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転生魔法使いの愛のある生活  作者: チムチム
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第8話

学園入学式。

父さんと母さんに手を引かれ、学園の門をくぐる。城壁を思わせるような高い塀、黒く分厚い扉、学園という華やかなイメージとは相反する、監獄のような物々しさに、これからの生活に不安がよぎる。


ちなみに母さんもここの卒業生で、この物々しい塀と扉は生徒の安全と魔法の暴発にも耐えられるように設計されていると教えてくれた。

扉が閉まると魔法障壁が貼られるのだとか。


ちなみに母さんは貴族ではない。いわゆる平民だ。ただ、光魔法の使い手ということで、入学を許可されトップとは言わないまでも、それなりに良い成績で卒業したようだ。


学園は10歳に入学、15歳で卒業して、それぞれ別の道に進んでいく。この世界の成人が15歳ということを考えると納得である。

進路としては、成績の良し悪しで変わってくる。

成績上位者は国からの援助の元、上級学校への進学であったり、即戦力として王宮の魔法部隊への配属、はたまた、それを断って冒険者への道を歩むものと様々だ。

逆に成績が振るわなかったものに関しては、就職の斡旋もされず、自ら交渉したり貴族様は親のコネを使って何かしらの職に就くそうだ。

ちょっと魔法が使えるくらいの人は、山ほどいるので、この学園でふるいにかけてるというべきか。


そうそう、父さんはここの卒業生ではない。父さんは剣術の方が得意だったので、姉妹校である王立フェリス騎士学園というところの出身らしい。

同じ「フェリス」という名前が付いているが、これは100年くらい前の王様で、フェリス・フォン ・サジタリアの名前から取っているらしい。なんでも学園が出来る前は、貴族は家庭教師を雇って子供の教育を行っていたそうだが、お金のない平民は一切教育を受けられず、魔法や剣術の腕が立つものは貴族からしか生まれづらかったそうだ。

貴族は平民に比べ絶対数が少ない。ましてや自分の子供はかわいいので、戦争の際には平民を盾に後ろから魔法を放つだけ。騎士に至っては戦場で指揮を取るだけで、まともに戦わず危なくなったら逃げる。平民はなんの攻撃手段も持たないため、他国との戦争では軍事力という面で大きく劣っていたそうだ。


ちなみに数百年前のサジタリア王国は広大な領土を持つ大国であった。しかし、大国としての甘えから軍事力を低下させていってしまったことにより、隣国の小国であったアトラス帝国(当時はアトラス自治国)に戦争で負け続け、領土をどんどん奪われていった。その結果、アトラス帝国は大国の仲間入り、サジタリア王国は小国へと成り下がってしまった。フェリス王が学園を作ったことで、軍事力も徐々に上がり、なんとか国を維持出来ている。


話が逸れてしまったが、魔術学園も騎士学園も軍事力強化のための養成学校の意味合いが強いため、力の劣るものには何も与えられず、力のあるものには手厚くする。ある意味、実力主義の精神で成り立っている。平民でも入学出来るのはそこも関係していて、決して平民への温情的要素で入学出来るわけではない。表立っては言わないが。



バーナー家は騎士爵の貴族なので、高位の爵位を持った家ではない。光魔法の使い手であるユーリの子供ということで、遺伝によるものが期待されて注目されていた。

バーナー家ではハートランドの才能について秘密にしていたのだが、どういうわけか外出するたびにトラブルが起こり、それをまたハートランドが魔法で解決するといったことが頻発し、ハートランドの天才っぷりは王都にも伝わっていた。

そんな未来の大魔法使いが、学園に入学できないはずがなく、国からの要請もあり、あっさりと入学出来た。何か不可思議な力が働いているようにしか見えないが、まあ、十中八九あの女神様の仕業だと思っている。


「・・・」


あれ?こういう話をしてると必ず割り込んでくるはずなのに、今日は何もないなぁ。



ハートランドが目に見えない女神のことを考えながら、歩いていくと、目の前に1人の少女が腰に手を当て、その容姿に似つかわしくない、仁王立ちとでもいうように待ち構えていた。


「あなたが噂のハートランドとかいう天才少年?」


腰の位置まである、空色とも言える鮮やかな髪をなびかせながら、その髪色をより濃くしたような瞳を輝かせた美少女。お子ちゃま体型ながらもその品の良さが溢れ出ているようなスタイル。そんな彼女は仁王立ちの状態から右手の人差し指をこちらに突き出し、


「あなたには負けないわ!私がトップに立つの!」


そう高らかに宣言した。


「えっと、人に指さすのは良くないよ。それと君はボクを知っているようだけど、ボクは君を知らない。君の名前を教えてくれる?」


「あっ、ご、ごめんなさい。そうよね、指さすのは良くないわよね。うん、良くない。それは謝るわ。」


うん、思ったよりも良い子みたいだ。登場の仕方はアレだったけど、うん、良い子だ。それにかわいいし。


「・・・っ!?」


なんだ、今のは?なんか背筋がゾクッとした?

なんだろう?母さんを怒らせた時みたいな、悪寒?


「ってなんで私が謝ってるのよ!そうじゃない、なんであなたは私を知らないの?なんでわからないの?」


「はい?あの初対面だと思うんですけど。」


「私はあなたを知ってるのに、あなたが私を知らないなんて、なんか負けた気分だわ!

くやしいっ!くやしいっ!くやしいっ!


ふぅー、けどいいわ、あなたにもわかるように教えてあげる。私は水と風と土、3属性を操り、いずれ王国の最強魔術師となる予定の美少女。

アクアリス・フォン・サジタリア。

王族にしてこのサジタリア王国公爵家の3女よ。覚えておきなさい!」


うわぁ〜、すんごいドヤ顔。

良い子だけど良い子だけれども、色々やらかしてるなぁ。


「アクアリス様、大変失礼致しました。私はアウグスト ・バーナー、ハートランドの父にして騎士爵をいただいております。

何卒お見知り置きを。」


片膝をついて目を合わせないように父さんがこの残念な子に挨拶する。母さんもそれに倣って膝をつく。

仕方ないので、俺も膝を着こうとすると、



「アクアリス、何をやっているんだい?」


歳は20代後半、父さんと同じくらいかな?アクアリスと同じ髪色の優男といった感じの人が声をかけると、アクアリスが冷や汗を流しながら固まった。その優男さんは父さんたちにそんな礼儀は不要と声をかけて立ち上がらせる。

父さんもなんだか固まっているように見える。


「君がハートランド・バーナーくんかな?

はじめまして、フランツ・フォン・サジタリア、この子の父親だよ。これからよろしくね!」


すごく気さくな感じで話してくる優男は公爵様だった。なんかキラキラしてる。さすが王族。どっかの残念な娘にもこれくらいの度量のでかさを見せて欲しい。まあ、あっちはまだ子供だから仕方ないか。


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