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第5話 勇者は試練と共にある

いよいよ異世界編開幕です。


「またまぶしっ!」


 視界が一瞬で純白に塗りつぶされ、目の前の笑顔のカンリが消える。

 カンリと握っていた手の感触も消える。

 純白のテーブルとイスも消える。

 風になびく大草原が消える。

 俺の体が消える。

 消える。

 消える。

 消え――――――――――


―――――向こうの世界に着いたら、足元に僕からのプレゼントがある!君の幸運を祈っているよ!


「―――――ハッ!?」


 危ない…………これが消滅というやつか。声が無ければ意識は呑まれていたかもしれない。ありがとうカンリ。初めて君に感謝した気が……いやそもそも俺の魂、転移耐えられるほど強いんじゃなかったのかよ。


 脳内で『てへっ☆』と舌を出すカンリを思いっきりぶっ飛ばして溜飲を下げた俺は、軽く周囲を見渡す。


「にしてもここは…………そっくりだな。」


 そう、俺が目を覚ましたのは―――――草原。

 カンリが作った世界と似たような大草原だ。

 立って改めて周囲を見渡してみる。向こうと違い、やはり"生"の躍動を感じる。

 吹き抜ける風が心地よい。空気が綺麗だ。モチベーション上がるぜ!

 唯一違うのは、遠くに見える山脈と―――――


「…………街、か。」


 恐らくあれが俺の冒険の始まりの街となるだろう。

 すぐに向かいたい気持ちもあるが、まずは…………。


「さっきから気になってたんだよな…………おい。全部見えてんぞ。」

「なんだと!?」


 いや、なんだとじゃねぇよ……本人は伏せて草むらに潜れていたつもりかもしれないが、バレバレなんだよな……。草原そんなに草高くないし。


「古より伝わりし隠密の葉隠とまで言わしめた葉隠家の長女、この葉隠木葉(はかくれこのは)を一発で見破るとは…………貴様、ただの盗賊ではないな……!」

「は?盗賊?」


 丁寧に自己紹介まで言ってくれたこの黒髪美少女、なんだ?俺が倒れてたから介抱してたとかそういうオチじゃないのか?おいおい生の刀持ってるじゃねーか!…………え?ここで抜くの!?


 言うも早いかその美少女はしゅばっ!と起き上がるとなんと抜いた刀をこちらへ向けてきたではないか。いや死亡フラグ早すぎないか?え?


「ただの盗賊ではないのなら先手を打たせてもらおう…………!」

「いや待てって!!!!盗賊って何だよ!!俺手ぶらだし!!何にも持ってないから!!ほら!!ほら!!!」

 

 俺は必死に手のひらを振ったりして弁明を試みるが、この美少女、刀を持ったままジリジリと近寄ってくる。聞く耳持たずかよ!ええい!初日で速攻死んでたまるか!俺は異世界刀無双をすると決めたんだ!

 

「…………秘技!逃走!」

「なぬ!」


 俺は命あるに越したことはないと判断し、逃走を試みる。が。


「ぐわっ!」


 …………なんといきなり躓いた。足元に何かあったようだ。


「ここが好機!」


 やっべぇーーっ!美少女は今こそ斬らんと言わんばかりに踏み込んでくる!速い!俺は半分ヤケになりながら足元の何かを拾ってその美少女に投げつけ…………


 ガキィン!!


「うおっ!」

「きゃっ!」


 …………るより前に刀が到達。

 その何かに当たり、弾かれた刀は美少女の手から離れ、少し離れた地面にブスッ!と刺さった。

 反動でその美少女は後ろに倒れてしまう。


 俺は腕がめちゃくちゃ痺れた…………。にしてもなんだ?あの速度の刀を弾いちまったぞ。


 どうやら美少女の方は気を失って倒れているらしく、あられもない姿で目を回している。

 …………しばらくそっとしておこう。


 俺は腕をさすりつつ起き上がる。

 取り敢えずまた襲われたらたまらないので、刺さった刀を回収する。おぉ、本物だ。


 いざ、刀を抜こうとしたが…………なんだこれ!?重すぎる!

 地面に突き刺さった刀が死ぬほど重い!

 別に深く刺さっているわけでもないのに、体に溜まる疲労感が尋常ではない。こんな物を振っていたのか?どんな筋力してるんだあの残念美少女!


 ほうほうの体で刀を引っこ抜くと、刃先を引きずりながらなんとか離れた位置まで持ってきた。


「ハァッ…………ハァッ…………なんだこれ…………刀にしても重すぎるだろ…………。」

 

 正直もう辞めたいが、命の安全の為、まだやることがある。

 美少女の体中から武器になりそうなものを全て調べなくてはならない。

 

 すると、合計10本ものクナイが出てきた。忍者か何かか?

 しかも全て重さが尋常じゃない。刀程ではないがこのサイズにしては重さが異次元だ。


 なんとか刀と同じく全ての武器を少し離れた場所まで持ってくる。

 あと、先に言っておくが全然エロいことはしていない。断じてしていない。ささやかな谷間とか艷やかな足に触れたのは武器を確かめる為であり、命の安全の為。不可抗力である。


 縛るものもないので、残念美少女はそのままにしておき、武器を纏めてから少し離れた位置で休みがてら座っておく。起きればすぐにわかる位置だ。流石にこっちに武器があると分かれば、起きてもすぐには襲ってこないだろう。

 それに、こんな所に美少女一人ほっぽっておけないもんな。襲われたのは俺だけど…………。


 その間、俺は先程の、足元にあって刀を弾いた物を調べてみることにした。見た目は銀色の腕輪で桜と刀の文様が描かれている。正直それ以外は何も描かれていない。

 しかも、あの速度で斬られた筈なのに傷一つ付いていない。普通の金属じゃないのか?


「そう言えばカンリが、『足元に僕からのプレゼントがある!』とか言ってたな。もしかして…………これか?」


 初手からあんな事があったのですっかり抜け落ちてたが、もしかするとコレかも知れない。さっき俺が倒れていた所も見ておくが、それらしき物はない。恐らく間違いないだろう。

 

「プレゼントって言ってたしな…………嵌めても大丈夫か?」


 恐る恐る、右手に嵌めてみると、以外に違和感なくすんなり…………おおっ!?


「お…………なんだ…………これ…………。」


 腕輪が二の腕の辺りまで来ると一瞬電流みたいなのが脳内を駆け巡り、少しひりつくような感覚が腕輪の下に残った。




 俺は、腕輪の使い方が分かるようになった。






腕輪の使い方が分かるようになりました。

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