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魔女の一族  作者: 月鳴
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004:どうしてそうなった

急に生まれるよ。妊娠期間がカットされているため話がサクサク進むのか、と自己解釈しております。何分正体不明の魔女なのでなんでもありかなと。あと夢魔云々は適当に捏造してます。


 娘たちは、デジャヴを見てるようだと思った。

 母は仁王立ちで腕を組み、昨日の闖入者は何故か上半身裸で正座をしている。妹たちと聞き耳を立てていたイドゥアには話の内容がよくわからなかったが、どうやら母は母の布団に男が許可なく侵入していたことを怒っているようだった。

 一番下の妹は母の言っていることがわかるようで、ふんふんと頷いていたからどういうことかと聞けば、

「……ねえさまたちは、まだしらないほうがいい……」

 とぽそっと言った。自分たちの中で一番下だが、一番頭のいい妹がそう言うのなら知らなくていいか、と長女は思った。次女は欠伸をしていた。


 その後。魔女は四人目の娘を産んでいた。


 ヨキという夢魔はどうやら夢と現の境を渡ることが下手だった。夢へと潜ることは出来てもその力を持ち込むことが出来ず、魔力を持たない夢魔は相手の理想の姿に化けることも逃さないように魅了することも出来ないため相手が夢から覚めて逃げてしまうのだ。

 しかし今回は幸か不幸か、相手と肉体的にも近かった。だから夢を通してではなく、肉体を通してヨキは精気を得たのだ。…ちなみにヨキも無意識にそれを行っていたので魔女の絶叫で起きるまでは、自分はきちんと夢から精気を得られたと思って喜んでいた。

 だが、魔女にはそんなこと関係ない。またしても自分の意に反するところで《忌まわしきアレ(・・)》が行われた。怒りに駆られた魔女は男の襟首をつかんで家の外へ放り出すと、今度は魔法を使って森の外へと弾き出したのだった。

 哀れ、ヨキ。


 事故とはいえ生まれてきた娘は可愛い。ニナと名付けた娘は、先の三人とはまた違った子どもだった。片親の種族が違うから、と言われればその通りなのかもしれないが、それだけとも言えないくらいには個性があった。

 ニナはイドゥアのように好奇心旺盛ではなく、ロギニのように野山を駆け回ることもない。かと言ってハベルのように静かを通り越して無音でもなく、普通にしゃべり、普通にはしゃいだ。姉たちはそんな妹をはじめは遠巻きに見ていたが、ニナが一人でハイハイをし始めるころにはそれぞれ構い出していた。

 それを微笑ましい気持ちで見つめながら魔女は考えていた。


 ここまで来たら行けるところまで行ってしまおうか、と。



「というわけで、来てもらったのだ」

「……いえ、何が『というわけで』なのか、全くわからないのですが…」

「俺にもサッパリわからねえな」

 魔女の家には、今度は招いた客がやってきていた。

 一人は綺麗な出で立ちで、顔もよく整った美青年。特徴といえばとんがった耳だろうか。

 もう一人は、もじゃもじゃとした髭のせいでわかりにくいがまだ若い歳だろう男で長身の美青年と比べるとその腰ほどくらいの小柄な青年だった。

「……あー、簡単に言えば好奇心だな。そなたらの子種が欲しいのだ」

「は?」

「ああ?」

「つまり。今度こそ同意の上で子どもを作りたいのだ! 今までの子は皆片親が違う、だからせっかくだし、他の種族の子どもが欲しいと思ってな!」

 とんでもないことを自覚なくあまつさえ胸を張って言う魔女に、長身の美青年と髭の青年、…それから三女ハベルは同じことを思ったという。



 ──どうしてそうなった。





 かくして、男二人に了承を貰った魔女は無事五女と六女をもうけた。…同時ではなく順々にだ。そこは誤解なきように。

 長身の美青年はエルフ族、髭の青年はドワーフ族、それぞれの血を継いだこれまた個性的な家族が魔女の家に増えたのだった。

 エルフ族のタランベルクとドワーフ族のレーヴェンは相互同意の元で子を成したので時折魔女の家に訪れることが出来た。

 お忘れかもしれないが魔女は未だ吸血鬼(と、ついでに人狼(ガラム))から追われている身。結界に覆われた場所で生活しているため、許可なき者は本来ここを見つけることすらできないのだ。

 その二人は度々訪れると、自分の子どもだけではなく他の子も大変可愛がったので娘たちからも慕われていた。

 五女ホロスティスは、エルフの血のせいかどこか浮世離れした娘だったが、数時間後の天気を言い当てたりだとか森の地脈を教えたりだとか、とてもよく見える()を持っていた。

 普段はぼーっとしていて無表情なので、何を考えているのかわからないが母と他の娘たちにはわかるようで、その様子を父親二人はただ見守ることしかできなかった。

 六女のヘリオーシュは、好奇心の塊みたいな娘だった。特に興味を持ったのは母が作った道具であった。加護のお守りに始まり、自動薪割り機、からくり人形など魔法と歯車で出来たそれらをヘリオーシュは分解しては組み立てるという、パズル遊びを好んでしていた。なので父であるレーヴェンは面白そうなからくりや道具を見つけるとせっせとヘリオーシュに与えてはその様をにこにこと見つめていた。

 突拍子もない魔女の提案をほんとうに渋々受け入れたレーヴェンだったが、楽しそうに遊ぶ自分の娘や、わいわいしている他の娘たちを見て、この提案を受け入れて良かったと心から思った。







そんなわけで五女六女が生まれました。七女は色々あるので長いです。きっかけが長いだけで生まれるときはサクッと生まれるのですが。

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