戦闘開始。邪魔者登場
21:30
涼巳が『ASSF』の司令室で、指揮をしている時、邑達は身を潜めていた。
目標周辺ビル内と天海達がいるビルの二階下には“部外者”がおり、天海達“は部外者”の排除と身元確認に向かった。
天海と多恵は、赤外線ゴーグルを着用して階段を降りた。
前衛は天海で後衛に多恵が付き、階段を降り切る付近で天海は多恵に向かって、『待て』と手信号を送り多恵を止めた。
多恵は足音を絶てずに、天海の隣へと近づき、天海と多恵は赤外線ゴーグルを外して二人は手信号で確認をした。
「〈部屋の前に“部外者”が一人。監視役を確認〉」
「〈どんな奴ですか?〉」
「〈ちょっと待って〉」
天海はまた赤外線ゴーグルを付け、階段から部屋の入口を覗いた。
丁度、後ろ姿が見えており、何か文字が書いてあり、天海はその文字を読んだ。
「(えーと、POLICE?POLICEだって?)」
「〈何て書いてあったのです?〉」
「〈POLICE……警察官だよ〉」
「〈なんで警察官がここに……〉」
「〈判らない。だが、服装は黒の防弾チョッキに紺の上下、黒の防弾ヘルメットだ。治安部の特殊部隊の服装だ〉」
「〈どうして特殊部隊が……〉」
「〈捕まえよう〉」
「〈……そうね。こちらに誘い込んで、捕まえましょう〉」
「〈了解〉」
天海は近くにあった消火器を蹴飛ばすと、派手な音と共に階段の方へと転がった。
その音に下から声がした。
「何だ!今の音は!?」
「おい、見て来い!」
「了解!」
声がした後、部屋の入口にいた隊員が階段近くまで来た。
「ん?消火器が倒れたのか」
隊員はさらに通路を歩き、二人は隊員が階段付近まで来るのを息を殺しながら待った。
「(後少し、もう少し……今!)」
隊員が階段前に来た瞬間、半身を出して、肘鉄を腹に入れた。
天海に肘鉄を喰らった隊員は、腹を押さえていた所に、多恵はダメ押しの蹴りを叩き込み、隊員は声を出す前に気絶した。天海は気絶したのを確認すると、多恵に言った。
「このまま部屋に押し込むよ」
「了解」
天海は、隊員を引きずり、淡い光が洩れている部屋の前まで移動しドアの横に天海が付き、ドアの正面に多恵が付いて気絶した隊員を抱えた。
天海は少し開いたドアから部屋の中の様子を伺った。
部屋の中には、三人の隊員が直径30cmぐらいのパナボラ・アンテナの周りに、集まり何か話しており、天海は多恵に手信号を送った。
「〈部屋の中には三人いる。ECMのパナボラ・アンテナもある〉」
「〈突入しますか?〉」
「〈ああ、この気絶した奴を入れて一気に行こう〉」
「〈はい……行きます!〉」
お互い頷くと、天海はドアを思いっきり開けて、多恵は気絶した隊員を押し込んだ。
「!!なんだ!」
「なにがあった!!」
部屋の中にいた隊員達は驚いて取り乱し、二人は一気に部屋に入るなり大声を上げた。
「動くな!手を上げろ!」
天海は、マシンガンを隊員に向けて警告を出したが、三人の内の一人が拳銃を抜こうとしたが、多恵が素早くサイレンサー付き拳銃を抜き、相手の拳銃を撃った。
乾いた音と共に隊員が抜いた拳銃に銃弾が命中し、拳銃は吹き飛んだ。
「彼は“動くな”と言ったはずですよ。次、変な行動をしたら……撃ちます」
多恵は、銃口を三人の隊員達に向けて脅し、隊員達は驚きと脅威の命中率に大人しく手を上げて、天海達に従った。
天海は、三人の隊員達をECM装置から離れさせて、隊員達が持っていた手錠をお互い同士に掛けさせ、身動きを取れないようにした。
多恵はECM装置に近づき、操作キーで、スイッチやパネルタッチを数回ほど操作すると、低い唸りが鳴りながらECM装置は停止した。
多恵は隊員の額に、マシンガンの銃先を当てて言った。
「一言でも大声をだしたら、額に穴が開きますからね」
隊員は必死に頭を縦に振った。
多恵は天海に合図して、天海もマシンガンを隊員に向け、多恵は隊員に質問をした。
「所属は?」
「じ、自分は警視庁治安部の特殊部隊隊員です」
天海と多恵は顔を見合わせ、多恵は質問を続けた。
「では、次の質問です。誰の命令で、ここで、何をしているのですか?」
「堀村警部に、目標ビル周辺にECMを展開するように命令されました」
「何故、ESMを展開するように命令されたのですか?」
「わかりません!ただ、我々はそう命令されただけですから」
