第90話
「呪いってどんなことが起こるんだ?」
頭を抱えてしゃがみこんだ俺が立ち直ってからオーロラに声をかけてみた。
オーロラはちょっと戸惑った感じだったが、いつもとは違う顔で答えてくれた。
「悪魔の呪いって言うのはよく分かってない部分があるんだけど、おそらくって感じだけどいい?」
普段とは違う表情のオーロラからの言葉に唾を飲み込む。
「あのね、スキルが壊されちゃうって言われてるわ。しかもランダムらしいわよ?そして、それとは別にカースが付与されるの。」
「カース?それって何だ?」
聞き慣れない言葉だが、なんだかヤバイ言葉だってわかる。
「カースはねぇ・・・うーん説明は難しいんだけど、簡単に言えば呪い。有名なところでは大罪の呪いね。悪魔王からのカースならおそらく七つの大罪だと思うわよ?ステータス確認した?」
俺は懐からカードを取り出しステータスを確認する。
ハルキ
年齢 15歳
職業 亜神 傲慢←new
属性 無属性
犯罪履歴 なし
冒険者ランク S
HP 測定不能
MP 測定不能
無属性魔法 レベル10
・ソナー2 レベル10
・ブースト レベル10
・ドレイン レベル10
・サイレントドーム レベル10
・魔力回復促進 レベル10
・魔力吸収 レベル10
・指弾 レベル10
・魅了 レベル10
・空間転移 レベル10
・透過 レベル10
・複製 レベル10
・召喚 レベル10
・ビックバン レベル10
・吸収 レベル10
・放出 レベル10
スキル
無詠唱 レベル10
魔法創生 レベル10
精神耐性 レベル1 ←down
バーナー流剣術 レベル10
直感 レベル5
思考 レベル5
職業が亜神だし『傲慢』とか出てるし基本ステータスがレベルもカンスト、HP とMPに関しては測定不能になっている。
ツッコミ満載だし、俺がもう人外だと言うことはわかっていたが、こうやってカードに載っているのをみると実感する。
「傲慢?」
俺が思わず呟いてしまった言葉にオーロラが反応する。
「あちゃー、やっぱりついちゃったか。」
亜神になってることはやっぱり言わないほうがいいよな。女神を辞めた人に自分が亜神になってるなんてことは言わない方が平和だよな。
「傲慢ってヤバいのか?」
「えっ?ハルキくん知らない?七つの大罪って聞いたことない?ステータスに『傲慢』が載ってるってことはカースを受けてしまったってことだよ?」
俺だって七つの大罪は聞いた事がある。具体的には『傲慢』『憤怒』『嫉妬』『怠惰』『強欲』『暴食』『色欲』だ。今回俺がもらってしまったのは『傲慢』。
傲慢の対極にあるのは「謙虚』。たしかに最近、俺は謙虚さに欠けていると思う。強くなったからか、カースのせいなのか?
カーズのせいにしておいた方が動きやすいかもしれない。ま、そう言う打算をしている時点で、俺に謙虚って言葉を忘れさせるにはちょうどいいのかも。
「大罪の中では、あまり影響がないんじゃないか?」
「あのね、ハルキくんの良さがなくなってるんだよ?もうちょっと危機感持った方がいいよ?でないといつか取り返しのつかないことになるよ?」
でもなぁ、俺に勝てる奴なんていないと思うんだよな。こう考えている時点でカーズの影響を受けてるんだろうけど。それほど気にすることないか。どうせ悪魔はもういないんだから。
俺の楽観的な考えはこの後の悲劇に大きく影響する。でも俺はこの時には些細なことと気にせずにいた。
オーロラとの密談?を終えてメイサとフィーネの救出に向かう。オーロラはコスモを連れて港に向かったんでお供はシエラとマキだ。
「オーロラとどんな話したの?ずいぶん親密に話していたようだけど?」
シエラが怒ってるのがわかる。そりゃあれだけ背中に般若が見える状態なら鈍感な俺でもわかる。
「なんかカースってのもらったらしい。『傲慢』だってよ。それほど気にすることないと思うんだけど、なんかオーロラが気にしててさ。」
俺はさもなんでもないかのように言ったが、シエラは違った。
「・・・私はあなたのためなら命をかけていいと思ってるの?わかってる?」
シエラの真剣な眼差しに気圧される。
オーロラに引き続き、シエラも同じように真剣に俺に声をかける。隣にいるマキもオロオロしてるところを見ればカースはよっぽど不味いのかもしれない。なんだろう?ものすごくイライラしてくる。
「あーっ?シエラもオーロラと同じこと言うのか?俺がこの程度でやられるとでも思ってるのか?」
心と裏腹にシエラに悪態をついてしまった。これがカースの影響か?
「私に怒らないでよ!負けるとは思わないけど、私たちは心配してるのよ。」
「ふんっ!俺一人でどうにでもなる。余計な口出しするなら俺は一人でやる。お前らは勝手にやればいい。メイサとフィーネはお前らが救出しろ。俺様がどれだけすごいか分からせてやる!」
そう宣言して俺は一人踵を返してヘルシャフトの本拠地である元フォレスト城へ向かう。
「ちょっとっ!そんなに怒らないでよ!私はあなたを怒らせたくて話したわけじゃないのよ!」
「うるさい!俺は一人で行く。ごちゃごちゃ言うな!」
シエラには気の毒だが、ごちゃごちゃ言われるのは腹がたつ。これがカースの影響かもしれないが、今は色々言われたくない。ヘルシャフトさえ潰して仕舞えば誰も何も言わないだろう。
「ハ、ハートランド様っ!」
シエラの言葉もマキの俺を引き止める声も無視して俺はフォレスト城へ向かう。
「俺の力を示してやる。」
誰にも聞こえない声で呟いた俺の声は当然ながら誰にも聞こえない。ただこれが悲劇の始まりだと言うのは後になって気付く。
「ナナ!緊急事態よ!ハルキがカースに飲まれた。もう私たちの声を聞いてくれない。もう頼れるのはマユとナナとムラトしかいない。もし、あなたたちの声も届かないなら力付くで止めなさい!取り返しのつかないことになるわよ?」




