第18話
「おかえりなさいませ、坊っちゃま。」
家に帰るとセバスが出迎えてくれた。
「ただいま、セバス。今日はお客さん連れてきたからお通ししてね。あ、あと、父さんは帰ってきてる?」
「これはこれは、坊っちゃまが初めてお連れになったお客様ですな。丁重におもてなしさせていただきます。それと、旦那様は戻られております。自室にいらっしゃいますが、お声がけしておきましょうか?」
「うん、ありがとう。で、ちょっと大事な話があるから、父さんと母さんと、、、いや全員集めてもらえるかな?」
セバスは出来る男だ。真剣な顔付きで頭を下げる。これから話すことが重要であることを、感じ取ってくれたみたいだ。
父さん、母さんにシエラ先生とマキを紹介して、一同がこちらを見る中、俺は話し出す。
「忙しいのに集まってくれてありがとう。これから話すことは今後のバーナー家にも大きく影響することになるから、この場にいる人以外には知られないようにしてほしい。」
俺は転生の話は抜きにして、女神から加護をもらったこと、その加護は他の女性と仲良くすると失われていくこと、そして式のあの時、女神の怒りに触れ、加護を全て失ったことを話した。そして、アイリスが眠っていた間に体を借りてこちらの様子を見にきていたこと、あと、話すか迷ったが女神が、消えてしまったことを話した。さすがにこの話にはショックだったようで、マキは号泣していた。
他のみんなは驚愕の表情を浮かべていた。話の内容が難しかったのかアイリスはキョトンとした顔をしていたが、属性魔法は使えなくなったが、俺は元気で問題ないとだけ伝えてあげると天使のような微笑みで俺に抱きついてきた。俺の妹、マジ天使。
さて、問題はここからだ。無属性魔法のことに触れる。ここからは俺と父さん、母さん、シエラ先生、マキの5人で話すことにして、夕食を食べてからということになった。
「マキさん、あなたも光魔法が使えるのね。ハーちゃんが使えなくなっちゃって残念だろうけど、私も光魔法使えるから何かあったら相談にのるから、いつでも遊びに来てね!」
母さんとマキが同じレアな光魔法の使い手同士、仲良くなっているようだ。
「そ、そんな。聖女様にそうおっしゃってもらえるなんて、光栄です!」
マキは相変わらず号泣してる。しかし、本当によく泣くなぁ、まあ、いい子なんだろうな。神様関係になると感動して涙が出てしまうんだろう。俺だって憧れてる人にあんな風に言われたら泣いちゃうだろうし。
「それにしても、シエラ先生は昔から全然変わってませんね。相変わらずお美しい。」
「あら、ありがとう。でもアウグストくん、そんなこと言ってると、あっちで怖い顔してるユーリに後で怒られちゃうわよ。」
シエラ先生と父さんは知り合いなのかな?母さんの先生もやってたんだから、その辺りの付き合いでもあるのかな?
みんな思い思いに喋ってて、いい感じだ。俺は今まで友達もいなかったし、人を連れてくるなんてことなかったから、こういう賑やかなのは、うん、いいな。学園で友達作ってみんなで騒いで、そういうの憧れる。
さて、食事も終わったし父さんの部屋で今後のこと、無属性魔法のこと、話さなくちゃね。
「ハートランド、さっきの話だとほとんど魔法使えないんだろう?やっぱり騎士学校の方がいいんじゃないか?」
「父さん、ありがとう。心配してくれているのは十分わかるんだけど、ボクは魔法使えるようにがんばるよ。無属性魔法には色々可能性を感じているんだ。」
「まあ、お前がそういうならいいか。じゃあそういうわけで、先生、マキちゃん、こいつのことよろしく頼みます。」
父さんは2人に対して深く頭を下げた。
身分とか関係なく、頭を下げられる父さんはカッコいいと素直に思えた。
「ねえ、ハーちゃん。ハーちゃんは無属性魔法に可能性を感じているって言ってたけど、無属性魔法について何かわかったの?」
「うーん、まだ、よくわからないよ。ひょっとしたら先生なら知ってるかな?って思って。でもいきなり無属性魔法のこと聞いても色々話さなくちゃいけないから、今日来てもらったんだ。」
母さんのその話から話題は無属性魔法の話に。俺は先生に尋ねる。無属性魔法について知っているかを。
「シエラ先生、先生は無属性魔法って知ってますか?ぼくのステータスカードにそう表示されているんですが、誰も知らなくて。」
「詳しくはないんだけど、知ってることは全部話すわね。」
そう言って先生が話してくれたことは以下の通り。
無属性魔法は主に獣人に現れやすい属性で、といっても獣人でもごく僅かな人にしか発現しない。
そもそも種族的に魔力が少ない獣人に使えるのは身体強化の魔法くらい。クラスメイトのターニャが獣人では稀な魔力保有量であり、使える人が少ないとされている幻惑魔法の使い手ではあるが無属性魔法は使えない。(たぶん)ステータスカードを見てないから隠していればわからないとのこと。そもそも無属性魔法は火、風、水、土、光、闇に属さない魔法であるということくらいしか分かっていない。体内の魔力を操作し、筋力の底上げをすることくらいしかイメージ出来ないというのが本音のところである、とのこと。汎用性の高い属性とも言えるが、無属性と魔力量を持った人がいないため検証のしようがないということ。だから今回、自己紹介で無属性魔法が使えるということで、そこも興味を持ったということだ。
「そこも」というのが気になったので突っ込んで聞いてみると、式の時にいきなり強大な神気を当てられ気絶に追い込まれたことが一番興味を引いたところみたいだ。これにはマキも同意して大きくうなづいていた。
「とりあえず、身体強化ってのに使えるのはわかったので、どうやって使うのか?まずはこれを試していこうと思います。」
俺が発言し、実際に試そうとしたところで、先生の横槍が入る。
「そのことなんだけど、一つ提案があるんだけど、いいかしら?」
「ハートランドくん、SクラスやめてEクラスやってみるっていうのはどうかしら?」
先生からの提案はEクラスへのクラス落ちだった。
 




