第43話
いつもお読みいただきありがとうございます。ブックマークしていただけると喜びます。
「ブヒャーッ!」
ムラトに斬られたゴブリンはそんな声を上げながら絶命した。
一階層はゴブリンばかりだ。しかも他の冒険者もいるもんだから、俺たちの力は見せられない。
純粋に双剣で斬り倒してるように見せた方が、いいだろう。あいつは見た目も強そうだしな。
「それにしてもこれだけの冒険者がゴブリンを狩りまくっているのに、一向に減らない。いくらでも湧き出てきてる感じだな。」
ムラトの発言に俺も同意する。「ダンジョン」だから、その一言に尽きる。俺は『メス』を使い、ゴブリンの耳を切り取り『アイテムBOX』に放り込んでいく。今、放り込んでいるのは「ゴブリンの耳」35個だ。同じ種類のものなら1行で表示されるのがありがたい。
俺はさらに『マップ』を使い2階層への階段を見つけているが、赤い人型がなかなかそこに向かわないので、監視の意味も込めて徐々に近づいて行っている。その角を曲がったところで、ゴブリンと戦闘中のようである。ただ、戦闘中に近づくのは他の人にマナー違反と取られかねないので戦闘が終わるのを待っている。
「ブキャッ!」
どうやら倒したようだ。俺たちはゆっくり近づく。
「こんにちは!」
まずは基本の挨拶からだろう。
赤い人型は普通の「人」に見える。見た目はただのかわいい女の子に見えるが、うーん、魔力を視る限りでは異常だ。ちなみにバレるとまずいので俺以外は魔力を視ないように、指示してある。
栗色の髪のショートカットの女の子、多分同じくらいの歳。耳は尖ってないし、獣の耳も付いてない。だけど、俺のマップ上では赤く映っている。
そして胸のあたりがすごく育っている。
「あなたたちもダンジョン初めてなんですか?」
赤い人型のパーティのリーダーらしき男が話しかけてきた。感じの良さそうなやつで、大きな盾を持っている。ゴブリンごときに必要ないとは思うがね。
「えー、初めて今日来ました。良かったら2階層まで一緒に行きませんか?」
虎穴に入らずんば虎子を得ずと言うし、共闘を願い出てみた。まあ、ゴブリン相手じゃ必要ないけどな。情報収集のためだ。
「えっ?いいんですか?そっちの人強そうだったんで、もし一緒に行ってくれるなら助かります。」
リーダーは人間で職業は戦士らしい。大きな盾を持っている以外、特徴がない。強いて言えばいい人そうだなぁと言うのと天然パーマな所くらいかな?と思う。このパーティはみんな俺たちと歳的には変わらないように見える。そうそう、彼の名はトリスというらしい。
そして赤い人型はフィーネというらしい。彼女の職業は魔法使いらしいが、大した魔法はまだ使えないということだ。俺からしたらすごい魔法を使っているようにしか視えないが。
おそらく魔力を視なければ俺も分からなかっただろう。ふと視線を落としてみる。フィーネがビクッとした。
あー、そういうことなんだね。まあ、内緒にしてるみたいだし、後でこっそりコンタクトしてみよう。
他の2人も同様にあいさつを交わしたが、人間の剣士で特段変わったところは見られない。フィーネだけが異常な状態だ。
「トリスたちのパーティはいつから組んでるんだ?」
なんとなしに聞いてみた。
「いや〜、なんかフィーネが1人でダンジョン入ろうとしてたから、こっちから誘ってさっきパーティ組んだばかりだよ。魔法使いみたいだしうちはまともに魔法使えるのいないからさ。」
「そうなんだ。かわいいから誘ったわけじゃないのか?笑」
冗談っぽく言ってみたが、図星だったのか3人とも顔赤くして黙ってしまった。うわぁ、こいつらマジか!
「あ、えーと、なんかすまん。」
一応謝っておこう。
「フィーネはどの属性の魔法使えるんだ?」
探りを入れる。
「・・・土」
おぉー、すごい。まあ、そうだよな。でもこんな使い方聞いたことがないから、何かしら事情があるんだろう。警戒はしているが、今の所こちらへの敵意は感じられない。
問題はいつフィーネと2人で話せるかだな。色々話さないといけないし。
「そこの人、ちょっと話がある。こっち来て。」
おっと、向こうから言ってきてくれた。ラッキー。俺はムラトにアイコンタクトを取る。
「俺、1人か?」
フィーネはうなづく。
「なんか用があるみたいだから、ちょっとだけ話してくるね!ムラトも2人のこと頼むな。」
俺はフィーネについていく。トリスたちはなんだか悔しそうにこっちをみているが、そういうことじゃないから安心しろ。
「他の奴に話し聞かれないようにしたほうがいいか?」
「・・・うん。」
サイレントドーム
「あなた何者?それと今何した?」
「俺はハルキ。成り立て冒険者だ。それと魔法で俺たちの会話が漏れないようにした。」
「魔法?しかも無詠唱だし、こんなの聞いたこともない。」
「なあ、そろそろ本体と話せないか?他の人には見えないようにするからさ。」
「くっ!」
俺はフィーネの影に向かってそう告げる。フィーネは悔しそうにしている。
「・・・そこまでバレてるなら仕方がない。」
不意に今までフィーネだったものが消え、代わりに影からフィーネらしきものが姿を現わす。見た目がちょこちょこ違う部分があるが顔はフィーネだ。
うーん、マップの反応は変わらず赤かぁ。どういうことだ?
