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転生魔法使いの愛のある生活  作者: チムチム
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第9話

公爵様は娘のアクアリスの肩にそっと手を乗せ、優しげな微笑みを浮かべたまま、アクアリスに話しかける。


「アクアリス、いけないなぁ。公爵家の娘が、公衆の面前でそんな大声をだして。まあ、君がずっと気にしていたハートランドくんに出会えてテンションが上がっているのもわかるけど、そんなことだと嫌われてしまうよ。帰ったら公爵家の者としての振る舞いについて、改めて勉強してもらう必要があるねー。この意味、わかるよね?」


「お、お父様、申し訳ございませんでした!」


冷や汗をダラダラ流しながら、腰を直角に曲げて頭を下げるアクアリス。よほど、勉強が嫌なのか、それともこの優男のお父様が怖いのか?


ふと父さんの方を見ると、頭を下げるアクアリスを見つめ、同じようにダラダラと冷や汗を流していた。やはり、優男さんはただの優男さんではないようだ。


「ふむ、じゃあこの件は後に考えるとして、とりあえず会場に向かおうか。さあ、行こうか、アクアリス。」


公爵親子が立ち去った後も、父さんは固まったままだった。母さんに肩を叩かれ、フリーズから立ち直った父さんに公爵様のことを聞いてみた。


父さんが言うには、公爵様は魔法使いとしての能力はもとより、王国の中軸として執務をこなし、軍事も政治も司る王国の要らしい。

そして、その見た目と物腰の柔らかい雰囲気からは想像出来ないような苛烈な指示(命令)を出すことから、ドS公爵と影で言われているらしい。

かく言う父さんもその被害者の一人らしく、その時の恐怖を思い出して、固まってしまったようだ。父さんは色々トラウマを抱えているらしい。これからはもう少し優しく接してあげよう。



足取りの重い父さんを連れ立って、会場に着くと、沢山の親子がひしめき合っていた。会場は講堂と呼ばれる場所で、300名くらいは余裕で入れる映画館と言った感じだった。

前列に子供達、後列にその親御さんが座るようになっていたが、まだ少し時間まであることで、思い思いの場所で話している姿が見られる。

あのドS公爵の近くは挨拶に訪れる人で賑わっていた。先程、優しく叱られていた(?)アクアリスも、凛としてこれぞ公爵の娘といった雰囲気で後ろに控えていた。


父さんがあんな状態なので、父さんのことは母さんに任せて、俺は自分の席を探し席について大人しく周りを眺めていた。ちなみに俺の席は最前列の左端。後ろを振り返れば、講堂全体が見渡せるので、観察には事欠かない。


「となり、いいかな?」


「えっ?あ、はい。どうぞ。」


講堂をぼんやり眺めていた俺に話しかけてきたのは、金髪で金色の瞳の少年だった。金髪に金色の瞳なんて珍しいなぁと思って、声をかけられた時、一瞬驚いてしまった。ちなみに俺の髪は父さんと母さんの色を合わせたオレンジっぽい髪色で瞳の色は黒。この世界では黒眼は珍しいようで、初めて会う人はそこが印象に残るようだ。まあ、俺のことはいいか。


金髪金眼さんは肩まで届きそうな長髪、体格は細身で10歳にしては身長も高く、いかにもモテそうな顔立ちをしている。あと数年もすれば、女性の多くは彼の容姿に惹かれるのではないかと思う。男で中身おっさんの俺でも見惚れるほどである。


「君がハートランドくんかな?」


「はい、はじめまして、ハートランド・バーナーです。これからよろしくお願いします。」


当たり障りのない挨拶をする俺。


「よかった。君にぜひ会いたいと思っていたんだ。これから末長くよろしく頼むよ。

あー、そうそう、僕の名はカール・フォン・サジタリアだよ。君はすごい魔法の才能を持ってるって聞いたから、君と同じクラスになれるといいと思っていたけど、この席順からするとどうやら一緒のクラスになれそうだね。」


サジタリア?ってことは王族か?

アクアリスが公爵嬢ならこのカールはひょっとして王子?

色々頭の中で推察していたことがバレたのかカールは言葉を続ける。


「あー、君は僕を知らないんだね。君が考えている通り僕はこの国の王子だけど、警戒しないでいいよ。」


さすが王子様、心を読まれたようだ。ちなみにこの国には王子は1人。王女は2人いるみたいだけど、今のところこの王子様が未来の王様候補だろう。警戒するなって言われても難しい。


「失礼いたしました。ところで、お聞きしたいことがあるのですが、よろしいですか?」


「僕にわかる範囲なら構わないよ。」


「クラスが同じになるとか、席順っていうのはなんのことなんでしょうか?」


「そうか、君は知らなかったか。では教えてあげよう。」


王子様は新しいおもちゃを見つけたかのような笑顔を浮かべて、楽しそうに話す。


「まず、席順なんだけど、これはそのまま成績順だ。ちなみに前列左が一番、後列の右端が一番成績の悪いものの席だ。つまり、君が僕らの学年の1番成績上位となる。僕は君の右隣だから2番だね。」


たしかに入学前に簡単なテストをしたけれども、誰でもわかるような基礎的なものだった。この学園に入るために必要な学力があるのかを確かめる程度のものだと思っていたが、違かったらしい。


「あー、そうそう、1番成績の良かった人は、あとであの台の前でみんなに挨拶するから、それもちゃんと考えておいてよ。よろしくね!」


王子様はさわやかな笑顔でそう伝えると、唖然として呆然としている俺をおもしろそうにながめていた。


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