第71話
いつもお読みいただきありがとうございます。
(ハルキくんっ!やっと見つけてくれたんだね!)
オーロラ先生もとい女神アウロラはそう言うと、俺に抱きついて来た。これから戦闘が始まると思っていた周りのメンバーはキョトンとしているが、マキとシエラ先生は片膝をついてオーロラ先生にひざまづいているように見える。
おそらく、彼女たちも、その可能性に気付いていて先ほどの膨れ上がった神気を視て確信に至ったのだろう。
(でも、どうして?生まれ変わるんじゃなかったのか?これじゃあ、オーロラ先生に乗り移っているだけじゃないのか?)
(そうね。そこから説明しなくちゃね。この子はね、類稀な魔法の才能を持ちながらも、その魔力量の多さに身体が付いて来なかったので、ずっと寝たきりだったのよ。私があの日、アイリスちゃんの身体に入ってあなたに話している途中で彼女は息を引き取ったの。で、どうしてかはわからないんだけど、私は彼女として生まれ変わっていたの。もっともあなたに私の名前を呼ばれるまでは記憶も力も失っていたから、このことに気付いたのはたった今だけどね。)
どういう理屈なのかはわからないが、俺が話しかけたことで、記憶が戻ったということか。じゃあ、今は一つの体に二つの人格があるってことなのか?
(オーロラ先生とアウロラは別人格ってことでいいのか?)
(えっ?違うわよ。オーロラの時の私は私で、今、思い出したアウロラも私よ。)
ん?どういうこと?つまりオーロラ先生の時もアウロラで今もアウロラってこと?
(だから、オーロラも私なのよ!でも生まれ変わった時にこの子の記憶を引き継げなかったから、私が生まれ変わる前の彼女はもういないの。だから爵位もよくわからなかったし、両親の顔もよく覚えてなかったのよ。)
なるほど、そういうことか。つまり俺たちが見てきたオーロラ先生はアウロラだったということか。で、今アウロラとしての記憶が戻って一つになったと。でも記憶も力も失って転生したのになんで神気が膨れ上がったんだろう。
(えっ?神気?ないわよ。輝いてみえる?えっあなたには私が輝いて見えるのね!えっ、違う?そうじゃない?マキとかシエラ先生も、あー、それ神気じゃなくてたぶん加護の力よ。創世神様が何かしてくれたんじゃないかしら?)
彼女の話によると、俺たちが神気と思っていたのは加護の力らしい。でも、ステータスを見る限りは加護なんて言葉は出て来ないと伝えると、この世界ではアウロラが唯一神と思われているので創世神様がかけた加護は表示されないとのこと。なんともご都合主義な話だが、そういうことらしい。
ちなみにこの話をしている間、俺たちはずっと抱き合う形で念話していたので、みんなの視線が痛い。それに気付いて離れようとするのだが、なかなか離れてくれない。
(やっと私としてあなたに会えたんだもん。そんな簡単に離してあげないんだから!)
ちょっとうっとおしくなってきたな。もちろん、俺の目的として、アウロラを見つけ出そうと思っていたが、いざ見つけてしまうと元々駄女神だったこともあり、面倒なやつだ。強制的に引き剥がそう。
俺はドレインでアウロラ、いやもうオーロラでいいだろう、彼女から魔力を奪っていく。彼女の魔力量はとんでもない量だったが、先ほどブーストを使ったこともあってそれなりに吸収できた。吸収しきれなかった分は魔力弾として固めていく。次第に魔力が減りへなへなと崩れ落ちるオーロラ。なんとか危機は脱したようである。彼女の武器は手甲と弓。遠近両方で攻撃するらしい。その武器を破壊して俺の勝利が決まった。
「シエラ先生、終わりました。先生も戦いますか?」
「あなたは本当にとんでもない子ね。私なんかでは相手にもならなそうだわ。オーロラ先生とだったらいい勝負ができるかと思っていたのだけれど。」
元女神の事実を確信していても、それを口に出すことなくシエラ先生は普段の態度に戻してくれた。ただし、あとで話があるとこっそり耳打ちされたので、彼女にはその時に色々話そうと思う。
「うーっ!悔しい!ハートランド・バーナー!覚えてなさいよ!絶対私の方が強くなってやるんだから!」
アクアリス嬢が捨て台詞を吐いている。あとはマキがずっと跪いているのをなんとかしなくちゃだな。
「マキ、強かったよ。初めて戦ったけど、光魔法って凄いんだな。」
「いえ、ハートランド様、あなた様の足元にも及びませんでした。それに光魔法での戦い方は聖女様に教わったもので、それをあなた様に向けて使ってしまったことをお許しください。」
「訓練なんだから、気にしないで。さあ、立ち上がって。」
俺が手を差し出すとうっとりした目でこちらを見上げて、そっと手を取った。それをフィーネとメイサはしっかりと見ていたので、また何か報告されているに違いない。
「それにしても君は本当に凄いな。我々も相当強くなったと思っていたが、君には全く歯が立たなかった。これからはその力を我が国で活かして欲しい。」
カール王子からの言葉に俺はなんて答えるべきだろうか?サジタリア王国のために俺が力を振るう。それはバーナー家にとっては当然の責務。だが、俺にはまだやらなくちゃいけないことがある。
「カール王子、そのことで後でお話する時間をいただけないでしょうか?」
当然、サジタリア王国のために戦ってくれると思っていたであろうカール王子は、俺の話に若干の不満の色を見せたが、王子らしく振る舞い、後ほど時間を取ってくれることとなった。
色々やることが増えて来たので、優先順位をつけて対応していこう。まず始めにやらなくちゃいけないのはマユへの説明だろう。
フィーネとメイサが何を報告しているのか分からないので、自分から正しい状況を伝えないと取り返しのつかないことになる。俺はそのことを考えて難しい顔をしてしまったため、周りのみんなに要らぬ心配をかけてしまったようだが、俺に取っては切実な問題なので、許して欲しい。
マユに事情を念話で正しく伝えたのだが、説教された挙句、転移で直接会いに行かされ、さらに追加で説教をされたのは言うまでもない。




