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ブラッド・ヴァース~血の大地~  作者: 月影 亨
第四章~それぞれの死闘~
16/20

22:45 ”クリス・レイフォードの戦闘“

 クリスは、倉庫室から研究所に飛ばされていいた。


「……ここは研究所」


 研究所内を歩いていると、とても大きな水を入れた装置が目の前に現れた。


「これは……まさか水素爆弾か……いや、違う物か……」


 装置に近づこうとすると人影が出てきた。


「クリス・レイフォード……もしくはオート・アルケミストと言えばいいかな?」


 クリスの名前を呼んだのは、コートのフードを深く被った男性であった。


「貴様は何者だ!?」


 クリスは即座にマシンガンを構えた。


「私はビーストマスター・コルノ。貴方を殺せとの指令がありましたので」


 コルノは、軽く会釈した。


「俺を殺す?どうやって?ビーストマスターなら獣がいないぞ」

「いますよ。周りを見てください」


 クリスは改めて周りを見ると、水溶液容器の中には人間ではない怪物達がいた。


「まさか!お前っ!」

「そうです、彼らを使います」


 コルノは、コートのポケットから小さい笛を出して吹き始め、容器の中に居た怪物達が次々とガラスを破って出て来た。

 怪物達は外に出てくるとコルノの周りに集まり、クリスを威嚇し始めた。


「彼らは僕の命令しか聞きません。さぁ、殺して来なさい!!」


 コルノは笛を吹くと、怪物達は次々とクリスに襲いかかり、クリスも移動しながらサブマシンガンで応戦した。

 乾いた音が怪物達に当るが、それを平気そうな顔をし、さらに襲いかかって来た。


「クソッ!こいつ等は不死身かぁ!」

「そんな物で倒すのは無理です」


 クリスはサブマシンガンを捨てると、怪物に向かって叫んだ。


「来い!“神器(じんぎ)刀妍棒(とうけんぼう)”」


 “神器(じんぎ)刀妍棒(とうけんぼう)”ことトンファーを手に怪物の懐で高速の連打を繰り出した。


「オリャッーーー!」


 クリスの連打で、怪物の上半身が吹き飛びトンファーをクルクルと回して止めると、コルノに向かって言った。


「こちらも時間が無いから速攻で終わらせるぞ!」


 クリスは両腕を横に伸ばすと、トンファーを高速で回しながら呟いた。


「無音移動“無歩(むほ)”」


 次の瞬間、クリスの姿は消え次々と怪物達の頭や上半身が砕け散っていった。

 クリスが再び現れると、その場に居た怪物達は全部砕け散り倒れていたが、コルノはその光景を見ても笑っていた。


「……何がおかしい」

「いえいえ、失礼しました」


 コルノがまた頭を下げた。


「最強の特殊部隊で副隊長……しかもその若さであのブラット・ヴァースを生き抜いた人……彼らは弱すぎたみたいだ」


 コルノは頭を上げ、また笛を吹いた。


「次はなんだ」


 クリスは、刀妍棒(とうけんぼう)を回しながら言っていると背後から気配を感じた。


「!?」


 慌てて横に飛びのくと、そこには太いパイプ並みの腕が床に突き刺さっていた。


「これは……」

「キラー・イーター」

「キラー・イーター?」

「ええ、ブラット・ヴァースで死んだ者達の魂を複数入れ作られたアンドロイドと『N/A』での狂戦士が融合したキメラ兵士!!あぁ、お仲間の魂もあるかもしれませんね」

「チッ……貴様ら!」


 舌打ちしたクリスが見たのは、四mもある巨漢に薄緑の目、黒のスウェットスーツに背中には巨大な両刃(りょうば)(けん)を背負っていた。


「キラー!」


 コルノの声にキラー・イーターは反応して床から腕を引き抜き、クリスを一瞥しながら、その巨漢に似合わず俊敏に飛び、コルノの横に飛び降りた。


「……今までとは違う訳か……」

「えぇ、彼以外にもいますよ」


 マントを翻すとそこから三体の狼に似た獣が出てきた。それはこの世とは思えない異形の姿をした獣だった。


「キメラに魔物かよ……」


 マントの中から出てきた三体の狼が唸り声を上げながら威嚇をした。


「この子らはフォルス。説明はいらないですよね……見て通り魔界から来た生物ですよ」


 フォルスと呼ばれている三体の狼は唸り声を上げ、今にも飛びかかる勢いだった。


「さぁどうします?四体とあなた一人、勝ち目はないですよ」


 そう言いながら右腕を上げて叫んだ。


「目の前の男を八つ裂きにして来い!!」