「で、事情は話してくれるのか?」
「バレてしまったのなら仕方がない。不本意だけど、あなたには死んでもらわなくてはいけない。ごめんね。あなたのパーティの人にはバレないように私が代わりをしてあげるから。」
「ちょ、ちょっと待て!俺はお前と敵対する意思はない。もしあるならすぐに攻撃している!だからちょっと話をしよう!」
何やら急に物騒なこと言い出したフィーネに焦る。そりゃ隠しているもの見抜いちゃったのは申し訳ないけど、そこまで気にしなくてもいいのに。
「あなたは私の秘密を知ってしまった。だから殺すしかない!」
「だから、話をしよう。その〜、なんだ、これから育つかもしれないだろう?それに俺はそういうかわいい感じも好きだ。だから落ち着け!」
フィーネ本体は擬態?と大きく違う部分がある。主に胸あたりが。ツルッとしている。男の子のようにも見える。その辺りのコンプレックスがあるのかもしれない。あとは頭に付いてる2本のツノ。獣人、ではないんだろうな。
「・・・やっぱり。男はみんな胸ばかり見ている。やはり殺すしかない。」
「いやいや、待って!そんなに気にすることない。かわいいよ!胸なんかなくてもかわいいからもっと自信を持って!」
俺はなんとか慰めようとしているのだが、一向に向こうの殺意は消えない。
「くっ!まだ言うか!私の正体を見破っただけでなく、胸のことまで言うなんて。」
あれ?なんか違くない?胸のことだけじゃないの?
「あ、ごめん。正体ってなんのこと?」
「お前ぇー!このツノ見といてまだ言うか!?」
「すまん!そのツノは何か問題があるのか?俺はてっきり胸を気にしているんだと思っていたんだが、、、。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
お互い無言になる。
「・・・ねえ?このツノ見ても怖くないの?」
「いや、怖くないぞ。むしろチャームポイントじゃないのか?」
「チャームポイント?・・・嘘言ってるんじゃないだろうな?」
「えっ?どうしてそれに怖さを感じるのかわからないんだが、、、。」
「・・・そっかぁ。怖くないんだ。」
フィーネが軽く微笑んだ。
ドキッ!
なに今の?ヤバくないですか?
「・・・あ、あと、む、胸が小さくてもかわいいって言ったのはホント?」
なんだか心なしか言葉遣いも変わってきている。上目遣いでこっち見られると弱い。
「う、うん。本当だよ。俺は気にしないし。」
「そっかぁ。そっかぁ。ふーん、かわいいんだ。」
なんだかニコニコし出したフィーネはとてもかわいい。
「人間にかわいいって言われたの初めてだ。」
「・・・ん?人間にってフィーネも人間だろう?かわいいって言われたことあるだろう?」
「えっ?」
「えっ?」
「あのさ、1つ聞くけど、このツノの意味知ってる?」
「いや、知らない。なにかの獣人なんだろう?」
「・・・・・・違う。このツノは魔人の証。」
「へぇ〜、魔人にはツノがついてるのか?で、魔人だと何か問題があるのか?」
「っ!!!」
フィーネが驚いた顔をしている。
「えっ?だって魔人だよ?人間は魔人を恐れるものでしょ?本当に怖くないの?」
「いや、別に、魔人がどうとか気にしないし。魔人って魔力がすごいんだろう?じゃあ俺も似たようなもんだしな笑。」
「魔人だって聞いても私のこと怖くない?」
「あー、怖くない。フィーネは魔力視えるか?」
「一応視える。でもそんなにはっきり視えるわけじゃない。」
「そっかぁ、じゃあこれなら視えるか?」
俺は抑えていた魔力を引き出し、出来るだけ見やすいように体から溢れる分を圧縮していく。
「ひぃっ!」
かわいい悲鳴が聞こえたので、また魔力を抑える。
「なあ、俺も魔力ある方だと思うんだが、魔人と比べてどうだ?」
「・・・化け物。魔人でもそこまで魔力を持ってる人はほとんどいない。」
「あれ?なんか酷いこと言われてる気が、、、。」
「うん、決めた!私、あなたについてくわ!これからよろしくね!ダーリン♡」
「えっ?ちょっと待って?」
魔人フィーネはそう言って腕を絡ませてきた。
どうしてこうなった?!
ポイント評価よろしくお願いします。より良くしていきたいのでご協力お願いします。




