航空自衛隊基地
20:00、航空自衛隊基地に到着した邑達は直ぐに格納庫に向かいヘリに搭乗した。
「邑さん、爆破に使う爆弾と設置場所が記された、CD―ROMです」
多恵は邑に一枚のCD―ROMと黒のウェストポーチを渡していた。
「ありがとう、多恵。爆弾はこのウストポーチの中か?」
「そうです。中身は、球体型で直径10cm、超高性能爆弾が入ってあります。数は12個入ってますが、10個もあればビルは倒壊出来るように計算してます。トラップなどでも使えるように爆発の威力抑えた指向性爆弾も数個入ってます。
「助かる」
「球体は一個に付きセムテックスの3倍ほど威力があります。キロ数だと約300kgです」
多恵の、言葉に邑は驚いた。
「十分過ぎるぐらいだ。このウェストポーチは防弾だな?流れ弾が当たって、木っ端微塵は嫌だからな」
「大丈夫です。耐熱・耐火・耐ショックに防弾加工で完璧です。球体内には小型の起爆装置がありますので、信管も要りません。全部リモコン操作で起爆出来ます」
と、多恵がほほ笑みながら答えるので、邑も軽く微笑をしながら、
「多恵が作った爆弾だ。信頼している」
その時ヘリの方からレイが叫んだ。
「邑!多恵さん!早く搭乗してください!」
それを聞いた二人は、急いでヘリに乗りこんだ。
『管制塔、こちら『ヤカガミ』。離陸許可をお願いします。どうぞ』
『こちら管制塔。空路は3―2―7、空路上に障害物無し。『ヤカガミ』離陸を許可します』
ヘリは音も無く上昇、夜の闇へと一体化し、目的地へと向かい、一時間後には静寂しきった工業地帯の上空に到達した。
今回の作戦の為に、警察は数十kmある無人の工業地帯を完全封鎖し、暗闇の空には夜間専用無消音ヘリUHー60J改が飛んでいた。
目的地上空に近づくとパイロットが、後ろにいる者達に無線で叫んだ。
『A.O.Aの皆さん!二分後に狙撃班が降下するビル上空に到着します!降下後、直ぐ目標ビルの上空に行きますので、降下の準備をしてください!』
「了解した!降下用意!」
A.O.Aチーム隊長の蒼野 邑がヘリにいた隊員に叫んだ。全員で降下の準備をして確認が終わった時には、ビルの上空に着いた。
『狙撃班降下ビル到着!気圧・風力ともオールグリーン!降下開始!』
多恵と天海が降下準備を確認すると、邑が叫んだ。
「ANGEL4!ANGEL7!降下!」
ロープを降りる音が響き、多恵と天海はビルの屋上に降り立った。
邑は二人が降り、ロープを外したのを確認して、パイロットに伝えた。
「降下確認!ジョイントを外せ!」
『了解!ジョイント外します!』
パイロットは、コントロールパネルにある一つのボタンを押すと、ハッチ近くの天井に付いていたロープフックのロックバーが外れ、地上にロープは落ちた。
パイロットは、ロープが落ちたのを確認すると、隣の目標ビルに向かった。
『目標、降下ビル到着!気圧に以上なし!風力は、多少ビル風が強いので気を付けてください!降下開始!』
「降下開始!ビル風に注意!」
邑は降下するメンバーに叫び、右のハッチから天空と瞹が降下、左のハッチからレイとクリスが降下し、邑は四人が降下した数秒後に降下した。
ロープを降りる音が響き、五人は目標ビルの屋上に降り立った。
全員がロープを外したのを確認すると、無線でヘリに伝えた。
「ANGEL1より『ヤカガミ』へ。降下成功、ジョイントを外せ」
直ぐにヘリからロープの上が落ちて来たが、その内の二本がビル風に巻かれてビルから落ちそうになった。
「(ヤバイ!窓ら割れたら敵に気付かれてしまう!)」
邑は慌ててロープを手繰りよせるが、先端が屋上からはみ出した。
「チィ!!」
邑は舌打ちをし、ロープが地上へ落ちる瞬間を覚悟したが、硬い金属がぶつかる音が2回した。