多恵はここまでだと判り、天海に合図を送った。
二人は、マシンガンのグリップ底で隊員達の首元を強く叩き、隊員は息を吐き出したような声を上げながら、白目をむいて気絶し、部屋を後にしようとしたが目の前に人影が現われ、二人は条件反射でマシンガンを構えた。
「!誰だ!」
天海が叫ぶと、多恵は驚いていた。
「(私達に気配を気付かれずに来るなんて、只者ではないようね)」
「(気配に気付かないなんて、どうかしたのか僕は……それにこの匂いは……)」
天海と多恵は、そう思いながら相手を見ると、男で闇を同じ漆黒の服に顔らしき所には赤い光点が見えた。
「待った!俺だ、撃つなよ」
と赤い光点を上に上げながら男は言い二人に近づいてき、二人は男の顔を見て驚いた。
「あ!あなたは!諜報部の!」
「隠密特殊諜報部隊『アルテミス』の二瓶 貴幸副隊長!」
諜報精鋭部隊『アルテミス』
鹿野が率いる諜報部隊の精鋭隊員で、常に死と隣り合わせのため、少人数の隊員で構成されている。
二瓶 貴幸は『アルテミス』の三人いる副隊長の一人である。
口元は、バコをくわえながら笑った。赤い光点はタバコに火だった。
二人の近くに来たため、ようやく二瓶の顔が見え、二瓶は普通の黒髪に瞳は茶色で、
「よっ、お二人さん」
と挨拶し、二瓶は止まっているECM装置を見ながら言った。
「なんだ、ここの装置はお前らが停止させたのか。仕事の手間が省けたよ」
そう言いながらタバコの煙を吐いた。
天海と多恵はマシンガンを下げ、多恵は二瓶に聞いた。
「何故、あなたがここに?他の方も来ているのですか?」
煙を吐き、タバコの灰を落とした。
「フ―……ああ、来ているよ。俺らあのECM装置を破壊とあんた等に、伝言を伝えるために来た。何でも『救援部隊』だそうだ」
「『救援部隊』?それが伝言?」
「いいや、おたく等の隊長にも言うことだが、先に伝言を伝える。伝言は……」
それを聞いた二人は、その場で固まり、最初に口を開いたのは天海だった。
「そ・そんな、ここのECMは邑さんには伝えたが、治安部の隊員が言っていた“後から来る”というのがそれなんて……」
天海に続き多恵も、
「そうですよ。しかもその“賭け”も危険過ぎます!」
「春野司令も苦渋の選択だろう」
二瓶は頭を掻きながら言った。
「おっつ、ちょい待て」
二瓶は、天海達と同じマイクイヤホンを付けていたらしく、マイクイヤホンに手を掛けて話していたが、天海達のマイクイヤホンには、聞こえていなっかた。周波数を変えているのだろう。話が終わると天海達の方を向いた。
「他のECM装置を破壊した。後、さっき話した“奴等”が近くまで来たらしい」
二瓶の言葉に、多恵は邑を呼んだ。
「ANGEL4!ANGEL1応答せよ」
『ザザザッ……ザー――――』
無線からは砂嵐のような音しか聞こえ無かった。
「無駄だよ。奴等のECMだ。何でも三~四機程が来るから、蒼野隊長も気付くだろう」
天海は二瓶に聞いた。
「二瓶さんは、これからどうするつもりですか?」
二瓶はタバコを足元に落とし、足裏ですり潰しながら答えた。
「俺か?今から仲間と合流して、蒼野隊長がいるビルに向かう。あそこにも強力なECM装置の大元があるから、破壊して蒼野隊長と合流し伝言を伝える」
「判りました。自分は“奴等”のECMを壊します」
と言うと二瓶は天海に言った。
「大丈夫か?ECMがある場所は、乱気流の嵐だぞ?」
「大丈夫です!そのくらい何とかなりますし、奴等が気付いても、自分には良いパートナーもいますから大丈夫です」
天海は言いながら、多恵を見た。
多恵も頷きながら言った。
「天海君なら大丈夫ですよ。私も付いていますから」
二瓶は笑いながら言った。
「さすが『A・O・A』だな。奴等のECM破壊は任せたぞ」
「了解!!」
天海と多恵は、二瓶に敬礼をし、二瓶も敬礼を返して身を翻しながら言った。
「頑張れよ!じゃぁな」
二瓶は角を曲がって歩いていった。
天海達も後を追い角を曲がったが、誰もいなく階段を降りる足音も聞こえ無かった。
「もう居ない。まぁ諜報部の副隊長をやってないか」
「私達でもあの人達の気配を感じ取ることは、出来ませんでしたからね」
天海は苦笑しながら言った。
「そうだね。さて、僕達も配置につこう。奴等に一泡吹かせるために」
「そうですね」
二人はそう言いながら、走って一八階へと向かった。




