでくださいね。」

ノゾミからぬいぐるみを受け取る。

ぬいぐるみは柔らかく何か良い匂いがした。


「ありがとう。大事にする。」

「可愛がってくださいね。」

ノゾミはそう言うと、玄関までヒロコを見送ってくれる。

ヒロコは正直なところ、寂しさを覚え、もう少し、いやもっと話していたいと思っていたが、

次の日は仕事もあるため、帰らないと行けなかった。

心に鞭打ち、部屋の外に出る。


「じゃあ、またね。」

ヒロコがそうノゾミに声をかけると、ノゾミも寂しそうな表情をした。

「はい、また一緒にご飯食べましょうね。おやすみなさい。」

「おやすみ。」

ヒロコはノゾミの部屋を出て、隣の自身の部屋に戻る。

そして、明日のために諸々の準備を終えると、ベッドに横になる。

側にはノゾミからもらったぬいぐるみを置く。

ノノちゃんと名付けられたぬいぐるみを見ていると、不思議と可愛らしさを覚え、ヒロコはぬいぐるみを抱きしめる。

抱きしめると人形は柔らかく、あぁー癒される、と思いながら、抱き続ける。

気づけば、ヒロコは安らかな眠りについた。

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