音が鳴ると同時にロープは、跳ねる様にして屋上へと戻り、フックの先端を見ると、薄っすらと銃痕の後があった。
「銃痕?!なぜこんな物が……」
そう呟くと、マイクイヤホンから確認の連絡があった。
『ANGEL7からANGEL1。大丈夫か?』
ANGEL7……天海からだった。
天海は別の屋上に降り立つと、直ぐ愛銃のサイレンサー付きスナイパー・ライフルを組み立てて、調整をしながら目標ビルを見ると、ロープが落ちるのを確認して、天海は慌ててロープ先端のフックを撃ったのだ。
「(慌てて撃ったとはいえ、数cmしかないフックに当てるとは神業だな)」
邑は天海のいるビル屋上を見て、
「ANGEL7。ナイス・ショット」
『いえいえ』
天海からの返事の後に、ヘリのパイロットから通信がきた。
『こちら『ヤカガミ』。ANGEL1大丈夫か?』
「こちらANGEL1。大丈夫だ、心配をかけた」
『了解。では、帰到します。ご武運を』
ヘリは旋回し、来た方向に帰って行った。
邑達は、ロープを纏め、屋上か下の階に続くドアの所に集まったが、ドアには電子ロックが掛かっていた。
「レイ、この電子ロック……解除できるか?」
「はい、少し待ってください」
レイはベストのポケットからコンパクト・ノート出し、電子ロックのカードキーの所へカード型コードを挿しキーボードを数回押すと、ピーッとロック解除の音が鳴った。
「開きました」
「よし、俺とクリスが先行する。敵がいなかったら合図するから着いてこい。クリス」
「了解」
二人は慎重にドア開け、敵がいないか確認した。
階段の踊り場まで行き、敵がいないのを確認して上にいるメンバーに合図して呼んだ。
「全員来たな。まず、一七階を抑える。俺・クリス・レイはアタッカー、瞹・天空はサポートを頼む。この階だけ電源が落ちているから、赤外線ゴーグルを付けろ」
全員は赤外線ゴーグルを付け、邑はクリスとレイに指で合図し階段を下まで降り、通路の方を覗いた。
「八~九m行った所に、右に曲がる通路がある。クリス、Xキャノン持ってきているか?」
「ああ、持ってきているぜ」
そういうと、クリスはベストのポケットから少し太めのゴーグルを出した。
『Xキャノンゴーグル』
透過機能があり、壁やある程度の金属を透過する。それで人を見ると、赤外線と同じく体内温度が現れる。
クリスは、赤外線ゴーグルを上にずらし、Xキャノンゴーグルを付けてスイッチを入れると、ヴゥーンと低い音が鳴り響いた。
「敵兵確認、数三。通路の先に敵兵は確認出来ない」
クリスは低い声で言い、邑は全員に伝えた。
「天空と瞹は先に行って正面を確保。確保後、三人で敵兵を潰す。いいな?」
邑の作戦に全員頷き、戦闘体制に入った。
「カウント・スリーだ。スリー……ツー……ワン……ゴー!」
二人は音を立てずに素早く曲がり角付近まで行った。
曲がり角の壁側近くまで天空が行き、一歩後ろには瞹が正面を見据えた。
天空は配置に着いたのを確認すると、邑達に合図を送る。
それを見た邑達は、天空達の所に駆け寄り、邑は天空の隣にレイとクリスは瞹の後ろにつき、邑は天空に声を殺しながら天空に訪ねた。
「どうだ?」
「……相手も赤外線ゴーグルらしい。どうする?殺るか?」
「いや、殺さずに行こう……後々面倒になるからな。全員赤外線のスイッチを切れ。瞹、多恵から貰った閃光弾はあるか?」
「ありますよ。これですよね?」
瞹は腰ベルトから丸い円筒の手榴弾を邑に投げた。
邑はそれを受け取ると天空に渡した。
瞹を少し後ろに移動させておき、レイとクリスは、前に移動させた。
配置を確認した邑は天空に言った。
「いいか、俺が合図したら閃光弾を投げ込め。投げ込んだら後ろに下がれ」
「了解」
「レイ、クリス。閃光が収まったら、突撃だ。敵兵を気絶させろ」
二人は頷いた。
『ゴー』
邑は天空に指で合図を送ると手に持った閃光弾のピンを取り、すぐさま曲がり角に投げ込んだ。
