第10話
「えーっと、ハートランド・バーナーです。
これからこの学園でお世話になります。この学園は母の出身校ということで、同じ学校に通えて嬉しいです。よろしくお願いします。」
親御さんたちの生温かい視線にさらされながら、生徒代表挨拶をした。本当はもっと色々考えて話そうと思ってたんだが、10歳ならこんなもんだろうと妥協して、あえて短くしてみた。
決して考えるのが面倒になったとか、前世でそんな経験がないから、何を話していいのかわからなかったわけではない。本当だよ?
誰かへの言い訳みたいになってしまったが、そういうことである。短めの挨拶が妥当と判断した訳だ。
挨拶を終えて台から降りる。短めの階段を下り、自分の席へ向かう。圧倒されるような美少年、美少女が並んでる。中には獣の耳をピクピク動かしてたり、長く尖った耳が印象的な美少女だったりもいる。いわゆる獣人やエルフとかいう存在だろう。残念なアクアリス嬢を始め、みんな本当にかわいい子ばかりだ。今まで、あまり外出出来なかったけど、これから楽しい学園生活が送れそうだ。
「っ!?」
まただ。強烈な悪寒が走る。冷や汗が止まらない。これはなんだ?周りを見回しても、俺以外はそれを感じていないらしい。
「ハートランドくん、どうしたんだい?気分でも悪いのかな?」
王子様が話しかけてくれるが、気が気でない。先ほどのように一瞬ではないのだ。今も悪寒が続いている。こんなことは前世を含めて40年味わったことがない。もう周りの声も聞こえない、何か話しかけてくれているようなのはぼんやりと見えるが、だんだん意識が遠のいていく。視界は狭まり暗く閉ざされていく。もう目も見えなくなっていくようだ。視界が完全に閉ざされた時、俺は意識を手放した。
どれくらい経ったのだろうか?
目を開けて見る。開けて見たのだが、開いているのか自信がない。確かに目を開いたはずだが、目に映るのは真っ白な景色のみ。何もない。そう、俺の身体すら見えないのか、それとも何もないのか?考えることは出来るが、何も見えないし、聞こえない。これはどんな状態なんだろうか?
「・・・!?」
また強烈な悪寒?気配?身体がないにもかかわらず、それを感じる。
『私以外の子を好きになっちゃダメって言ったよね?』
えっ?突然目の前に現れた。いや、見えないんだけども、何かいる。何かはあれか。まあ、そんなこと言うのはあの方しかいないだろう。
『他の子見て、かわいいとか、かわいい子がいっぱいいるから学園生活が楽しくなるだとか!』
悪寒が走る。どうやら原因は女神様だったようだ。お怒りが増しているのか、強烈な恐怖を感じる。恐る恐る俺は女神様に尋ねる。声は出ないけど、考えれば伝わるはずだ。
「女神様、なんか怒らせてしまってるようで、すみません。ただ怒ってる理由がよくわからないので、おしえてもらえませんか?」
『はぁーっ?ハルキくん、あなた何言ってるの?他の子に色目ばっかり使うから怒ってるんでしょ?私と言うものがありながら!』
「いやいや、色目なんか使ってないですし、私と言うものがありながらって言われても、会ったこともない人好きになる訳ないじゃないですか?女神様に感謝はしてますけど、好きですけど、恋とかそう言うのとは違うと思います。」
『あなた、今言ったこと本気?これだけ私が力をあげてきたのに、そう言うこと言うんだ。へぇ〜、あっそう。ふーん、わかった、そうなんだ。』
なんか一人で納得されてる。
『もう一度確認するわね。私のこと好きじゃないのね?』
「いやいや、好きですけど、恋とは違うだけです。」
『・・・わかった。やっと私だけの人を見つけたと思ったのに、違ったみたいね・・・。そっかぁ、じゃあ仕方ないよね。まったくどいつもこいつも私のことだけ見てくれない。あなたは違うと思ったんだけど、あなたも一緒だった。もういいわ、好きに生きるといい!私の力だけじゃ元の世界に戻すことなんてできないし、出来たとしても私を好きじゃないあなたを戻してあげようとも思わないわ。私の世界で私の愛を受けれなかった報いを受けるといいわ。
もうあなたには関わらない。そう、関わらないから干渉しないわ。あなたが私を求めてももう力もあげないし、こちらからいじわるしたりもしない。この世界には私しか神はいない。神に見放されたあなたがどう生きられるのか楽しみね!
最後にひとつだけ、あなたに教えてあげる。
愛は時として憎しみにも形を変えられるの。
愛にはいろんな形があるのよ。それを覚えておいてね。じゃあさようなら。』
「えっ?いやちょっと待ってください!話し合いましょうよ。えっ?なんでこうなった?かわいい子だなぁって思っただけじゃん」
「女神様〜、返事してくださいよー!女神様〜!」
何度呼びかけても、返事はなかった。
「はぁ〜、独占欲強すぎだろ、、、。」
ハルキは女神に見放された。




