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転生魔法使いの愛のある生活  作者: チムチム
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第58話

いつもお読みいただきありがとうございます。

「じゃあ、こいつをどうするかなんだけど、生かしておくか、始末するかなんだけどどうしようか?」


ミハエルをこのままの状態で連れまわすのは正直面倒だ。ここで生かしておいてもダンジョンに戻られてしまったら意味はないし、殺してしまっては『ヘルシャフト』という組織についての手がかりがなくなる。一番いいのは、生かしてヘルシャフトへの囮となってくれることが、今後の俺たちの行動としてはやりやすい。


「そうね、殺しちゃうのは先生なら簡単かもしれないけど、あまり得策ではないわよね。」


ナナとしても殺すよりは生かす方針だ。ムラトはそれに従うだろうし、マユはどうだろう?


「マユ、マユはどうしたほうがいいと思う?」


「うーん、私も殺しちゃうのはどうかなって思う。けど、生かしておいたとしてもどうやって私たちの思惑通りに行動してもらうのかがわからないけど。」


フィーネとメイサも同じような意見だから生かすことは決定だ。あとはどうやって言うことを聞かすかなんだけど、ナナの魅了を掛け続けるのも限度があるだろうし、回復したら魔法抵抗の関係で解除されてしまう可能性もある。うーん、どうしたものか?


「ねえ、ねえ、ダーリン。何をそんなに困った顔してるの?奴隷化しちゃえばいいんじゃない?」


「え?フィーネ今、なんて言った?」


「だ、か、ら、奴隷化すればいいんじゃないって言ったの!」


奴隷化。たしかに犯罪者とかを奴隷に落として強制労働させたり、貴族の一部が、奴隷を買っているというのは耳にしたことあるが。俺の家には奴隷はいなかったし、周りにも奴隷化されている人を見たことがない。フィーネはさも当たり前かのように言っていたが、俺の認識が甘かっただけなんだろうか?


「たしかに、その手があるわよね。でも、いいの?あなたも一応同じ魔人でしょ?その魔人を奴隷にするっていうのはあなたの心情として、大丈夫なのかしら?無理してない?」


ナナがフィーネに語りかけているのを見ると、奴隷化というのは珍しくないことのように話している。マユもムラトもメイサもそれに対して当たり前のように、話を聞いている。俺だけが取り残されているかのようだ。


「ハルキ、大丈夫?お屋敷ではハルキにそういうのを見せないように、旦那様が奴隷を置くことを禁止していた。だから知らなくて当たり前。」


メイサによると、奴隷の存在は俺に見せないように配慮されていたらしい。まあ、小さい頃は家を出る機会もほとんどなかったし、学園にいる間は学園内から出たのは合宿の時だけ。逃げ出してからは自分のことばかりで、周りを見る余裕もなかったし、俺に常識が欠けているのは、致し方ないか。


「メイサ、ありがとうな。」


そう言ってメイサの頭を撫でてやる。目を細め嬉しそうにしている。


「・・・ハルキ、気持ちいい、もっとして!」


頭を撫でていただけなのに、そんなことを言われると、なぜか卑猥なことをしている気分になってくる。


うん、これはマズイ。そんなつもりじゃなかったし、みんなの目が怖い。


「ま、まあ、奴隷化すればいいというのは、わかったけど、どうすればいいんだ?」


誤魔化すようにナナに聞く。ジト目でこちらを見ていたナナも、諦めたかのように溜息を吐いてから答えてくれた。


「街には奴隷商という奴隷専門の商人がいるはずだわ。そこで、奴隷契約して貰えば、すぐに奴隷化できるわよ。」


なるほど、俺は知らなかったが、奴隷商人というのがいるらしい。前世の記憶のある俺には馴染みの薄い奴隷だが、こちらでは当たり前のことのようだ。ちょっと抵抗はあるけど、そこに行くしかないか。


「じゃあ、ギルドに行く前にそこに行って奴隷化させるか?」


俺は全員で行こうかと思ってみんなを見回したが、マユとフィーネが目をそらす。不思議そうにしているとナナが目配せしてきた。


「じゃあ、先生と私とムラトで行きましょう?」


ナナの提案で俺たち3人だけで向かうことにする。あとでナナに事情を聞いておくか。


「じゃあ、マユたちは先に宿に戻って、おかみさんに今日の夕飯は豪勢にしたいからって伝えておいて貰えないか?20階層突破のお祝いだ。」


「う、うん、わかった。伝えておくね!」


マユの様子が変だが、さっきのことに何か関係しているのかもしれない。早急にナナに話を聞かなくては。


マユたちを先に行かせ、俺たちは奴隷商を探す。ムラトに探しに行かせて、俺とナナは2人で先ほどの目配せの意味を聞く。


「マユちゃんのことなんだけどね。あの子は私が小さい頃に保護したって言ったでしょ?実はその保護した先は奴隷商なのよ。幸い、奴隷商に捕まったところを私が無理矢理引き取ったから、誰かの奴隷になったことないわ。それと言っておくけどあの子自身は何も悪いことはしてないからね。1人でさまよって歩いていたところを、たまたま奴隷商が見つけて、馬車に乗せていただけみたいだから。」


