第44話
「ハ・ル・キくーん、どう言うことか説明してくれるかなぁ?」
マユさんからお説教を受けている。もちろん正座させられている。そしてその横には腕を絡めたフィーネが。正座してるんだからもう離して!
マユの目が座っている。その後ろにいるナナもムラトもトリスたちも。
フィーネと和解したあと、ツノが見えると色々まずいというので、2本のツノが隠れるように隠してやった。それぞれのツノをサイレントドームで囲った形だ。
で、もともとフィーネだったものは、彼女が作ったゴーレムで自分は地中に潜ってゴーレムを操っていたそうだ。魔人だとバレると普通の人はパニックになるので、人間と接する時はああしているらしい。今回俺がツノを隠してやったので、本体のまま腕にひっついている。マユに怒られるのが目に見えるので離してくれと説得していたのだが、、、。
帰りの遅い俺を心配をしたマユがこちらに来て、サイレントドームで覆っていたのに、魔力を視て場所を見抜かれてしまった。
そして空間転移でドームの中に入ってきて、この状況に。。。
マユさんが有能すぎる。まさか中に入って来られるとは思わなかったので、油断した。改良を視野に入れておこう。
「で、あなたはなんでハルキくんにくっついてるのかな?」
マユさんが恐ろしく怖い顔でフィーネに質問しているが、憶する様子は見られない。
「えっと〜、どうしよう?言っちゃおっかなぁ?」
チラチラこちらを見ながら、モジモジしだす。
やめて!マユさんの怒りがさらに増すから!
「私のことかわいいって言ってくれたし〜私も〜彼のことカッコいいって思っちゃって、私のダーリンになってもらうことにしちゃった♡キャッ、言っちゃった!」
なんかキャラ変わってるし、どこぞのギャルみたいな話し方になっている。
マユさんのコメカミに青筋が見える。
「ねえハルキくん、私のこともかわいいって、い・つ・も!言ってくれてるよね?それにす、好きって言ってくれるよね?それなのにこの状況はなんなのかな?」
うわぁー、怒ってるのに好きのところだけ照れちゃって、超かわいい♡
「俺はマユのこと好きだよ!一番かわいいと思ってる!」
男らしくハッキリ言ってやる!こういうの大事だよね?これでフィーネも諦めてくれるだろう。
「あ、そうなんだ。マユ?だっけ?あなたの方が先なんだ。じゃあ私はダーリンの2番でいいよ。2人は付き合ってるんだよね?」
予想外の答えが返ってきて唖然とする。あれ?でも2番でいいんだ。ま、まあ、そういうことなら、、、
ってダメですよね?すみません、マユさんそんな目で見ないで!
「マユ、ちょっとこれには事情があって、後でちゃんと話すから、今は落ち着いて!」
フィーネの付き合ってる発言を軽くスルーしてマユに事情を説明する旨を伝える。
「はぁ〜。わかった。ちゃんと後で話してね。」
なんとか落ち着いてくれたみたいだ。周りのみんなの視線が痛いけど。
「私、ダーリンとパーティ組むから。今までありがとう。」
元の話し方になったフィーネがトリスたちに伝える。彼らはガックリしている。なんか奪ったようになってしまい申し訳無い。
それにしても、なんでこの状況で俺はこんなに冷静でいられるのだろう?以前はあんなに取り乱してしまったのに。並列思考が出来るようになったことで、その辺も客観的に見れるようになったからかもしれない。
正座から解放されて、立ち上がりムラトにだけは事情を先に説明しておこうとフィーネを腕から剥がす。本当に剥がすという表現がぴったりなくらいにひっついている。胸があれだけに感触はそんなに感じられないのが、ちょっと残念。おっとフィーネに睨まれた。表情に出てしまったのかもしれない。俺は気付かないふりでムラトのところに向かう。
ムギュッ!
ふわぁ〜、なんだこの感触?
フィーネを剥がしたらマユが引っ付いてきた。フィーネはナナに羽交い締めされている。
「えっと、マユ?どうしたのかな?」
「あの子ばっかりズルイ!」
かわいいし、なんかいい匂いするし、そして気持ちいい。
「い、いかん。ムラトと話しておかなくちゃ。マユがくっついてるのは嬉しいけど、大事なことだし。」
「・・・嬉しいんだ?♡」
「あっ!」
思わず自分の口を塞ぐ。心で思っていたことが口から出てしまっていたらしい。
それが満足だったのかマユはご機嫌だ。
この状態で引き剥がすのは流石に躊躇する。
「ナナ!後で説明するからちょっとその子抑えといてくれ。俺はムラトとマユに事情話すから。」
「いいわよ!さっきのマユちゃんへの発言に免じて、それまでのは許してあげる。あとでちゃんと説明してね!」
俺はムラトとマユにフィーネが魔人であること、今まではゴーレムを地中で操っていてそれを見破り、なおかつ魔人並みの魔力を持つ俺に興味を持ったらしいとのことを話した。
「でも、かわいいってあの子に言ったんだよね?」
「・・・はい。魔人を人間が恐れるから、俺が正体を見破ったから殺すって言われて。魔人は関係なくかわいいと。」
「それって殺されるから、その場しのぎで言ったの?」
「・・・いいえ。普通にかわいいと思いました。」
「そっかぁ。じゃあ許す!」
「えっ?」
「その場しのぎで女の子にかわいいとかいう人なら嫌いになってた。でも魔人とか関係なしにかわいいと思っちゃったんなら仕方ないかなって。私も獣人だし。。。種族で差別しないハルキくんは素敵だと思うよ。」
くぅーーーっ!なんていい子なんだ。
「マユ、ありがとう!わかってくれて。でもね、俺の1番はマユだよ!それは忘れないでね!」
「うん、わかった!で、あの子が2番ってこと?」
「い、いやそれは〜、まだ知り合ったばかりだし、かわいいと思っただけで好きになったわけじゃ無いから。今後の展開次第かと。だってそれを言ったらナナだって綺麗でかわいいし、でもマユに対する好きとは違う。」
「そうだよね。ナナちゃんが近くにいるのに、私を好きなんでしょ?」
ど直球できましたね、マユさん。
「うん、俺はマユが好きだ!」
「うん、私もハルキくんが好き。」
あ、マユが初めて好きって言ってくれた。
「マユも俺のこと好き!いやっほー!」
マユは顔を真っ赤にして俯いてしまった。ムラトは、、、ごめん、いるの忘れてた。
俺とマユはついにお付き合いすることになった。
人生初めての彼女だ!大切にしよう!




