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転生魔法使いの愛のある生活  作者: チムチム
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第3話

「これより洗礼式を始める。子供たちを連れて順番にこちらの部屋に入るように。」


前世で言うところの神父のような格好をした男の声が荘厳な雰囲気の建物に響き渡る。

男はこの国の大司教と呼ばれる人で、白い口髭を蓄えいかにもおじいちゃん風であった。しかし丸渕メガネからうかがえる細い目の奥が時折光るように子供達を見ていることから、ハートランドはうさん臭い雰囲気を感じていた。


「ハーちゃん、どうしたの?」


訝しげに大司教を見る俺を見てユーリは心配そうに見つめてくる。

もう5年も一緒に暮らしているのに、この美人の顔に慣れない。不覚にもドキッとしてしまった。


「ううん、なんでもない。なんとなく不思議な感じの人だなぁって見てただけだから。」


「ハートランド、あの方はこの国の大司教様でとっても偉い人なんだ。洗礼式を迎えた子供達にどんな魔法の才能があるかを神様からの神託をもとに伝えてくれる方なんだよ。」


「そうなんだ。あの人は神託を受けれるってことは神様は本当にいるんだね。会ってみたいなぁ。」


「そうだなぁ、父さんも会ってみたいなぁ。言い伝えでは絶世の美女に例えられる女神様だから、母さんとどっちが美人かなぁ。」


「もう、アウグストったら、女神様のバチが当たるわよ!」


また、始めやがった、、、。


父さんと母さんは事あるごとにイチャつき始める。今は子供の身とはいえ、こうもしょっちゅうだとウンザリする。子供らしからぬジト目で両親を見ている姿はさぞ周りの人からすれば不思議に映るだろう。

ただ、会えて言おう。俺は悪くない。事あるごとにイチャつく2人が悪いのだと。


そんなこんなで、俺が部屋に呼ばれる順番になった。薄暗い部屋に入ると懺悔部屋?パチンコの景品屋?のような拳が一つ通るかくらいの穴が空いた仕切りがあるカウンターの前に座らされた。

神託を受けて話すのは大司教と言っていたのに、顔を隠す意味があるのだろうか?

不思議に思っていると、それを察した父さんがこっそり耳打ちしてきた。


「あれは大司教様が神託を伝えた相手がわからないように配慮しているんだ。」


なるほど。どんな能力を持っているかは、鑑定スキルがないとわからない。神託を伝える大司教に顔がわかってしまうと色々と神父の身にも良からぬ危険がつきまとう。こちらとしても大司教に自分の才能を全て知られてしまうのは色々まずいこともあるということか。


「それでは洗礼を始める。手をこちらに。」


いよいよこれからの俺の運命を決める神託が降りる。不安と期待の入り混じった気持ちを抑えるように、仕切りについた穴にそっと手を差し込むのだった。





「冷たっ!」


差し込んだ手になにやら水のようなものをかけられて、思わず声が出てしまった。


あとで聞いたところによると、聖水をかけたらしい。大司教はその手を握りなにやらブツブツ呟いている。


ビックリさせられたからなのか、これからの運命を決める瞬間からなのか、心臓がドキドキと鼓動を早める。


「これはっ!?」


大司教の驚いた声に、さらに鼓動が早まる。


「そちらにご両親はお揃いですか?」


神父の声が響く。


「はい、大司教様。こちらに控えております。」


父さんが俺の後ろに立ち厳かに答える。


「いまだかつてないことであるので、こちらも困惑をしております。落ち着いてお聞きください。」


なに?なに?なんかまずいことでもあったのか?まさか、女神様とやらに俺が転生者であることがバレちゃった?


俺の焦りは最高潮になっていたが、なぜか母さんはポォーっとしてる。いつもなら俺の態度と雰囲気を感じ取って、優しい言葉とともに俺に寄り添ってくれるのに!


そして、そんな俺を無視するかのように大司教は告げる。


「女神様からの神託です。あなたのご子息と直接話したいとおっしゃってます。」


「はぁっ?!」


どういうこと?直接?どうやって?


すぅっと母さんが俺の目の前に来た。


「あなたがハートランドね!会いたかったわ。」


虚ろな目の母さんが俺に言った。


待て待て。状況を整理しよう。

大司教は女神が直接話したいと言っているという。先程からポォーっとしていた母さん。

そして、先程の母さんのセリフ。


俺の灰色(?)の脳が結論を出す。


女神様が母さんに降臨?


「大正解!」


心を読んでるかのごとく、母さんはそう言った。


えっ?心読まれてる?


