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転生魔法使いの愛のある生活  作者: チムチム
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第87話

本日2話目です。

「襲われているのはガリアーノ将軍の船だけなのかしら?」


空を物凄いスピードで飛んでいるにもかかわらずシエラが俺に問いかける声が聞こえる。俺たちの周りだけ風の流れを操作しているのか?シエラの魔力コントロールはさすがとしか言いようがない。

魔力量は圧倒的に俺の方が上だが、こういう繊細なコントロールはまだまだシエラに敵わない。伊達にサジタリア最強の魔導師と言われていただけある。


「いや、ガリアーノ将軍の船だけでなく一緒に航行している10隻全てが襲われているようだ。」


俺は移動をシエラに任せているので、他の魔法の行使ができる。魔力感知の範囲を広げているので、ある程度の状況が把握できている。


巨大な魔力反応はおそらく魔人だろう。さすがに俺たちの動きに勘付いたか。


救援に向かってから30分ほど経っただろうか?海上にいくつかの煙が上がっているのが見えてきた。


「ガリアーノ将軍はなんとか持ちこたえてくれてるようだ。シエラ、俺だけ先行できるか?」


「いってらっしゃい。あなたのカッコいいところ見せてちょうだい。」


俺の周りを風の魔力が覆った瞬間、俺の身体は打ち出された弾丸のように船に向かって飛んでいく。


「ちょ、ちょっと!やりすぎっ!」


あまりの速度にドギマギし着地をどうしたらいいかと思ったがちょうどいいところに魔人がいたので、その勢いを利用してドロップキックの要領で勢いを殺した。


吹き飛ぶ魔人。口から緑色の血を吐き出しながら飛んで行った。


「危ねぇ、なんとか着地できたか。」


周りでその様子を見ていた船員たちはポカンと口を開けている。戦闘中だった他の魔人もいきなり俺が登場したことに驚いたのか、手を止めている。


放心している雑魚魔人を俺は瞬殺していく。


「ブースト!」


俺にとってはただの身体強化も圧倒的な魔力量の俺が使うと不可視の攻撃となる。周囲に打撃音だけを残して船の周りにいた魔人を撃破する。


魔人に手加減はしない。ブーストをかけてスピードとパワーが増した俺の攻撃は魔人の様々な部位を消滅させていく。


首から上がない者、腹に風穴が空いている者、上半身と下半身が分離してしまっている者、だいぶスプラッタな状況だが、俺の心は落ち着いたものだった。魔人に対する怒りなのか?精神耐性が向上したのか?はたまた『ヘルシャフト』を殲滅するという覚悟がなせる技なのか?いずれにしても俺は魔人を殺すということに対して感情が乱れることはない。


「後から俺の仲間が来る。怪我人を集めておいてくれ。治療させるから。俺は他の船の救援に向かう。」


俺の力をある程度知っていたものは歓喜し、知らなかったものは恐怖に顔が引きつっている。


他の船に飛び移る時にうっかり力を入れすぎて甲板の一部を破壊してしまったが、ご愛嬌。


この船から2艘先に大きな魔力反応がある。あちらも俺に気付いたようだ。


ものの数分で船を解放し魔人の指揮官らしきもののところに到着した。


「お前がこの雑魚どもを引き連れてきたのか?」


頭に羊のような大きな巻角をつけて、自身の体よりも大きな翼を携えた魔人は不敵な笑みを浮かべている。


「人間の中にもそれなりに強いものもいるのだな。思っていたよりもやるようだ。我らに牙を向けようとしているだけはある。」


偉そうな物言いで、明らかに俺を下に見ている。


「お前はヘルシャフトの一員でいいのか?大した魔力もないくせに偉そうなやつだな。」


「我の深淵が見えぬとは。所詮その程度の存在か。我はヘルシャフト四天王が一人。悪魔王ミコーレ・レジデンス伯爵だ。」


「悪魔王なのに伯爵なのか?どっちかにしてもらえないか?それともギャグなのか?それハッキリ言って面白くないぞ?」


様々な種族の魔人がいるとは聞いていたが、悪魔族だったか。角といい翼といいなるほど、悪魔らしい姿だ。

悪魔族ははるか昔に神が力を貸した地上の人間との争いに破れ、地底で大人しくしているというのを本で読んだことがあったが、実物を見たのは初めてだ。

あ、そういえばさっきの雑魚どもも角と翼があった気がする。瞬殺してたので気付かなかった。もっともこいつに比べればツノも翼も小さかったが。


「くっ!減らず口を!口は達者なようだな。良かろう、冥土の土産に我の力の一端を見せてくれよう。」


奴の魔力が膨れ上がる。船員たちも濃厚な奴の魔力が見えるようだ。普通の人間に魔力を見る力はない。しかしそれが見えるほどに濃い魔力なのだろう。


「ふははははっ!どうだ?この圧倒的な魔力。お前たち人間には真似できまい。」


恐怖に駆られた船員たちは目、鼻、口、そして下半身から様々な液体を垂れ流している。

えっ?俺?俺はもちろん平常運転だ。


「お前の限界はそんなものか?」


たしかに普通の人間からすれば悪魔王の魔力は膨大だろう。太刀打ちできるわけがないと諦める気持ちもわかる。だが、ここには俺がいる。人外とも言える魔力を有する俺がいるのだ。


「そんなものか?大したことないな。」


俺は奴に右手をかざして言ってやる。


「その程度で粋がるなよ。俺はお前らの天敵なんだよ。それを今から教えてやる!」


かざした右手で奴の魔力を吸収していく。船の様子を見るために広範囲に魔力感知を広げていたしブーストをかけて敵を殲滅したので、俺の魔力は10分の1くらい減っていたのでちょうどいい。


「なっ?!きさまっ!何をしている?!」


悪魔が驚愕している。悪魔は魔法の扱いに優れた種族と聞いていたが、魔力吸収を知らないのだろうか?


「えっ?何ってお前の魔力を集めてるんだよ。」


真実は教えない。が、明らかに奴の魔力が俺の右手に集まっているのが見えるのだろう。


「き、きさま!舐めおってっ!」


魔力を吸収されているにも関わらず、奴は俺に向かって攻撃を仕掛けようとしている。魔力での攻撃はマズイと思ったのか、物理攻撃をすべく、三又の槍を手にして突っ込んでくる。


「トライデントストライク!」


悪魔王の叫びとともに、槍が一直線に俺に迫る。俺は右手で魔力吸収をしているため、愛刀である白州を抜けない。


「ブラックホール」


空中から下降して勢いをつけて向かってくる悪魔王。空に向かってならブラックホールを展開しても奴以外に被害を受けるものはいないだろう。


「くっ!吸い込まれる!なんだこれは?」


ブラックホールの吸い込む勢いにより奴がさらに加速してこちらに向かってくるが、その勢いを止めようともがいているようだが、もう遅い。


「き、きさま!覚えてろよっ!」


モブキャラのごとき捨て台詞を吐いて悪魔王は槍と共に消えた。


辺りが静まり返る。船員も魔人も言葉を発しない。何が起きたのか皆わからないのだろう。


「悪魔王とやらは処分した。あとはお前たち雑魚のみだ。まあ、逃がすつもりはないけどな。」


船員たちの歓喜の雄叫びが響く。その声を聞きながら俺は残りの魔人を殲滅していく。



「あら?もう終わっちゃったの?早いわね?」


シエラが駆けつけた時にはすでに敵の姿はなく魔人遭遇第1ラウンドはあっさりと俺たちの勝利に終わった。


『ハルキ!応答して!』


ホッと一息ついていた俺たちに、メイサからの念話が届いた。


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