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第2話 日常は突然に変化する

第2話になります。専門用語みたいなのも多く出てきます。

あと、なるべく読者様の気持ちを削がないように前書き、後書きは減らしていくつもりですので、宜しくお願いします。





 ―――――数十分前。




「むっ、エナドリ切れた…………」


 俺の目の前には空のエナジードリンク缶が3本。


 明日が休日だからって少し飲み過ぎだろうか?

 でもここんとこエナドリがないと上手く起きてられる自信が無いんだよな……。


 ポワッ


 どうしようか、と思っていると聞き慣れた音が耳に入る。


「おっと、はいはい~っと。」


 オンラインゲームじゃよくあるチャットが来た時に流れるサウンドだ。皆はこの音が少し子供っぽいと余り気に入らないようだが、うっかりゲームに集中しすぎる俺には丁度いいサウンドだ。


 画面を見れば俺のキャラクターが動きを止めたことを訝しんだギルマスがチャットで問いかけてきていた。


Yato(ヤト)さんどうしました?』


 Yatoっていうのはゲーム内での俺のニックネームだ。本名が桜木矢刀(さくらぎやとう)だから名前から取っただけのありきたりな名前。

 でも俺は、自分で言うのも難だが矢刀って名前は結構好きだ。


『すみませんホワイトさん! >< ジュースが無くなってしまって…………。コンビニすぐそこなんで買い足して来て良いですかね?』


 ホワイトさんは俺の所属するギルド【白龍刀身】のギルドマスターだ。

 少数ギルドということもあるが、何かと新参の俺にも気を使ってくれるし、こうして他のメンバーと一緒にクエストに行って交流したりと積極的なマスターだ。

 勿論、他のメンバーからの信頼も厚い。


 ポワッと音がしてすぐに返答がチャットログへ流れる。


『今はボスも居ませんし、大丈夫ですよ。そうですね、皆さんも一度ここら辺で休憩しましょうか。私もコンビニに少し買い出しに行くので、もしかしたら会うかもしれませんね ^^』


「それは流石にないない」


 会ったら是非、刀好き同志として語り合いたいが、それは流石に夢見すぎだろう。


 俺は『流石にないと思いますよ』とだけ付け足して、MMORPG【Weapon and Heroes】を後にした。


 ―――――それが全ての始まりになるとも知らずに。



 *



 ―――――MMORPG【Weapon and Heroes】通称【WaH(ワフ)】―――――


 このオンラインゲームで矢刀は新参ということもあってか、交流も兼ねてギルドメンバーと共にクエストに挑んでいた。


 矢刀は決して初心者ではない。ゲームはかなりやり込んでいる方だと自負もしているし、実力もある。だが矢刀は今までソロプレイヤーだった。矢刀自身が自分から他人を誘う人間ではないということもあるが、それ以上に、このオンラインゲームでは理由がある。


 ゲーム上での矢刀の職業は【侍】。

 刀を操り縦横無尽に敵を斬り捨てる超攻撃職だ。

 一見ありきたりな職業でもあるが、このゲームで【侍】であるということはそれなりに大きな意味を持つ。


 具体的には武器。【侍】の()()()()は【刀】―――――

 そう。()()なのだ。

 このゲームでは、一つ一つの職業が使える武器を絶対武器と言う。


 つまり、それしか使うことができない。


 例えば職業【魔道士】なら【(ロッド)】、【神官】だと【聖杖(ワンド)】というようにそれぞれの使える武器が決まっている。例え、普段は一緒に使えそうな武器でも【守護者】と【戦士】に分かれ、前者は【(シールド)】しか使えず、後者は【(ソード)】しか使えないという徹底ぶりだ。

 見た目が似ていてもそれは全く別の武器だったりすることも多い。


 まぁ、【盾】なら【大盾(グランドシールド)】、【剣】なら【双剣(デュアルソード)】と言ったように上位レベルで装備できる派生武器もあり、性能も桁違いなのだが……あまりにも数が少なく、持ってる人間は殆ど居ない為、殆ど都市伝説レベルだ。


 ただ、意外にも防具の方は逆に制限が殆ど無く、稀に騎士鎧をガッツリ着込んだ魔道士とかもいたりする。

 そのまま杖を持つのだから、見た目はかなりシュールだ。


 そんなゲームだからそれぞれの職業にかなり偏った性能と特徴があり、役割が被らない為、いつもそれぞれが需要で溢れており、ゲームバランスは意外にもしっかり取れているのだ。


 実際、今まであまり人気が無かった【盾】しか使えない【守護者】なんかはその余りにも圧倒的すぎる防御力と迫力で最近じわじわと人気が上がっていたりする。


 しかし。【侍】は別だ。全く人気がない。むしろ『ビジュアルだけだ』とまで言われて厄介払いされている節すらある。


 なぜか。


 実は、【侍】は超攻撃職なだけに、このゲーム内で役割が被っている職があるのだ。

 