 腕を振り下ろすと、魔物の狼達は牙を剥き出し、キラー・イーターは右腕を振り上げながら一斉に襲い掛った。

 クリスは刀妍棒(とうけんぼう)を構えながら身構えたが、その顔には余裕の笑みを浮かべていた。


「フッ……来たれ我が従者(じゅうしゃ)!」


 その言葉と同時にクリスとキラー・イーターとの間に三体の影が躍り出た。

 三体とも色違いの西洋甲冑で、中には誰も入っていなかった。


 一体はキラー・イーターの右腕を止め、二体は魔物の狼を両腕で抑えこんだ。


「なんだ!?」

「……少しは俺の事を調べて来たんだろ?もう一つの名……忘れたか?」

「もう一つの名……」


 コルノは渋い表情をした。


「思い出しましたよ……大戦で多数の敵を数体の人形で倒した……最強の人形使い『ダーク・ドールマスター』!!」


 クリスは今一度、微笑むと叫んだ。


「弾き飛ばせ!」


 その言葉に反応して、四体の敵を弾き飛ばし、コルノの近くに着地した。


「……何処から召喚したのですか?」

「フッ……改造や作るだけがオート・アルケミストではない。機械及び金属等さえあれば呼べるんだよ!」


 クリスは、トンファーを腰にしまうと両手を前でクロスし、指先には細い糸が煌き、更には四方の容器などにはいつの間にか方陣が描かれていた。


「いつの間に召喚陣(しょうかんじん)を……」

「それは秘密だ……これで優勢は同等だ」


 クリスの言葉にコルノは悔しそうな顔した。


「クッ……スピードならこちらが優勢です。キラー・イーター!フォルス!」


 コルノの叫びにキラー・イーターは背中に背負っていた大剣を取り出し、フォルス達は唸り声を上げながら攻撃態勢に入っていた。


「行け!人形を壊して来い!!」


 それと同時にクリスも叫んだ。


「アンタム!」


 アンタムと呼ばれた緑色の人形はその声に反応してフォルスに向って突進した。


「なめるな!!フォルス!!」


 フォルス達は更にスピードを上げて撹乱しょうとしたが、アンタムは撹乱を物ともせずにフォルスの二体を鷲掴みした。


「クッ!……フォルス!キラー!」


 アンタムをすり抜けて一直線に来る一体のフォルスと横から飛びかかったキラー・イーターは、まっすぐにクリスを狙ったが、クリスは右手を上げて叫んだ。


「コルチカ!ランカサ!」


 その言葉に薄紫色の人形・コルチカは両脇に差していた剣を取り出し、キラーの大剣をクロスして受け止め、赤色の人形・ランカサは素早くクリスの前に出ると拳を真正面に突出し殴り、殴られたフォルスは、勢い良く吹き飛んでコルノの足元まで来ると、黒い煙になって消えた。


「……なんだ、その動きは……指も動いてない……操り人形の動きではないな!!」


 コルノは後退りしながら言うと、クリスは答えた。

「アホか。指を動かしていたら大戦なんか生き残っていない……俺の意思通りに動くんだよ……ミスティチェーンでな!」


 クリスは腕を上げて言うと、指先から薄く細くなったミスティチェーンがあった。


「これで幕引きだ……」


 その言葉に反応して、アンタムは両手で掴んでいたフォルス二体を握り潰した。

 コルチカはキラーの大剣を上に弾き返し、キラーは少しよろめくと、そこにランカサが素早く懐に入りこんで両手で掌手を腹に決め、くの字になったキラーは床から少し浮き上がり、今度は後ろに居たコルチカが駆け寄り二刀の剣で切り裂いた。


 キラー・イーターは目を見開いたまま、静かに息絶えた。


「何をやっている!オート・ア……!」


 コルノはその光景を見て叫んだが、クリスの打撃によって止まり、そのまま膝を付き、くの字なりながら腹部(ふくぶ)を押さえていた。


「がっ……がはぁ……」


 クリスは、片手に持っている刀妍棒(とうけんぼう)をコルノの顔の前に突き出しながら言った。


「これで終わりだ……さぁニクルは何処に行った!答えろ!!」


 コルノは笑いながら震える身体で立つと、ポケットからリモコンを取り出して叫んだ。


「教える訳ありませんよ!あなたはここで僕と死ぬんだー!!」


 コルノのコート内には爆弾らしき物の起爆スイッチを押した。


「クソッ!!」


 クリスはコルノの間近にいたため後ろへと飛んだが、爆弾の光がクリスを包み、研究所で大爆発が起こった。


 研究所は崩壊し天井も崩れて瓦礫の山ができ、クリスの消息も判らなかった。

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