表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/20

21:45 目標ビル

 天海(てんかい)達が二瓶(にへい)と接触する頃、(ゆう)達は部屋で身を低くしていた。


ANGEL(えんじぇる)6、外の様子はどうだ?」

「変わりねぇ、奴等こっちを時々見てやがる。ウザって奴等だよ」

「そうか。ANGEL(えんじぇる)5、そちらはどうだ?」

「正面ビルの奴等は消えましたよ。その他は未だにいますよ。ストーカーみたい」


 二人の返答に(ゆう)は考えた。


「(治安部絡みだと、堀村(ほりむら)警部が関わっているのは確かだ。周囲にECMを展開しているということは、仲間同士の無線連絡をさせないため。このビルには強力なECMも展開しているし、仲間同士は“衛星特殊無線”でしのいでいるが、今度、強力なECMを掛けられると、無線連絡は不可能になってしまう)」


 (ゆう)が考えていると、レイが呼んだ。


(ゆう)(ゆう)

「ん?どうした、レイ」


 レイは手帳型の携帯端末を持ちながら、(ゆう)に言った。


「クリスと一緒にECMの範囲を調べたのですが、周辺ビルから発信されていたECMの電波が次々と消えて行っているんです」

「消えているだと?どうゆう事だ」

「ECM自体のシステムが停止したためだと思います」

「システムが……」


 (ゆう)が疑問に思っていたが、次の言葉にその疑問は晴れた。


ANGEL(えんじぇる)5より報告。左側方面にいた奴らが次々と消えていますよ」


 (あい)が報告をすると、天空(てんくう)も言った。


ANGEL(えんじぇる)6より報告。右側方面にいた奴等も消えたぜ」

「消えた?居なくなったのか?」

「判らん。ただ、何かあったことは確かだ」


 (ゆう)は周辺のビルで何が有ったか、天海(てんかい)達に連絡しようとしたら、レイが叫んだ。


(ゆう)!またECMです!先程より、強力な電波です!」

「また起動したのか?」


 (ゆう)はレイを見ると、レイは首を横に振った。


「いいえ、違います!ECMは周辺からでは無く、こちらに向かって来ています!」

「近づいて来ている?車輛か!クリス!能力を許可する!至急、調べろ!」

「了解!」


 クリスは窓辺に立ち、人差し指を口に当て、『呪文』を唱えた。


 『能力』・『呪文』は、(ゆう)達が使える特殊能力である。

 力は自然界を司る『八式神(はちしきじん)』があり、それぞれ自分に合った『八式神(はちしきじん)』が憑いており、『八式神(はちしきじん)』は失なわれた力のため、(ゆう)達は〈ロスト・ゼネレーション〉“失われし世代”と呼ばれている。


 そして、クリスは人差し指を口に当てて、『呪文』を唱えた。


「〈我、機械を統べしアルケミスト。機械よ、声を我に聞かせたまえ!〉」


 《オート・ボイス》

 クリスは目を瞑り、耳を澄ました。機械達の声を聞くために……


「(……ヘリのローター音。それとこの甲高にエンジン音は……AH―1S対戦車ヘリコプター「コブラ」か!重低音で大地に響くのは……新型機の99式戦車に強襲装甲車両じゃないか!)」