「うん、そうよ!」


なんか女神様軽い。ってか本当に読まれてるんだな。


「軽いってひどいわね!私が直接話したことある人なんて、代々の大司教以外ではあなたが初めてだし光栄に思ってほしいわ。」


「だって喋り方がアレなんだもん。」


「せっかくあなたが緊張しないように気を使ってあげたのに。まあ、いいわ。ここからは直接あなたに話しかけるから、声出しちゃダメよ!」


ん?直接今話してるんだけど。


『あーあー、聞こえますか?あなたの女神様よー。聞こえたら心の中で返事してね!』


『えっとー、聞こえます。でもあなたの女神様とか言われても、ピンと来ないです。』


『もうハルキくんはイケズな人ね。そんなんだから前世で彼女出来なかったんだからね!生まれ変わってもそこは変わらないのね』


女神の言葉が心に痛恨ダメージ、

それよりも


『やっぱり、女神様だけあって、前世のこと知ってるんですね。本名?も。』


『それはそうよ。だってあたしがこの世界に連れてきてあげたんだから。』


この人とんでもないこと言ったぞ。この世界に連れて来られたのはこの女神の仕業だったのか?


『あたしはこの世界の主神で「純潔と愛の女神アウロラ」よ。まあ、この世界の人には創造神と勘違いされてるけどね。創造神っていうのはあなたのいた世界もこの世界も含めて全ての次元、全ての世界を統べる存在なの。あたしはあなたのいた世界の神から条件を満たした人をこの世界に送り込んでもらって、愛に飢えたあなたのような人にこの世界で愛に満ちた生活を送ってもらって、愛の素晴らしさを知ってもらいたいのよ。だからこの世界であなたに愛を知ってもらえるように、あなたの元いた世界で言うチート?ってやつを与えて幸せに過ごしてもらいの。』


『なんて素晴らしい女神なんだ!つまり、この世界で俺は愛に満ちた生活を送るだけでいいってことか。たしかに両親の愛情は感じてるし、人生勝ち組路線に乗ったってことだな。ヒャッホー、最高だぜ!』


ほんの一瞬だったが、女神、母さんの口端が上がったように見えたが気のせい?


『そう、あたしは素晴らしい女神なのよ。もっと感謝しなさい。あ、それとあんまり長いこと話してると、この体が持たないから用件を済ませちゃうわね!ハルキはどんな力が欲しい?』


女神様の言うことにはあんまり長い時間母さんに乗り移っているのは、まずいらしい。


『じゃあ、魔法の才能をください。圧倒的なやつ。』


『いいわよ、じゃあちゃっちゃっとやっちゃうわね』


やっぱりこの女神軽い。


『もう、また軽いっていったぁー。どうしよっかな?やっぱり力あげるのやめようかなぁ?』


『ごめんなさい。もう言わないのでどうかお願いします!』


『まあ、今回は見逃してあげる。私はいつもあなたを見てるから、ちゃんと敬いなさいよ!出ないと、、、。』


「ごめんなさい!敬います!敬いますからっ!」


つい声が出てしまった。父さんと大司教もずっと黙ってた俺がいきなり声を出したもんで、目を見開いてこっちを見てる。


やっちまったー。


『もう、わかったから、あんまり興奮しない!』


すんません。


『じゃあ、あなたには全属性の魔法才能とこの世界の人類最高の魔力をつけてあげる。これで幸せになりなさい。』


『全属性とこの世界の人類最高の魔力、って人類最高の魔法使いになれるってことか!素晴らしい、女神様最高!』


『ふふん、分かればいいのよ!あ、あと愛に満ちた生活を送って欲しいけど、愛にはいろんな形があるから、そこは忘れないでね!じゃあ、またね!』


最後に意味深な言葉を残し女神様は去り、俺は人類最高の魔法使いの才能を手にした。





女神様が去ったあと、母さんはその場に倒れ、床に倒れる前に父さんに支えられていた。

大司教は俺になんの話をしたのかしつこく聞いてきたが、人類最高の魔法使いの才能をもらったなどと迂闊に言えるわけもなく、女神様との約束だから話せないと嘘をついてなんとか引き下がってもらった。


家に向かう馬車の中では父さんも母さんもしきりに聞いてきたが、この異能を知れば両親の態度からもバレてしまうことを恐れて俺は魔法の才能をもらったとだけ伝えて、詳しいことは話せないと話を終わらせた。


「ハーちゃんは何かはわからないけど、女神様からすごい力をもらったってことよね?話せないって言うことはそう言うことよね?その力を何に使うかが大事よ。」


と普段のおっとりした感じとは似つかわしくない言葉と雰囲気で言った。

その言葉に父さんも神妙な表情で俺を見ている。


「心配しないで、ボクはどんな力をもらったとしても父さんと母さんが心配するようなことはしないから。」


およそ5歳児とは思えないセリフを両親に伝える。

母さんはちょっと泣いているように見えた。


「それにしてもユーリはすごいなぁ。女神様をその身に宿すなんて。案外、母さんが本当の女神様なんじゃないかぁ?」


「もうっ!アウグスト ったらぁ」


いつものいちゃつきが始まった。


はぁーっ、この2人は相変わらずだが、俺もいつかこんな風になれる相手を見つけて幸せになるぞ!

心に誓う、ハートランドちゃんでした。


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