コンッ、コンッと二回バウンドし転がり、コツンと何かにぶつかる音がした。
「ん?何だ」
敵兵の一人は、足に何かが当たったので見て見る。
「?何だ、これは?」
拾い上げようとした瞬間、バシュンと炸裂とともに、眩い光が辺りを照らし出した。
「うわっ!!」
「ぐわぁー!」
通路奥にいた敵兵二人は、視界を完全にボヤケさせ、閃光弾を拾い上げようとした敵兵は、目が焼けてしまったらしい。
邑は敵兵の呻き声を聞くと、邑・レイ・クリスは、すぐさま曲がり角に走った。
目を押さえながら呻き声を出している敵兵が1人に、奥には敵兵2人がいた。
前にいた敵兵が、前肩にある無線機に手探りで探していたのを邑は見逃さないで攻撃を加えた。
「ハッ!」
掛け声とともに正拳を腹に入れた。
敵兵は一瞬の出来事に、体をくの字にして倒れかかったが、更に正拳を入れた右手を即座に戻しながら、上に振り上げて、倒れかかった敵兵の首筋に肘打ちをした。
「ガハッ……!」
敵兵はそのまま気絶した。
邑は、クリスとレイの方を見たがすでに残りの敵兵は地に落ちていた。
クリスは走った勢いを殺さず、敵兵の数歩前で飛び、敵兵の右こめかみに飛び後ろ回し蹴りを食らわせ、一撃で落とした。
レイは身を低くしながら走り、敵兵の懐近くまで行き、勢いを殺さず身体を後ろに倒し、両手を付き右足を振り上げた。
敵兵の顎に入ったのは、サマーソルトキックだった。
敵兵の身体は少し浮いたが、レイはすぐ常体に戻すと、敵兵の懐に走り込み身を低くしたまま、後ろ回し蹴りを敵兵の左こめかみに入れて落とした。
三人は、これを三十秒以内に終わらせた。
「ANGEL1クリアー」
「ANGEL3クリアー」
「ANGEL2クリアー」
邑は天空達を呼んだ。
天空達は警戒しながら近づいてきた。
「さすが、隊長達。三十秒も掛からずに倒すとはなぁ」
「うん。敵兵をたった、一、二発で決めるのだもん」
邑はそれを真顔で聞きながら答えた。
「日頃の鍛練だ……そこの横にある部屋に入るぞ。何があるか調べる」
「そうですね。敵の情報を入手することが出来るかもしれません」
そう答えたのはレイだった。
そして、レイは倒した敵兵の近くに座り、敵の装備を確認した。
「それに、この人達の装備……トカレフではなく、軍が正式採用したアサルト・ライフルや闇市場に流れ出ない物まであります」
「……どうやら、ビンゴかな。色々な部分が……」
邑はドアノブを回しドアを開けた。
警戒しながらドアを開けると、二十台近くのパソコンに、奥には何台ものテレビとパソコンがあり、スモークガラスで仕切られていた。
どうやらこのビルのコンピュータールームで、ビルの制御室でもあるらしいが、誰も居なかった。
邑達は、廊下で気絶させた敵兵を部屋に運んで縄で縛った。
レイは近くのイスに座り、パソコンの電源を入れ、現在の居場所を確認した。
「……邑、ここは使われてない部屋です」
「使われていない部屋?ここからビルの情報は引き出せないのか?」
邑の質問にレイは、
「大丈夫です。上の階にあるため、あまり使わないだけの様なので、情報は引き出すことは出来ます」
「パソコンでここのデータベースにアクセスして、そこから裏には?」
「行けますね。ロックも意外と簡単ですから数分もあれば行けますね」
「バレるなよ」
「誰に言っているのですか」
そう言うとレイは、起動したパソコンを使い始め、邑達は敵兵が来た時のために、入口付近に集まった。もちろん部屋の明かりは付けてはいない。
邑は多恵に定時連絡をした。
「ANGEL4、応答せよ」
少し間を置いて多恵から連絡が来た。
『こちらANGEL4、どうぞ』
「何か変わった様子はあるか?」
多恵から返事があった。
『現状では全くないですが、何故か部屋の見守りがないですし、ANGEL7が見つけたのが、二階から七階までの窓ガラスです』
