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11話 修繕

マンション前で、ノゾミとヒロコは向かい合っていた。

ヒロコは、ノゾミに会うために、会社を早退したのだった。


「ヒロコさん……」

「ノゾミちゃん。時間あったらそこの公園で少し話さない?」

ヒロコがそう言うと、ノゾミは苦しそうな表情をした。

「……すいません。」

ノゾミはヒロコから顔を背け、ヒロコの側を横切って、マンションの中に入ろうとする。

横切るノゾミの腕を、ヒロコは手に取った。


「お願い。少し話を聞いて欲しい。」

ヒロコは真剣な眼差しでノゾミを見つめる。

ノゾミもヒロコを見つめる。根負けしたように顔を逸らす。

「わかりました。少しだけなら。」


マンション近くの公園は夕焼けに照らされていた。

人気はなく、公園のベンチに、ノゾミとヒロコの二人は座る。

「ノゾミちゃん、最近はどうしてるの?」

「最近ですか?学校行って、勉強して、帰ってって感じです。」

ノゾミは素っ気なく返答する。


「ふーん。」

ヒロコは聞いているのか、聞いていないのか相槌を打つ。

そして、深呼吸するように、体を伸ばし、息を大きく吸い、吐き出す。

ノゾミの方に向き、ノゾミの手を取る。


「ノゾミちゃん、もう一度、私と暮らして欲しい。」

「え?」

ノゾミは、ヒロコの唐突なお願い、驚いた表情をする。

「いきなり変なこと言ってると思うと思うけど、私はノゾミちゃんと一緒にいたいんだ。」

言いながら、ヒロコは目頭が熱くなっていくことを感じた。こんな気持ちになったのは初めてだった。

「私はノゾミちゃんと一緒にいるとき、本当に幸せだった。一緒にご飯食べて、話して、一緒に寝て。

それを失って自覚したんだ。私は、私は……。」

ヒロコは最後の言葉が言い出せず、苦しむ。

「ヒロコさん」

ノゾミは、ヒロコの気持ちを察したのか、ヒロコの手に重ねるように手を乗せる。

ノゾミの手は暖かく、ヒロコは言い出す勇気をもらった。


「私は、ノゾミちゃんのことが、ノゾミちゃんのことが好きなんだと思う。」

「……。好きって、妹のようにですか?」

「……。」

ノゾミは不安そうな瞳でヒロコを見つめる。

見つめられ、ヒロコは顔を俯ける。

そして、目をぎゅっと瞑り、目をパッと開き顔を上げた。

「私は、ノゾミちゃんを愛してる。」


ノゾミと、ヒロコは見つめ合う。

ヒロコの目は真剣そのもので、目は光り輝いていた。

ノゾミの目も輝き、その端から光がこぼれ落ちる。


「私もヒロコさんのこと……、愛してます。」

ノゾミはヒロコに勢いよく抱きつく。

ヒロコはそれを支えるように抱き留めた。

そして、ヒロコはノゾミを強く、強く抱きしめる。

ノゾミの体は暖かく、ヒロコは、体も心も芯から暖かくなっていくことを感じた。


「ヒロコさん。大好き。」

「ノゾミちゃん。」

二人は互いを思い思いに強く抱きしめ合った。

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