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転生魔法使いの愛のある生活  作者: チムチム
74/101

第74話

いつもお読みいただきありがとうございます。盆休みも終わりましたので、また更新が遅れることもありますが、よろしくお願いします。

「ごめんね!これも仕事なのよ。」


そんなセリフとともに精霊と同化したシエラ先生の姿が消える。俺はソナー2を使い魔力感知するが周囲にそれらしい反応はない。


が、嫌な予感がしたので、その場を飛び退く。


「あらー?おかしいわね。完全に気配も魔力も感知できないようにしたはずなんだけど?」


シエラ先生はまた姿を現し、不思議そうにこちらを見ている。


「ただの勘だよ。でも驚いたな、そんなスキルも持っていたのか?」


思わず、先生に対してタメ口になってしまったが、それが嬉しかったのかシエラ先生はなんだか喜んでいる。


「先生、さっき俺に「勝てない」って言ってたけど、その理由を聞いても?」


「教えるわけないでしょ?知りたかったら色々試してみたら?」


ま、そうだよな。いくつか仮説はあるので、色んなパターンを試してみるか。


「じゃあ、いきますよ。」


まずは物理攻撃がどれくらい効くのかを試してみようとブーストをかけて、全力で突進し拳を振るう。シエラ先生の目には俺の動きが見えている素振りはない。


「あれ?」


シエラ先生の懐に潜り込み、ボディにアッパーを叩き込もうと思ったのだが、すり抜けてしまった。


「残念でした〜。今の私は精霊と一緒なのよ?そんな攻撃が効くわけないでしょ?」


「なるほど、物理無効か。」


シエラ先生は講義をするかのように、俺に話しかけてくる。これもなんとなく勘だが、目や仕草が何かを伝えようとしているように見える。


「さあ、わかったでしょ?私を倒すには魔法しかないのよ。でも精霊に魔法で敵うと思う?」


なるほどね。そういうことか。


「先生、じゃあ精霊を上回る魔法の攻撃なら効くってことですよね?」


「ま、そういうことだけど、さすがにそれは無理じゃないかしら?」


多分、先生の狙いは俺の全力の魔法攻撃を仕掛けさせることだろう。しかもそれを王様に見せるために。俺の力がいかに規格外か示すために。本当に優しい人だ。


「じゃあ先生、魔法で攻撃しますけど、お願いがあります。サリとオーロラはもう結界の外に出してもらってもいいですか?巻き添いで殺してしまいかねないので。」


「うーん、どうしようかな?あなたたちどうする?」


シエラ先生は二人に話しかけると、驚いたことに二人とも平気な顔して立ち上がってきた。


「私はやめておきます。もう魔力もないので。」


サリはそう言って降参宣言する。


「私はどうしようかな?もうちょっと戦いたい気もするけど・・・。」


オーロラは迷っているようだ。出来ることならさっさと終わらせたいのであまり時間をかけないで欲しい。


ふと見るとシエラ先生がオーロラに何か耳打ちしている。


「ハートランド君、一度だけ試してみたいことがあるんだけど、いいかしら?」


「別に構わないですよ。」


俺の承諾を得ると、シエラ先生はオーロラに手をかざす。その直後からオーロラの魔力がどんどん膨れ上がり、シエラ先生同様に背中に羽が生え服装も同じようなものに変わる。


「やっぱりね!うまくいったわ。これでオーロラ先生もこの場にいても大丈夫そうね!」


「シエラ先生、何これ?すごいんだけど!」


シエラ先生は勝手に納得し、オーロラはなにやら驚いている。まあ、正直俺も驚いている。何せ、いきなり精霊と同化させてしまったのだから。


「おまたせ、ハートランド君。私一人でも勝てないのに二人になったらもう無理よね?降参しない?」


「うーん、大変だとは思うんですが、試したい気持ちもあるんですよね!だからいきますよ。」


対戦中にこんな呑気に会話したり、相手が強力になるのを待ってたりしたが、ここからが本番だ。マキが結界から出たのを確認すると、俺は周囲の魔力を吸収し圧縮していく。


圧縮しまくった魔力の塊はバスケットボール大のもので、両方の掌にそれぞれ一つづつある。

さらに俺は全開でブーストをかける。


二人の規格外の相手に対して、俺も規格外の存在にならないと太刀打ちできないと思ったからだ。


「死なないでね!」


俺は二人にそう声をかけると、地面を蹴って二人に接近する。その時に蹴り上げた地面が抉れ、クレーターのようになっていた。彼女たちに肉薄したところで、風の精霊らしく宙を舞い二手に分かれて俺から距離を取る。まずはオーロラから、俺はそう決めて彼女を追いかける。