「窓ガラス?ガラスがどうした」
邑は不思議に思い聞き直した。
『普通の窓ガラスですが、ANGEL7がスコープで確認した所、マジックガラスでした』
「マジックガラス?」
それを聞いた邑達は顔を見渡した。
邑は少し考え込むと、多恵に返事をした。
「……そのマジックガラスは、何階まである?」
『二階から六階までです』
「(二階から六階まで……)ANGEL4。その階は、研究所のはずだ。ANGEL7は、その階を重心的にビルの監視を続行。ANGEL4は、ビル周辺を監視して、何らかの変化が有り次第、連絡をしろ。いいな」
『ANGEL4了解』
『ANGEL7了解』
多恵と天海からの定時連絡を終えて数分後、レイは邑達を呼んだ。
「皆さん、ちょっと来てください」
レイに呼ばれて暗闇の中、邑達はレイの近くに行った。
パソコンの画面を覗いて見ると、そこにはビルの正面図が表示されていた。
邑はレイに聞いた。
「これは、このビルの正面図か?」
「はい、そうです。どうやらビル内のマップみたいな物ですが……」
「どうした?」
「多恵さんが言っていた、二階から六階までのエリア情報が、全く無いのです」
「なに?どういうことだ、そのエリアだけが無いのか?」
レイは座っていた回転椅子を動かし、邑の方に振り向いた。
「ええ、二階~六階以外のエリアまでは何とか表示できますが、二階~六階のエリアは、何らかのプロテクトが掛かっています」
「プロテクト?」
邑が聞くとレイは、またパソコンに向き直り、カーソルで『二階』と表示された文字をクリックすると、〈ID NUMBER?〉と表示された。
「何回か試したのですが、駄目でした。これ以上は相手にバレてしまいます」、
考えながら邑は、多恵から貰った物を思い出した。
「CD―R……」
「はい?CD―Rがどうしたのですか?」
レイ・クリス・瞹・天空は、邑を見て首を傾げた。
邑は思い出した様に、腰にあるウェストポーチを開けて一枚のCD―Rを出した。
「このCD―Rに、諜報部がビル爆破の青図面とビルのCGが入っている」
レイはパソコンのスロットルにCD―Rを入れると、CD―Rを読み込む音が聞こえ、数秒後にビルのCGが出てきた。
カーソルを下に持って行き、二階から六階までをドラック、ダブルクリックすると……、
「これは……二階から六階までの部屋の大きさ・天井までの高さ・天井の厚さ・入口の数……これなら何処が研究所なのか予想が出来ます」
残念ながら、部屋の名前は表示されてはいなかったが、レイはそこに記された数字を見て、何の部屋かを調べた。
レイが調べている間に、邑はクリス・瞹・天空を呼んだ。
「クリス、天空、瞹。来てくれ」
四人はドアの近くに行き、三人に命令をした。
「瞹は爆弾の設置だ。ここを出て右側に行った所の通路に爆弾を仕掛けろ」
邑は、ウェストポーチから球体の爆弾を出して、瞹に渡した。
「多恵ちゃん特製の爆弾?」
「ああ、指向性だから仕掛る位置は任せる」
「了解しました」
「天空は、ドアを内側からロックして、開かないようにしてくれ」
天空はそれを聞いて、邑に言った。
「トラップはどうするんだ?」
「任せる」
「じゃぁ、ドアを開けたら、設置した爆弾が爆発するっていうのは?」
天空は瞹の方を見ていった。瞹は親指を立てて、グーと言った。
「いい案だ。天空、それでやってくれ」
「了解」
天空は、瞹と共にドアを慎重に開けて、廊下に出て行った。
二人が出て行ったのを見てから、クリスに言った。
「クリス、制御室前の防火壁はどの位の厚さだと思う?」
「うーん……」
クリスは天井を見上げて言った。
「下から見てもあの厚さだから防火・防弾だろな。それに、ちょっとやそっとの爆発でも壊れないだろ」
