第79話
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前話あらすじ
ハルキたちに謝罪に訪れたカール王子だったが、逆にハルキの怒りを買ってしまう。サジタリア王国を離れることになったハルキは主だったメンバーに別れの挨拶をすることにしたのだが・・・。
家族会議の後、今日のことを知らないであろう主だったメンバーにそれぞれ念話をつないでいた。
(おーい、マキ、聞こえるか?)
「はっ!ハートランド様のお声が聞こえる。でも、一体どこから?」
突然頭に届いた俺の声の出所を探しているようだ。まあ、許可なく繋いでしまったからな。
(マキ、俺は君の頭に直接話しかけている。だから、声に出さないでも大丈夫だぞ。)
(ま、まさか、そんなことまで。これは神託では?はっ!ついにハートランド様は神になられたというのですか?)
あいかわらずの暴走モードをなだめ、俺がこの国を去ることを告げる。
(そ、そんなっ!わ、私も連れて行ってくださいませんか?あなた様のそばにいさせてください。)
ま、予想通りの答えだけど、軽々しくは答えられない。マキが俺と付いてくれば、マキの一族にも迷惑をかけることになる。
(と、言うわけで、俺が軽々しく了承は出せない。家族できちんと話して、納得してもらえたらって事で。家族の許可なしに来たら追い返すからな?)
マキのほかに挨拶したのは、サリとターニャ。そして、連絡しようかどうしようか迷っている奴がいる。それはアクアリスだ。
能力的には問題無いし、出来れば来て欲しいと思っている。ただ、彼女は公爵令嬢。王族なのだ。この2週間でアイリスやミツキの面倒を見てもらうこともあったが、彼女自身が差別している姿は見なかった。だが、まず許可なんて降りないだろう。ここはスルーしておくべきか?
(ハルキくん、なんで私に連絡してこないかな?ひょっとして私をおいていくつもりじゃないでしょうね?)
アクアリスに連絡しようか迷っていたら、繋いだ覚えがないのに念話が俺の頭に届く。
(お前は言わなくてもどうせ来るだろう?ただ、受け持った生徒がいるんだろうし、そう言うの諸々片付けてからにしてくれよ?)
念話の主はオーロラだ。自力で念話をつなげてきた事といい、こいつはやはり規格外だ。女神としての力は失ったと言っていたのに。
(さすがハルキくん!私のことわかってくれてるじゃない。じゃあ、色々片付けたら連絡するから迎えにきてね!)
面倒なやつだが、その能力は超一流。きっと力になってくれるだろう。
オーロラに邪魔されたが、一応アクアリスにも連絡だけすることにした。なんだかんだとこの2週間でうちのちびっ子たちの面倒も見てくれてたしな。アストラムに誘うのはやめておこう。
(アクアリス様、俺です。ハートランドです。このような形でご連絡することをお許しください。色々ありましてこの国を出ることになりました。詳細はカールにでも聞いてください。お元気で。)
(ちょ、ちょっとこれ何なのよ?!ねぇ!ハートランドっ!)
俺は一方的に話を終わらせた。話を続けていたら、きっと力になって欲しいと言ってしまいそうだったから。
とりあえず、この国で親しくしてくれた人たちには、お礼も言えたし後は連絡待ちかな?
あ、そうだ!あいつからの連絡が来ていたんだった。
色々あって忘れていたが、俺が奴隷にした魔人ミハエルから『ヘルシャフト』のアジトを調べさせていた件で、連絡が来ていた。
ミハエルによると、やはりフォレスト王国を乗っ取っているとのこと。そして王都は崩壊して住民は魔人のみしか見当たらないとのことだ。その数およそ500。王都以外の都市についてはまだ、詳細をつかめていないようだが、こちらの対応が遅れれば、瞬く間に落とされてしまうだろう。
コンコンコン
俺の部屋をノックする音がする。時刻はすでに23時を回っている。こんな時間に一体誰が?
「夜分、申し訳ございません。ハイド様がどうしてもお会いしたいとのことで、お連れしました。」
声の主はセバスで、ハイドとミツキを連れてきたようだ。俺は了承し彼らを部屋に入れる。
「どうしたんだ?こんな時間に?子供は寝る時間だぞ?」
「・・・自分だって。」
子供扱いされたのが気に入らなかったのかハイドがボソっと呟いた。
「あのね、お兄ちゃん。ハイドお兄ちゃんがハルキお兄ちゃんに謝りたいんだって。」
ミツキによると、ハイドとミツキは部屋に帰りベットに横になっていたのだが、ハイドがベットの中で謝りたいと小声で言っていたそうだ。ハイドにしてみればミツキは寝ているものと思っていたらしく、聞かれているとは思わなかったそうだ。で、ミツキはそんなハイドに話しかけセバスを呼んで俺の所に来たとのことだ。
「ハイド、気にすることはない。お前は何も悪くない。悪いのは俺だ。さっきも言ったが辛い思いをさせて悪かったな。」
「ち、違う!そうじゃない!あれは俺がっ!」
ハイドはあの時、貴族に絡まれた時のことを話してくれた。
ハイドとミツキは父さんと母さんと一緒に行動していたのだが、あの貴族たちが話している内容が気になって一人抜け出して、奴らの近くで話を聞いていたそうだ。
その内容は最近奴らが買った獣人奴隷が反抗するので、躾と称して色々と酷い扱いをしていると言う話だったそうだ。
それはパーティでは似つかわしくなく、かつ子供に聞かれていい話ではない。ただ、聞いてしまったハイドからすれば無視できる内容でもなかったので、問い詰めてしまった。そしてあのやり取りに発展してしまった。
「あの時、俺が我慢していればっ!」
「ハイド、君は間違っていない。逆にそういう面が早い段階でわかったのは俺的にはすごく助かった。それに、それを問い正せた君の勇気は立派だと思う。」
ハイドは目に涙を溜めながらも必死に泣くまいと堪えている。
「ただ、一つ言わせてもらうと、出来ればその場に俺を呼んでほしかったな。君は強いがまだ幼い。俺も昔色々失敗したからわかるけど、人を頼るのは悪いことじゃない。次からは俺にも手伝わせてくれないか?」
ハイドは無言でうなづくと、服の袖で目元を拭う。
「ハルキ!俺はあなたのように強くなりたい!だからもっともっと修行をつけてくれ!」
「ムラトじゃなくていいのか?」
俺はおどけて言うとハイドはニヤッと笑う。
「二人から学んで二人ともいつか超えてやる!だからこれからも宜しく頼みます!」
「わたしもわたしもっ!」
最後は敬語になったハイド。この子はきっと強くなる。悔しい思いを力に変えるだけのものがある。それは遠くない未来に実現できるだろう。ハルキは未来の好敵手を喜ぶように二人の頭に手を乗せ優しく微笑みかけた。
なかなか更新が出来ずすみません。勉強のために読み始めた作品が面白くて。
こんな感じで更新遅れてて申し訳ないですが、引き続きよろしくお願いします。




