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「獨逸浪漫主義」   茅野蕭々 昭和一七年  改訂版、三省堂   について試論

作者: 舜風人

ドイツロマン派文学についての包括的な研究書といえば




古くは、


リカルダフーフ女史の「独逸浪漫派」岩波書店。昭和11年。とか、、


ゲオルグブランデスの「一九世紀文芸思潮史」の第三巻「独逸浪漫派」春秋社、昭和4年。


などあちらの研究者の本が



つとに有名であろうか。



或いはハインリヒハイネの「ドイツロマン派」なども有名だがこれは私は推奨しない。


理由は、、、的外れでつまらないからだ。


最近では、これ、、


アルベールベガンの「ロマン的魂と夢」にとどめを刺す。


これは真に、浪漫派をハートで理解した人の作品であり、傑作だ。



さて日本人が書いたドイツロマン派の包括的な研究書といえば


後にも先にも、、これしかない。


それが、これ、、


「独逸浪漫主義」   茅野蕭々 昭和一七年  改訂版、三省堂



である、


この本は、ドイツロマン派について包括的に述べたいまだに


唯一の日本人による画期的な書物である。


戦前の昭和17年という古い本ではあるが、、



その後こうした包括的なドイツロマン派研究書が日本人の手によって出されたというのは聞いたことがない、


(まあ、有り体に言うなら、需要がない。ドイツロマン派なんてそんなマイナー文学知りたくない?ということでしょうけどね?


私個人的には、、こんな素晴らしいカルトで?コアで?ディープで?レジェンドな?文学はほかにはないと思いますけどね)



さてこの本の内容は筆者が大学で


ドイツ文学史を講義した時の講義録が土台となっている、、と前書きに記されていある。


主としてオスカー・ヴァルツルのドイツロマン主義」や

リカルダフーフの「独逸浪漫派」や

グンドルフの「ロマンティカー」などの書物を参照していると書かれている、


目次に沿って内容を見てみよう、。



第一篇  浪漫的理論


ここではロマン派のよって生起した歴史的経過を述べている。


新プラトン主義にまでさかのぼって淵源を求めている、


シュトルムウントドランク、ヘルダー、シュライエルマッハ、カント、ヤコービー、


そしてシェリング、フィヒテ、ヤコプベーメ、グノーシス、エックハルト。


それらからやがてゲーテの「ウイルヘルムマイスターの修行時代」へと結実する


ロマン主義の経過。


さらにはそこからシュレーゲルとノヴァーリスによるところの、


フラグメンテ(断章)形式による


浪漫派理論の構築、


「アテネウム」「花粉」などによる理論的な裏付けの構築、



さらに宗教観、、シュライエルマッハなどの



恋愛観、,,ノヴァーリスの恋愛観、シュライエルマッハの「独語録」


シュレーゲルの「ルチンデ」


パウルハインゼの「アルディンゲロと幸福の島」

ヘルダーリンのディオティーマ体験など広範に論じられている。




さらにさらに、国家観まで詳述している。





ここまでが理論編で


第二編は


浪漫的藝術で、


抒情詩、小説、叙事詩、戯曲、絵画、とすべて網羅して論じてるのはすごい。


さすがに


浪漫派音楽についてはノータッチだが、


音楽以外のロマン主義藝術を包括的に詳述しているのは画期的だろう。、


特に絵画について詳述しているのは珍しいのではないか。


大体がこの手の研究書は


浪漫派文学だけで浪漫派絵画までは述べた物はないからである。




最後は


「文学的生活」という章で


当時のサロンなどの浪漫派作家の実生活を述べて終わりとしている、


いずれにしても、


ドイツロママン派について


日本人が日本語で書いたものとしては、



これだけ包括的に述べた研究書は


是しかないだろう。


まあこれ以後


戦後は昭和30~40年代までは


河出世界文学全集などに


「ホフマン」「ノヴァーリス」などが撰述されて治められたりしてはいたが


テレビやほかの娯楽が勃興してきて、文学とか、文学全集自体が衰微してしまったので


各出版社も、世界文学全集なんて出版しなくなったので


独逸浪漫派も忘れ去られて


研究書も出されなくなってしまったという流れでしょうね。


あくまでも私見ですが


独逸浪漫派こそが


エアツエールングの奔流の衣鉢を継ぐ、唯一の


文学であり、王家の真の後継者であると思いますけどね。


独逸浪漫派が文学の最高峰であり


それ以後文学なるものは衰退の一途をたどる、


まさに文学の黄昏の引導役がドイツロマン派だった、、と、


確信する次第ですよ。


極言するなら


独逸浪漫派が文学の頂点であり


それ以後、文学は、衰微の一途をたどる、、という結論です。


(しいて言うならば、、今、ブームの?いわゆる「ファンタジー文学」なるものが

浪漫派の残滓?というか、末裔?でしょうね?


でも私見ですが、


これらのいわゆるファンタジー文学なるものは到底ドイツロマン派の足元にも及ばない代物でしかありませんけどね)




さて、、


余話として、、


あの、荒俣さんの師匠?である


神秘学者で「神秘学講義」などの著書がある、高橋厳が


この「独逸浪漫主義」を読んで


痛く影響されたとか?


言うエピソードも残されているようですね?

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