 クリスは目を開けると、(ゆう)を呼んだ。


「対戦車ヘリのコブラに強襲装甲車両と新型機の99式戦車まで来ている!」

「距離は!」

「ヘリが二km!車輛は一kmを切っている!」


 クリスの言う通りに微かなローター音とエンジン音が聞こえ、(ゆう)は即座に反応した。


「ヘリの二kmならすぐ来る!正面窓はクリス、レイ!右側は天空(てんくう)!左側は(あい)!目視出来次第、報告せよ!窓は開けるなよ!」

「了解!!!!」


 (ゆう)が皆に指示したその時、部屋の天井に付いていた赤ランプがなり始めた。


「クソっ!気付かれたかっ!」


 皆は指示通り、指定された位置に着き、柱や窓から顔を少し出して、外の確認をした。


 外は作戦通り車両おろか、市民は一人も居なく静寂な街並みが広がっていたが、直ぐに天空(てんくう)、レイ、(あい)から報告が入った。


「二時方向!上空に発光物確認!数二!」

「一二時方!同じく上空に発光物確認!数二!」

「九時方向!地上に発光物確認!車輛多数!上空にも発光物確認!数二!」

「サイド!赤外線から双眼鏡に移行!武装確認!ドアの固定とトラップ設置は?」

「完了!」

「完了しています!」


 天空(てんくう)(あい)は、ゴーグルを操作しながら言い、(ゆう)は指示を飛ばした。


「レイ!妨害電波が、何処から出ているか調べてくれ!急げ!」

「了解!!」


 皆は(ゆう)に言われた通り、各々の仕事に取りかかった。

 そして、すぐに両サイドから確認の声が上がった。


「二時方向、コブラ確認。武装ミサイル八発に七0mmロケット弾二基、二0mm三銃身ガトリング砲、戦争でもする気か!」


 天空(てんくう)が怒鳴ると、クリスが叫んだ。


「一二時と九時方向、コブラを確認。武装も一緒だ!」


 続けざまに(あい)も叫んだ。


「九時方向、強襲装甲車両を先頭に戦車隊も来ています!」


 ヘリ武装を聞いた(ゆう)は舌打ちをした。


「チッ!コブラに新型機の戦車まで引っ張り出すか!レイ!妨害電波は何処から出ているかわかるか?」

「判りました!上空より高速で接近中!」

「何!?天空(てんくう)!わかるか?」


 (ゆう)天空(てんくう)に言うと、天空(てんくう)は双眼鏡を外して、もう一度コブラの腹を見た。


「全機の腹にECMが付いています!」

「(これでは天海(てんかい)達との連絡は完全に遮断されたか……)」


 (ゆう)がそう思った時、軽い衝撃と揺れがビル全体に広がった。


「なんだ!?何があった?」


 衝撃と揺れの後に、レイが持っている手帳型の携帯端末が鳴った。


(ゆう)!このビルから出ているECMが無くなりました」

「消えたのか!?」

「ええ、どうやらECMの動力部が破壊されたためだと思います!」

「(誰が動力部を破壊した時の揺れか)」

「強力なECMが一つ無くなった為、ASSF(あしーふ)専用静止軌道衛星(せいしきどうえいせい)『カイム』経由で司令部から特殊無線が来ています」

「衛星『カイム』から?繋いでくれ」


 ASSF(あしーふ)専用静止軌道衛星(せいしきどうえいせい)『カイム』。

 通信・偵察(ていさつ)・戦略などの多様目的使われている静止軌道衛星(せいしきどうえいせい)である。

 レイは急いで携帯端末を操作して、通信可能にした。


「通信可能!イヤホンで聞けます!」

「回線開け!」


 (ゆう)は、司令本部からの応答を待った。


『ザザッー、ピーピー、ザザザッ……ち……です。・・応…………・す。聞こ・・ま・・か』

「レイ、もう少し感度を上げてくれ」

「感度上げます」


 レイは、受信感度を上げるために感度数を打ち込んだ。そうすると……


『ピー、……こちら通信室。A.O.(えーおーえー)チームANGEL(えんじぇる)1、応答お願いします』

「A.O.(えーおーえー)チーム、ANGEL(えんじぇる)1!司令部、応答せよ!」

『っ!通じた!通じました!ANGEL(えんじぇる)1大丈夫ですか?』

「ああ、実夏さん。こちらは何とか大丈夫だよ」

『良かった!今、諜報部(ちょうほうぶ)鹿野(かの)隊長と変わります!』


 実夏は喜んだ声をしながら鹿野(かの)隊長を呼んでおり、後ろでは大勢の歓声が聞こえてきた。


蒼野(あおの)さん大丈夫ですか?』

「俺達の方は大丈夫だ。無線はどのくらいもつ?」