「配線をいじって、作動するようにしてくれ。警報は鳴らないようにな」
頭を掻きながらクリスは邑を見て、
「まかせておきな」
腕を上げ、クリスは部屋の奥へと行った。
「レイ、調子はどうだ」
首だけを邑の方に向けて言った。
「ええ、大体のことが判りました」
邑がパソコンの画面を見てみると、レイは説明をした。
「二階から三階は研究室で、三階の床が半分無く、かなり広く天井もかなりの高さですね」
「二階から三階は繋がっているということか」
「そうです。さらに部屋の奥には大型のエレベーターが一基あります。これが止まる階は、二階から六階までと地下だけです」
「……地下はあるんだな?」
「あると考えていいですね」
画面には、エレベーターのCGが動いていたが、一階以降には<NO EXPRESSION>と出た。
諜報部が、地下まで調べられなかったことを表す。
地下に何かがあることは確かだった。レイは説明の続きを始めた。
「四階と五階も研究所ですが、別々で分かれています。六階は研究所ではなく、何か物を置いているみたいです」
「物……倉庫みたいな物か?」
「そうですね」
「なるほど。それで制圧の作戦立案は出来たか?」
「出来ましたけど、その前に“これ”を見てください」
レイは、最小化していたアイコンをクリックした。出てきたのは、何かの表だった。
「画面に出ている物は何だ?」
「これは、表向きの仕事内容と帳簿です。どうやら外国から車や機械等の部品を大量に輸入していますね」
「部品を?他に輸入している物は?」
「他には、車輛部品にソフト・ハードウェアー等ですね」
「そうか……精密機械や車などを扱っているのか」
「これは“表向き”ですよ。邑が言った通りに“裏“がありましたよ」
そいうとレイは、画面の右下にあったマークを3回クリックすると、パスワード入力する画面が出てきた。
レイは、先程調べたのだろうパスワードを入力すると、別の帳簿が出てきた。
「裏帳簿か……これには何を付けているんだ?」
「内容からすると、何かの薬品と重軽金属を外国から輸入していますね」
『薬品と重軽金属か……』
と呟きながら邑は画面を見た。
画面には、英語の頭文字しかなく、普通の人から見たら、サッパリわからない物で、邑やレイが見ても半分ぐらいしか判らないが、邑は重軽金属で判る物を述べた。
「アルミニウム、チタン、グラスファイバー、金、銀、水晶……」
邑はそれを頭に『ある物』が浮かんだ。
「(この重軽金属は……まさかな、そんなはずは……)」
邑はレイに質問した。
「レイ……この輸入先と何を使って来たか、それに他に所で荷物を積んだ国を調べてくれ」
「すでに調査済みです。」
「何処の国だ?」
「……テロ支援国家の2カ国からです」
邑はそれを聞いて『やはり』と思った。
「これがもし本当なら国際問題です」
「だな……」
邑が色々考えていると、横から天空が声をかけてきた。
「邑、トラップと爆弾の設置が完了したけど……何かあったのか?」
「状況が最悪だ。天空、瞹、クリスもこっちに来てくれ」
邑は先のことを皆に話した。
話を聞いた皆はア然とし、天空は激怒した。
「どういうことだよ!」
「怒鳴るな。少し作戦を変える。レイに調べてもらった所、二階から五階に研究所がある。そこが最初の目的地だったが、変更して六階の倉庫に何が置かれているか確認し、証拠を押さえてから研究所に行く」
邑が皆にそう言ったその時、レイが邑を呼んだ。
「邑、輸入が判りました。経路は空路と海路の二つ、まず大陸から空路で荷物がA国に着いてから貨物船でB国経由に行き、また荷物が積まれて、日本に来ていますね。税関も見事にパスしています」
それを聞いていたクリスは、
「なぜ、諜報部はこのことを知らなかったんだ?」
「多分、輸入名を変えて海路で輸入され、加えて税関の管理は治安部だから……」