 その名を【狂戦士】、絶対武器は【戦斧(バトルアックス)】。

 圧倒的な攻撃力。そして()()()()

 【刀】は基本単体攻撃なのに対し【戦斧】は範囲攻撃。


 効率が求められてしまうオンラインゲームにおいて当然のように【刀】はハブられてしまったのだ。


 職業ステータスにも勿論差は出るのだが、重視されがちなのは攻撃力、射程、立ち回り。

 モンスター狩りメインなRPGにおいてそれ意外のステータスは殆ど意味を成さない。


 ついでに言うと、パーティー狩りを主軸において考えられている【WaH】は仲間が倒れても圧倒的な回復力を誇る【神官】が居れば即蘇生という事も可能なのだ。

 

 よって、【侍】は不名誉な"不要"という烙印を押されることになってしまったのだ…………。



*



「でも、それに異を唱えたのが我らが【白龍刀身】ギルドマスター"ホワイト"さんなんだよなぁ……。」


 俺は、近場のコンビニへ行く道中でこれまでの思い出に耽っていた。


「『ビジュアルがなんだ!かっこよければ良いじゃないか!刀好き達よ、今すぐ集結せよ!』って…………ギルドの紹介文に普通書くかなぁ……。いや、俺も刀大好きだから全然大歓迎なんだけどさ、やっぱそれがホワイトさんらしいよな……。」


 一人でモンスター狩りをしていた所を3日前に偶然ホワイトさんに発見されて俺はそのギルドへ招待された。

 文言の通り、メンバーには【侍】しかおらず、まさしくこの風潮を()()開くというプレイスタイルだ。需要ガン無視。

 しかし、【侍】のメンバーが一斉に凄まじい速度で敵へ接敵し圧倒的な火力で葬り去る姿は圧巻の一言だ。他プレイヤーも一度はあの光景を見るべきだと強く思う。




『ですが【白龍刀身】自体も実はまだ発足して1ヶ月くらいですから、夢はまだ全然先ですけどね!』




 と言うホワイトさんはゲームの中だが、とても輝いているように見えた。

 全くこの状況を悲観していなかったからだ。




『だってもう私一人じゃないですよ』




 あの時の言葉を心の中で反芻する。


 あぁ、久しく感じていなかった高揚感だ。俺も今は新参メンバーだが、まだギルド自体も新参。

 いつかは俺も最強の刀使いギルド【白龍刀身】の古参の一人として名を馳せて……………


「ありゃぁっとやした~」


 そんな声が聞こえてくるが、ボーッと高揚感に浸る俺はコンビニへ辿り着いたことも、同時に自動ドアから他の客が出てきたことも気付いていなかった。


 ドンッ


「あっ、すいません!」


 ガコン!カラカラカラ……………………


 ぶつかった衝撃でその人のレジ袋の中のエナジードリンクを落としてしまった。

 しかも相手は女性だ。それに、


 ヤバい……俺も飲んでるやつだし……あれは炭酸……!


 俺は『すいません!』と謝りながら急いで拾って渡す。


「これ、炭酸ですよね?俺、同じの買う予定だったんでそっちと交換しません?あ、勿論お金は払うんで……」

「大丈夫ですよ!こちらこそ、すみません。ボーッとしていたようで。」


 彼女は笑顔で逆に謝ってきた。

 顔を見ればかなりの美人……しかも同年代くらい?この近辺では見たことがないし、こんな深夜にコンビニへ……?でもエナジードリンクって…………いやいや。きっと忙しい事情があるんだ……。


 俺が一人で納得していると、彼女は急にハッとした顔になり、


「あ、待たせてるので!すいません!ドリンク大丈夫ですから!」


 それだけ言って慌てたように走り去ってしまった。

 飲む時にブワッと吹き出さない事を祈るばかりだ。

 

「…………それにしても、誰かに雰囲気似てるんだよな…………ん?」


 ふと足元を見るとコンビニの明かりに反射して見慣れないものが落ちている。

 

「刀のストラップ?しかもこの形…………。」


 俺はまさか、と辺りを見回すも、既に彼女の姿はない。

 さて、どうしようかと考えを巡らせると―――――




―――――きゃぁっ!




 ―――――俺がストラップを握りしめたまま、その声へ向かって走り出すのにそう時間はかからなかった。







説明回みたいなもので申し訳ありません。

文章もそれに吊られて多くなってしまい、見にくかったかと思われます。


第4話か第5話あたりで異世界に連行できそうです。


忌憚のないご意見お待ちしております。

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