『今、俺の部下がビル周辺のECMを破壊ために連絡が出来ていますが、簡単に傍受し易くなっていますので、長くはないです。手短に伝えます』

「了解した」

堀村(ほりむら)警部は自衛隊を丸め込みました。そちらに自衛隊が来ていますか?』

「戦争でも起こす勢いでな」

『どうやら、あなた達に手柄を持って行かれるのが嫌なのでしょう。他にも上の方にも黒幕がいるみたいです』

堀村(ほりむら)警部以外にもいるのか……どうりで……」


 と言っている後ろから、何か言っている声がした。


「どうした?何かあったのか?」

『自衛隊が逆探知を始めました。猶予は二分弱』

「要件を伝えてくれ」


 (ゆう)は頷いた。鹿野(かの)は一呼吸置いて言った。


『作戦続行。『能力』は最大まで使用、派手に暴れてください。俺の部下に伝えてあります』

「了解!」

蒼野(あおの)さん、死なないでください』

「ああ」


 (ゆう)の言葉に鹿野(かの)は答えた。


『無事を祈っています!通信終了』


 鹿野(かの)の無線連絡が切れると、レイが言った。


「軌道衛星『カイム』との通信が切れました。司令本部に逆探知の手は伸びませんでしたが、こちらの位置はばれました」


 レイの言葉に天空(てんくう)が言った。


「じゃ、隠れる必要は無いんじゃ?」

「……そうだな、全員でヘリのパイロットに挨拶するか」


 天空(てんくう)(あい)、レイ、クリスは窓際に立ち(ゆう)はその真ん中へと歩み、外を見据えたその瞬間に強烈な光が(ゆう)達を照らした。

 (ゆう)達は目を細めると外には、対戦車ヘリコプターAH―1S『コブラ』がいた。


『コブラ』は三機しか居なく、残りの二機は上空で待機して、(ゆう)は攻撃ヘリ『コブラ』を見てから、(ゆう)は隣にいたレイに言った。

「レイ、『コブラ』の火器操作と飛行機能を乗っ取れ。そして、堀村(ほりむら)達も携帯パソコンを持ってきているはずだから、『邪魔するな、帰って静かに黙っていろ!』と表示してやれ」

「能力を使っていいのですね?」

「ああ、『バーチャル・ブレイン』の実力を見せてやれ」

「了解」


 レイは腕を前に出してクロスさせ、目をつぶって『呪文』を口にした。


「〈……我の体にやどりし、電脳(でんのう)の妖精達よ。力を我に貸したまえ……バーチャル・ブレインの名において!〉」


 レイの周りに、小さい光の礫が無数に現れ強い光を発し、(ゆう)はそれを見て、


「(後は、ヘリの腹に付いているECMだけか……)」


 (ゆう)が思っている同時刻に、攻撃ヘリ『コブラ』三機は、ライトで(ゆう)達を照らし出しながら、堀村(ほりむら)に連絡した。


「フォックスリーダーより入電。武装した者を五人確認。その内一人は……金色に光っていて、他の者は手を振っているそうです!指示をお願いします」


 堀村(ほりむら)は、フォックスリーダーに聞いた。


「フォックスリーダーへ通電。ECMは起動しているか?」

『フォックスリーダーより堀村(ほりむら)警部へ。全機、ECMは起動しています』


 堀村(ほりむら)は納得いかなかった。


「(ECMが起動しているのなら、奴等は、あの生意気な司令官と連絡出来ないはず。それが、手を振っているだと?とうとう頭が変にでもなったか)」


 堀村(ほりむら)はそう思いながら、フォックスリーダーに指示した。


「フォックスリーダーへ通電。そこで奴等の監視をしてくれ」

『フォックスリーダー了解。フォックス各機もその場で待機』

『了解!!』

『コブラ』が攻撃して来ないのを見て、(ゆう)は安堵の息が出た

「フウゥー、攻撃はされないようだな。レイ、準備は出来たか?」

「いつでもOKです」


 レイの体は、黄金に輝き始めた。


「ECMだけでも撃つか」

「止めておけ、天空(てんくう)

「しかし、このままこっちが殺れちまう」

「ECMの方は、直ぐ解決する。お前の弟がやってくれるよ」

天海(てんかい)が……」


 そう言うと、天空(てんくう)が笑った。


「そうだな、天海(てんかい)ならやってくれるな」

「そういうことだ。各員、行動があり次第作戦の実行!」

「了解」


 (ゆう)が言い終わると同時に、攻撃ヘリ『コブラ』の後ろで何かが光り、その瞬間にヘリの腹に付いていたECMが火花を吹いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