邑の一声で皆は止まった。
邑達を毛嫌いしている治安部の警部、港の輸入・輸出を管理している治安部、邑はタメ息をついた。
「……治安部だ。治安部の堀村警部が、ワザと報告しなかったんだろう。やってくれるよ」
「本当ですね……」
しかし、邑はまだ事態が悪化するような気がしていた。
「(胸騒ぎがする……。何か起こる前兆なのか……何もなければいいが……)」
邑とレイは顔を見合わせた。
「レイ!直ぐ作戦本部に連絡!」
「了解!」
無線機の周波数を変え、マイクイヤホンで本部を呼んだ。
「ANGEL2より作戦本部、ANGEL2より作戦本部。応答お願いします」
『…………』
「繰り返し連絡。ANGEL2より作戦本部。応答お願いします」
『…………』
しかし連絡しても、作戦本部からの応答は無かった。
「何で連絡出来ないの?」
「レイとクリスは、原因究明。天空と瞹は、警視庁の作戦本部に連絡を取り続けるんだ」
「了解!!」
四人は指示に取り掛かり、別ビルの屋上にいる天海と瞹に連絡をした。
「ANGEL1よりANGEL4、ANGEL7。応答しろ」
『ザザーはい、こザザッ、Aザッザッ4』
ANGEL4=多恵からの連絡は、雑音混じりだった。
その雑音混じりの無線音に、邑の頭の中にある事が浮んだ。
「レイ!原因は!」
「強力なECMです!」。
「……ECM、使われているタイプは判るか?」
「軍専用タイプです」
「(なぜ、軍専用のECMが発動している!)」
邑は、直ぐ気持ちを落ちつかせた。
「……地下に使われているECMの周波数が変わり、地上に向けて発動した可能性もある」
そう言うと邑は腰に付けていた、トランプほどの大きさに、1cmぐらいの超薄型の機械を取り出した。
「全員FM無線から衛星特殊無線に切り替えろ」
邑達は無線機にあるスイッチを切り替えた。
それはASSF専用の衛星無線で、ECMみたいな妨害電波に影響を受けない物だ。
全員がスイッチを切り替えたのを確認すると、邑は天海と多恵に連絡をした。
「ANGEL1よりANGEL4、ANGEL7。応答しろ」
『……こちらANGEL4!そちらの方は大丈夫ですか?』
「俺達は大丈夫だ。よく無線機のスイッチを切り替えていたな」
『無線連絡で、雑音が酷くその後も連絡が出来なかったので、切り替えておきました。現状はどうですか?』
「最悪だ。地下の強力なECMかもしくは、別のECMが何処かで発動、FM無線が使え無くなった。作戦本部とも連絡が出来ない状況だ。そちらで変化した事はあるか?」
『先程から周辺ビルから人影が見えています』
「人影?」
邑は直ぐ、天空と瞹に指で二人を指し、窓の方を指した。
二人は即座に動き、窓辺へと走った。クリスとレイにしゃがむ様に指示した。
「ANGEL5、ANGEL6。何か確認出来たか?」
窓の外を見ていた天空が叫んだ。
「ANGEL6より報告。正面右側ビル内と屋上に人影確認。一般人ではない」
「こちらANGEL5。正面ビルに人影を確認。ANGEL4と7ではありません」
「ANGEL4。今は何処だ?」
『屋上から離れて一階下の十八階に来ています』
「ANGEL5、侵入者は何階だ?」
「侵入者は十六階付近です」
「(侵入して来た奴らには、まだ多恵達に気付いていないな)」
「ANGEL4、そこから二階下の十六階に“部外者”が入った。排除し、部外者の身元確認をしてくれ」
『ANGEL4了解。ANGEL7と共に“部外者“の排除・確認をします』
そう言うと、無線は切れた。
「天空と瞹は、外の監視だ。何か変化があり次第伝えろ」
二人は頷いた。
「作戦本部は……涼は何をやっているんだよ」
クリスはボソッと呟いた。邑も……いや、皆がクリスと同じことを思っていた。
「(本当にどうなっているんだ……これからどうなる……)」
邑は軽く溜め息を吐いた。