午時葵
―――――あの時、あなたは私に何と伝えたかったのだろう。
昔から、彼女は私とは遠い人間だった。
一目見た時から私達は相容れることなどないだろうと想像できたし、仲良くなる姿なんて想像すら出来なかった。
親しくするつもりが欠片もなかった私に、暇つぶしだったのかな、彼女は声をかけてきた。一応答えることはしたけどそれは返事といえるものではなくて、私達がしたのはきっと会話ではなかっただろう。
彼女は多分、そんな私にいらついていた。
私も、苦手な人から話しかけられることに苦痛を感じていた。
このとき、私達は互いに相手のことを嫌っていたし、苦手意識を持っていたのだと思う。
不思議だねって、言われた。
―――うん、私も不思議だよ。どうしてこうやって、仲良くなることができたのだろう。
不思議だね、わからないよ。
私に、聞かないでよ。
……彼女に分からないことが、私にわかるはずがない。
関わるようになって、話すようになって、いつの間にか仲良くなったって、でも私達は遠い存在だった。
結局、相容れなかった。
なのに、どうして?
不思議。
どころの話でもなかった、ただ謎だった。
何であなたは私にそれを言うの。
どうして他の誰かではなく私を選んで、私に伝えようとするの。
その言葉の裏に何が隠されているのかも理解できない。
ねぇ、何を伝えたいの。
―――――あなたの人生の中で、私はどんな存在で在れましたか…?
『わたしは明日死にます』