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 クイーン誕生

    影操師

―誕生と目覚めと、大切なキミ。ー




序章 クイーン誕生



 その悪夢は、今も尚、継続中である。


「やめて、許してっ……どうしてこんな……ひぎっ……いいぃぃぎゃぁああああぁぁあぁぁああ!!」

 耳を塞ぎたくとも塞げぬまま、先生の悲鳴が私の聴覚を支配する。

 目を閉じたくとも閉じられぬまま、先生の惨状が私の視界を覆い尽くす。

 両手足を拘束され、身動きが取れない自分の身体。そんな私の目の前で、妊娠中であり今月が臨月だった先生は――……得体の知れない怪物たちに腹を切り裂かれ、生まれる前の赤ちゃんを取り出されていた。

 怪物は、その赤ちゃんを食べ始める。生まれる直前の白くて柔らかい肉を噛み千切り、先生に見せつけるように首の断面をこちらへ向ける。

 腹を切られながらも先生は生きていた。先生が死なない程度に緻密に計算されていたことだった。何故、殺さないのか。それは想像もつかないほど非道なる行いの為。

 食べられた赤ちゃんが怪物の胃におさまると、またもやその腹を裂いて、ただのミンチとなった赤ちゃんを取り出す。そのミンチ状態の赤ちゃんを、怪物共は、こともあろうか先生の子宮に戻した。裂かれた腹を乱暴に縫い合わせられ、先生は再び、我が子を胎内で育てることになった。

 先生の悲しみ、絶望、言葉では言い表せない悲鳴が3日3晩に渡って続く。先生は最後には懇願するように言っていた。

「お願いだから私とこの子を殺して」

――と。その願いは聞き入れられなかった。

 やがて大きく発達した腹は、ボコボコと動き始める。内側から誰かが足で蹴っている。

(まさか)

 と思った。あの肉塊が、人型を成したのかと。

 動きはそれでおさまらず、縫い合わせられた傷口からぽっこりと顔を出したそいつは、黒目の無い白目だけの化け物。それがズズズッと無理やり這い出て来る。先生はあまりの激痛に発狂した。いや、すでに発狂していたのかもしれない。尿も便も垂れ流しで、ケラケラと笑う姿は人間のそれではない。

 叫び、笑い狂う先生の腹は派手に破裂し、そいつが生まれた。元々臨月であったから、予定日も近かったし、生まれる時期に関しては通常通りだった。

 名前は沓名珠里くつなたまり。別名、クイーン。

 怪物の手により人間の腹で育まれた怪物の女王。

 私は、そいつを見つけ出して殺さなくちゃならない。でないと、あの日の悪夢は終わらないだろう。

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