第67話
いつもお読みいただきありがとうございます。法事も終わりましたので、出来るだけ書き溜めたいと思います。
ベルデたちを見送った俺たちは、一旦宿に戻りこれからのことを話し合うことにした。必要物資は取り揃えてあるので、あとは出発するだけなのだが、すでに昼を過ぎている。これから移動するにしても行き先を決めないといけない。一度整理して考えてから移動する方が効率がいいだろうということで、全員で話し合うことにしたのだ。
「さて、ハイド。覚悟は出来ているようだな。俺の修行は厳しいぞ。大丈夫か?」
「問題ないです。ただ、ミツキのことは長い目で見てやって欲しいです。まだ5歳なので。」
いつでもブレない、シスコンぶり。口調は俺に対して敬語になったが、ミツキを俺から遠ざけるように座らせている。そんな心配しなくても、俺はロリではないので、安心して欲しいのだが。
「わかった。ミツキに関しては厳しくするつもりもない。お前が守れるだけの強さを身につければいい。ちなみにお前はどの程度の強さなんだ?」
ハイドの魔力量はある程度「視て」いるので、把握しているが、どんな能力を持っているのかはわからない。奴隷商のパンプキンは俺に預けたいと言っていたことから、ある程度把握しているようなそぶりだった。しかも、おそらく無属性。無属性自体がレアだと言われていたのに、俺の周りは無属性に溢れている。類は友を呼ぶって感じなのか、今まであまり知られていなかったからなのか?それとも獣人が周りに多いからなのか?
「これを。奴隷商から渡されたものです。」
手渡されたのはステータスカード。2枚あることからハイドとミツキのものと思われる。この2人には何か秘密があると踏んでいるので、サイレントドームで俺たち以外が確認できないようにした。
ハイド
年齢 10歳
職業 元フォレスト王国 王太子
HP 1500/1500
MP 700/700
属性 無属性 レベル1
身体強化 レベル1
スキル
牙爪体術 レベル3
剣術 レベル1
カリスマ レベル2
高貴なる者 レベル1
ヴォイス レベル1
ミツキ
年齢 5歳
職業 元フォレスト王国 第2王女
HP 600/600
MP 700/700
属性 無属性 レベル1
絵画魔法 レベル1
スキル
年上キラー レベル2
うーん、2人ともツッコミどころ満載だな。まあ、1番のツッコミどころはフォレスト王国ってところかな?この大陸にはそんな国ないし。王族だからかもしれないが、2人とも年齢の割には能力は高い。ハイドは歌でミツキは絵か。絵画魔法なんてものは、学園にいたサリ以外にも居たんだなってくらいだ。そういえばあの子はどうしているんだろう?問題があった合宿には、許可が下りず参加できなかったが。
「色々、聞きたいんだが、まずはフォレスト王国っていうのはどこにあるんだ?この大陸にはないと思うんだが。」
「・・・この大陸ではなく海を渡ったところにありました。」
ありました?か。既にないから元王太子か。その辺に秘密がありそうだな。
「この大陸以外の大陸のことは俺はあまり知らないんだが、ナナ、知ってるか?」
こういう国のことはナナに聞くのが一番だ。なんて言っても女王様だしな。
「えぇ、知ってるわ。フォレスト王国、ここから南西に進んで海を渡ったところにあると言われているわ。でも、滅んだなんて話、聞いてないわ。」
場所は知ってるみたいだが、何かハイドと話に齟齬があるように思うな。その辺の事情をハイドは知っているのだろうか?
「いえ、滅びました。半年前、魔人の集団によって。」
「まさか?! それはミハエルたちなのか?」
「あの人がいたかどうかはわかりませんが、頭からツノを生やした魔人の手によって父様や母様は殺されました。俺とミツキはベルデたちによって逃がされましたが、途中に受けた襲撃で傷つき動けなくなったところをあの奴隷商の手の者に捕まりました。」
はぁ、やっぱり面倒な事案だ。ハイドたちの言葉通りならミハエルたち『ヘルシャフト』の連中がフォレスト王国というのを滅ぼした。そして、ナナの言葉にによれば、フォレスト王国は滅んでいないという。二つの意見をまとめると、フォレスト王国が何らかの方法で情報を操作し、襲撃の事実をもみ消し、今は魔人が治めている国になっている可能性があるということだ。
もしその仮説通りだとすれば『ヘルシャフト』のアジトはフォレスト王国にあるということになる。
さて、どうしたものか。俺たちの当初の目的であるアストラムとサジタリアはここから東に行ったところにある。そしてもしフォレスト王国に向かうのだとしたら南西で、ほぼ逆方向。
着実に力をつけてからフォレスト王国に向かうべきか、それとも一直線に向かうのか?
正直、国を乗っ取っているのなら、俺たちだけでは力不足になりかねない。数は力だ。どれだけ俺たちが強くなったところで、10人にも満たない数で国に挑むのは無謀だろう。
「フォレスト王国に行って魔人たちを排除したいのは山々だが、俺たちだけでは数が少なすぎる。ましてや相手は魔人だ。戦力を整えてからの方が良いと思うんだが、みんなはどう思う?」
流石に俺一人で決められるほどの案件ではない。みんなの意見も聞いておきたい。
「俺はあなたの意見に従います。今の俺では全く歯が立たない。あなたに鍛えてもらってから挑みたい。国民のことは心配ですが、魔人にしたって皆殺しにすることはないと思うので。悔しいですが。」
ハイドは拳から血が流れるほどに力を込めて、悔しそうにしている。
「そうね。私も今向かったところで、どんな戦力かもわからないまま戦うのは危険だと思うわ。」
ナナは戦力分析した上で挑むべきとの意見だ。
その後、ムラト、マユ、フィーネ、メイサに確認したが共に同意見。まずは戦力分析して、仲間を集めて、俺たち自身の戦力アップを図っていくべきだというのにまとまった。
「よし。じゃあその方向で行こう。戦力分析についてはミハエルを向かわせているから、奴にやらせよう。俺たちの戦力アップだが、ナナ、君の国の協力を仰ぎたい。俺もサジタリアに掛け合ってみようと思う。そして、学園の優秀な人材を俺が鍛える。どうかな?」
「悪くないわね。もちろん、私の国のことは私に任せて。でも、あなたはサジタリアに掛け合えるの?」
「ナナ、任せてくれ。俺にもあてがある。」
俺たちは二手に分かれて、アストラムとサジタリアへ向かうこととする。アストラムにはナナ、ムラト、マユ。サジタリアには俺、フィーネ、メイサ、それとハイドとミツキ。ムラトには魔石を持たせていつでも転移できるようにしておく。
そして、俺はこの二手に分かれる作戦で重要になる通信手段を確立しなければならない。久しぶりに自重せずに魔法創生だ。今晩中に完成させて、明日に出発だ。
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