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転生魔法使いの愛のある生活  作者: チムチム
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第76話

いつもお読みいただきありがとうございます!

「ハ、ハートランド・バーナー!わ、私とパーティに出られることを光栄に思いなしゃい!」


あ、噛んだ。空色の長い髪の美女がこちらを指差して、顔を赤くしている。彼女の髪の色に合わせたような空色のドレスを身にまとい、アクアリスは盛大に噛んでしまったことで周りの苦笑を誘っていた。黙っていれば、美女なんだけど、相変わらずの残念っぷりだ。


「これはこれはアクアリス様。お招きいただきありがとうございます。素敵なお姿を拝見できて光栄です。他の皆様があなた様のお姿を拝見しようとお待ちだと思いますので、私はご挨拶だけにさせていただき、これで失礼いたします。」


俺はあえて敬語を使ってその場を離れることを伝える。


「えっ!ちょ、ちょっと待ちなさいよ!も、もうちょっとくらい話してくれてもいいじゃない?」


彼女と話してるとドS公爵様が近寄ってきそうだから早々に退散だ。どんな無理難題をふっかけられるか分かりはしない。


「ハートランド君、少しいいかしら?」


胸が溢れるんではないかと言うほどに強調された、白を基調としたドレスに身を包んだシエラ先生が俺の左腕を胸で挟み込むように腕を絡めてくる。


「ちょっと!先生!今は私が話してるの!」


アクアリスが何か言っているが、俺の神経は左腕に集中してしまっている。これはヤバイ。意識が持っていかれてしまう。


「あら?今はプライベートよ。それに彼はあなたとの会話を終わりにしてたじゃない?」


からかうようにアクアリスに微笑みかけているシエラ先生。腕に胸を擦り付けてくるのは、嬉しいが、俺の下半身がヤバイので、それくらいにしてほしい。いや、でも、もうちょっとだけ。


シエラ先生の温もりを堪能してしまったせいで、注意散漫になっていたようだ。空いている右腕をガッと掴まれる。


「先生、お久しぶりですね。わ・た・しの彼氏に何をしてるのかしら?」


な、な、な、なんだと?!黒いドレスに身に着けたマユが俺の右腕をありえないくらいの力で掴んでいる。鍛え上げてきた身体を持ってしてもなお、へし折られるのではないかと思うほどの力で。俺の全身から汗が噴き出してくる。


「あ、あの〜マユさん。そんなに掴まれると痛いな〜。」


「あん?ちょっと黙っててよ!シエラ先生にデレデレしちゃってさっ!今、私は先生と話してるの!」


「・・・は、はい。すみません。」


これは相当怒っている。でもマユはどうやって?


「やっぱり来て正解だったようね!」


マユとお揃いと思われる黒のドレスだが、胸の部分がマユよりも強調されていて、より大人っぽい印象の彼女、ナナがタキシード姿のムラトと共に立っていた。


「な、な、な、なっ!」


「驚いてるのか?私の名前を呼んでるのかわからないわね?」


「うひひひっ」


ナナとムラトの後ろからフィーネ、ハイド、ミツキが顔を覗かせる。


「おぉ、ハートランド、ここにいたのか?」


反対方向からは父さん、母さん、アイリス、メイサ。


「アクアリス様、此方にいらしたんですね。皆様がお待ちですよ。ってあっ!ハートランド様っ!」


「えー、本当だ!」


アクアリスの後ろからはマキとターニャ。どうやら俺に縁の深い人物が一堂に会しているようだ。そんな中で俺は左腕にシエラ先生、右腕にはマユに腕を掴まれ怒られている。


「まあ、まあ、ハーちゃんはモテモテね!これならお嫁さん探しも苦労しなくてもいいわね!」


そんな空気をぶっ壊す母さんの一言に、一同がしんと静まりかえる。


「・・・えっと、母さん、今なんて?」


「だ、か、ら、お嫁さんよ!ハーちゃんももう15歳だしそろそろ考えなくちゃいけないでしょ?」


この状況でそれを言うか?!まあ、俺はマユにお嫁さんになってもらいたいけど・・・。そんなことを考えて右腕のマユを見ると、彼女もこっちを見ていた。見つめ合う俺とマユ。見つめ合うこと数十秒、その沈黙を破ったのは、、、。


「ちょっと!二人でいい雰囲気になってるんじゃないわよ!・・・私とは全然話してくれないくせに。」


アクアリスの一言だった。後半はだいぶ小声だったが、バッチリ聞こえてしまった。なんだかかわいそうになってきた。もうちょっとだけ話してあげてもいいかな?


そして俺はなんだか変わってしまった雰囲気を察して周りを見渡す。



「お嫁さん。ハルキのお嫁さん。ぽっ。」


メイサはボソボソと独り言を呟き赤くなっている。


「ダーリンのお嫁さんは私でしょ?二番目だってお嫁さんはお嫁さんだよね。」


フィーネもなにやら一人納得している。


「ハートランド様の奥方・・・・・・。」


マキもどこかに意識が飛んでしまってるかのように宙を見つめている。


「・・・・・・。」


シエラ先生は何も言わずに俯いて顔を真っ赤にしている。長い耳の先まで赤くなっている。なんだか普段と違ってかわいらしい。


ムギュッ!


「痛っ!」


マユに腕をつねられていた。本当にこう言うところ敏感に察知するよな。


「ハルキくんのお嫁さんになるのは私だもん。だって私の彼氏だし。」


そんなマユの呟きが可愛くてついつい頭を撫でてしまった。


「ふふふっ。ハーちゃんの中ではもう誰か決まってるみたいね!まあ、今日はこれくらいにしておいてあげようかしら。パーティが始まるわよ。」


これだけ場を荒らしておきながら、母さんは父さんに腕を絡ませて、その場を去っていった。


それにしてもマユたちはどうやってここに来たのだろうか?この2週間、俺はアストラムと行ったり来たりはしていたがそれは全部転移を使ってのものだ。あとで聞いてみるか。



「それでは今日はゆっくり楽しんでいってくれたまえ。」


ドS公爵が皆にそう言葉をかけて、パーティが始まった。綺麗に盛り付けされた料理の数々と美味しいお酒。俺は父さんと一緒に参加してる貴族に挨拶回りに付き合わされている。


「こんなに素晴らしいご子息がいてバーナー家は安泰ですな。それはそうと婚約者はお決まりか?実はうちにも年頃の娘がおりましてな。是非一度、会ってみてはもらえないだろうか?」


うちは男爵家だ。今回このパーティに参加しているのは全部うちよりも爵位が上。だからこそ俺まで引っ張り出されて挨拶回りしているわけだが、みんな話す内容が一緒だ。俺の婚約者は誰か?いないならうちの娘と。これの繰り返しでうんざりする。


父さんにしてみれば自分よりも爵位の上の貴族からの申し出は非常に断りづらいと思うが、事前に公爵が権力をかざしての交渉を禁止してくれていたために、やんわりと断りを入れてくれていた。何かあれば公爵が後ろ盾になってくれるそうなので、それを匂わせると貴族連中は渋々引いてくれる。公爵に逆らえるのなんて王様くらいなもんだ。


あれ?でも確かカールに妹がいたような?まさかとは思うが、王様から打診されるなんてことは・・・。一応警戒しておこう。

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