シエラ先生と同等の力を手に入れたオーロラだが、その規格外な力をまだ制御しきれていないようで、シエラ先生に比べると動きがぎこちない。フェイントをかけて近づき追い込んでいく。時折とんでもない大きさの風の刃が襲ってくるが、この状態の俺には触れようが、ダメージを与えられることはない。軽く腕で弾いて彼女の手が届く距離まで近づく。左掌の魔力の塊をぶつけようとすると両手で障壁を作り防御の体制を取った。その瞬間に俺は短距離転移を使い彼女の背後を取る。


「ビックバン」


魔力の塊を背中に叩き込む。轟音とともにその魔力の塊は爆発を起こす。


「きゃあぁっー!」


一瞬彼女の姿が目の前で消し飛んだ後、地面に生身の人間が横たわる。危なかった。攻撃直後に彼女の存在が消えたので、消滅させてしまったかと思ったが、精霊化していた魔力自体が消し飛んだだけと見ていいだろう。横たわる姿には傷はない。


「嘘でしょ?!」


俺の強力な魔法を使わせてアピール材料にする程度に考えていたシエラ先生もここまで強力だと思っていなかったようだ。まあ、俺も加減はしたのだが、一歩間違えればオーロラを殺してしまったかもしれないほどの威力に動揺していたが、シエラ先生に隙ができているのを見逃すわけにはいかない。転移で背後に回り同じように魔力の塊を叩き込んだ。


「しょ、勝者ハートランド・バーナー!」


ぐったりとしてしまった二人の女性をそれぞれ結界外に運んでいく。外に出すと二人は目を覚ます。どうやら傷を無かったことにするだけでなく、魔力の方も回復させるようである。これは便利だな。この結界もなんとか改良して、死んでも蘇るように出来ないか試しておこう。訓練や魔法の練習で死んでしまうようなことにならないようにしないと。特に今回は結構危なかったと思う。


「もう、何なの?あなた本当に人間なの?精霊を生身の人間が倒すなんてありえないんだけど?」


オーロラがもっともなことを言っているが、出来ちゃったんだから仕方がない。それに元はと言えば、オーロラ自身がこの世界に連れてきたんだから、普通の人間でないのは確かだが。


「はぁーっ、負けちゃったか。勝てないとか言ったのにやられちゃうなんて、恥ずかしいわ。」


シエラ先生は言葉とは裏腹になんだか嬉しそうな顔をしている。そして小声で、


(「やっぱり私にはこの人しかいない。」)


と言うのが聞こえたのだが、聞こえないふりをしておいた。


パチパチパチ


拍手している音が聞こえたので、そちらに眼を向けると国王が席から立ち上がって、こちらを見ていた。それにつられて周りからも盛大な拍手が起こった。


「すごいぞ!ハートランド!」


「ハーちゃん!お疲れ様!」


聞き覚えのある声が聞こえたのでそちらを向けば、父さんと母さんが涙を流しながら立っていた。隠れて見ていたようだが、シエラ先生が精霊化した時にソナーを使ったので、来ているのは分かっていた。


こちらに帰ってきてから訓練以外の時は実家に帰っていたので、父さん母さんには会っていたのだが、今の俺が実際に戦っているところを見られたのは初めてだ。


規格外の化け物とかした自分の姿はあまり見せたくは無かったのだが、ああやって泣いてくれるところを見ると大丈夫そうだ。正直、拒絶されてもおかしくないと思っていたので変わらずの対応をしてくれたことで、胸に込み上げてくるものがあった。


「父さん、母さん、ありがとう。」


二人はなぜ感謝されたのか分かってなさそうだったが、どうしても伝えたかった。


「おっほんっ。」


あ、父さん母さんのことで王様のことすっかり忘れていた。俺は王様の方に向き直した。


「素晴らしい力だ。カールから聞いていたが、予想以上だった。あとで話があるから、身支度を整えその者たちと共にワシのところへ来るように。」


戦いを経てようやく王様との会談だ。世界同盟の第一歩、絶対成功させてやろう。


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