頭をハンマーで殴られたような衝撃だった。マユがそんな目にあっていたなんて。たしかにナナに引き取られる以前の話はこれまでしたことがなかったし、聞いてもいなかった。なんとなく聞いてはいけない気がしていたが、そんな過去があったからなんて。そりゃあ、そんなことがあれば、奴隷商になんか足を運びたくないよな。


「いい、先生?マユちゃんに変なこと言わないでよ?あの子は今、あなたといられることで幸せなんだから、それでいいの。過去のことなんて忘れたほうがいいの。だから、先生、マユちゃんのことお願いね!」


「ああ、わかったよ。俺はマユを大切に思っている。その気持ちはナナにだって負けないつもりだ。あ、それとナナ、俺のこと先生って呼ぶのはそろそろやめないか?俺たちは仲間だ。対等の関係であるべきだ。だから、な?」


「まあ、そうよね。わかったわ、ハルキ。でも私の方がマユちゃんを大切に思っているから、そこは負けるつもりがないからね!」


俺たちは笑い合い、本当の意味での和解を果たした。形は違うが、マユを互いに大切に思っている同士、仲良くしていた方がマユも喜ぶだろう。


「おい、お前はなんでナナと仲良く話してるんだよ?」


ムラトが戻ってきた。しかもタイミングが悪いことにちょうど笑いあっていたところだったから、ムラトが気が気でないのかもしれない。


「ムラト、嫉妬してるの?そんなに私が他の人と話すの見るの嫌?それがハルキ相手でも?」


「ハ、ハルキだと?!いつのまにそんなに仲良くなったんだ?!おいっ!ハルキ!答えろ!」


「ハイ、ハイ、ムラト、怒んないの。」


興奮したムラトを抑えるように、ナナがムラトをハグするような形で、抑える。そしてナナの右手がムラトの後頭部あたりを撫でている。身長差があるから仕方がないが、ナナが後頭部を撫でようとすると体を密着させなければ届かない。な、なんか見てるだけで興奮する。う、うらやましい。


「ムラト、ムラトは私のこと好き?私が女王でなくても?」


ナナにしては珍しく、ムラトに対して積極的だ。


「お、俺は、ナナが好きだ。たとえ、ナナが女王じゃないとしても。今の俺では釣り合わないとは思うが、誰よりもナナのことを想っている。それは誰にも負けない!だから俺は誰よりも強くなる。ナナを守れる強さが欲しい。お前の隣に立てるように。」


「ムラトありがとう。私もムラトが好きよ。でも私は女王。この地位があるから自由に恋愛は出来ない。だから、ムラト、強くなって。肉体的にも精神的にも、誰にも文句を言わせないように。それとね、自信を持って。私はムラトのこと好きだから、他の男の人と喋ったくらいで、その気持ちは揺るがないわ。それとも私のことが信じられないの?」


「わ、わ、わかった!俺は強くなる!誰よりも。それと、すぐに嫉妬するのもやめる。ナナを信じる。」


「そう、ありがとう。」


そう言ってナナはムラトの頰に両手を添えて、その魅力的な唇をムラトへ・・・


「はい、はい、はい!ストップ!」


このままでは目の前で、ラブシーンが始まってしまう。こいつら俺がいるの途中から忘れやがったな?


「んもうっ!良いところだったのに!」


「そういうのは2人きりでやってくれ?」


「あら?ハルキだってマユちゃんとしてるでしょ?」


「・・・・・・。」


「あ、あら、そうなの?ごめんなさいね。」


「ムラト、また今度ね!」


ちらっと周囲を確認し、嬉しそうにしながらナナはムラトの頰にキスをした。

ムラトは昇天してる。顔を真っ赤にして惚けている。女王がそんなこと簡単にしてしまって良いんだろうか?


「あら?ハルキもしてもらいたい?」


魅惑的な目でこちらを見て、近づいてくる。え、あ、ちょ、ちょっと待って。


「ダメーーーッ!」


俺とナナの間にマユが立っていた。


「いくらナナちゃんでもそれは許さないよ!」


「ふふふっ。じゃあマユちゃんがしてあげれば?」


ナナはイタズラが成功したような顔をしている。さては、マユがいることに気付いていたな?マユはマユでやられた!って顔してるから、そういうことなんだろう。


ちなみにムラトはまだ回復していない。


「そ、そんなのナナちゃんに言われなくても、私が・・・」


そう言って顔を真っ赤にしているマユはかわいい。ちょっと助けてやるか。


「マユ、俺たちは俺たちのペースで、ね?」


マユからのご褒美は逃したが、俺たちは俺たちのペースでいけば良いだろう。


ちなみにマユはムラトが1人で街中を探してるのを見て、俺たちが2人きりで話していることを察したらしい。奴隷商のことをナナから聞いた俺が、どんな反応をするのか不安で、遠くから見ていたそうだ。


マユはやはりまだ抵抗があるらしいので、奴隷商へは俺たちだけで行くことにした。魔人を連れていざ奴隷商へ。ムラトを現実に戻してやり、俺たちは歩き出した。

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