22:30 紺野(こんの) レイの戦闘
邑達が倉庫に向かっている時同じく、二つの戦いが起こっていた。
紺野 レイは、十七階の制御室で邑から連絡があった。
『ANGEL2応答せよ』
「こちらANGEL2。溜息がこちらまで聞こえていますよ」
『そうか、このまま話しを聞いてくれ』
「判りました」
レイは、マイクイヤホンを聞きながら笑い、パソコンを操作し、無線を聞いていたが、春野の伝言に操作する指が止まった。
「そんな事が……」
レイはパソコンを操作し始め何らかの計算をし、結果が出ると直ぐ邑に連絡した。
「今から急げば何とか間に合いますね。ANGEL4とANGEL7に連絡しますか?」
『ああ、頼む』
「了解しました」
レイは、そのまま多恵と天海を呼んだ。
「ANGEL4、応答せよ」
『ザザッー……』
「あれ?」
首を傾げながらもう一度呼んだ。
「こちらANGEL2。ANGEL4、ANGEL7応答せよ」
『ザザッー……』
しかし、多恵と天海からの応答は無かった
「ANGEL2。ANGEL4とANGEL7との連絡がまた途切れました」
レイが連絡をすると同時に、防火壁が鈍い音共に大きく湾曲し、レイは扉を見るともう一度鈍い音共に扉がまた湾曲した。
「デス・スコルピオンッ!」
マイクイヤホンを触ると、叫んで言った。
「ANGEL2より各位!!コールレッド!繰り返す!コールレッド」
コールレッドは自分自身に危険が迫っていることで、邑は
『なにがあった!?』
邑の声に現状を伝えようとするが、無線には雑音が混じり、
「デス・スコルピオンの襲撃を受けています!あっ!!……」
『ザー、ザザッー……』
しかし、その無線は届かず、防火壁の一部から一本の大腕が突き出し、レイはその大腕にサブマシンガンで撃つが、弾は弾かれ当らなかった。
「弾かれた!?」
その腕は抜かれ、同時に防火壁を上へと押し上げ、そこに現れたのは、『A/N』で作られた三人の狂戦士に、甲冑を思わせる防護服をきた人物が一人いた。
レイは、サブマシンガンを構えるが防護服を着た人物を見てある名前を思い出した。
「そのアーマー……あなたガシン!」
ガシンと呼ばれる男性は、スッと前に出て狂戦士達を制止させた。
「そのと~り!覚えてもらい光栄ですよ、電脳の妖精さん。それとも……抹殺者アイス・ドールと呼んだ方がよろしいですかね?」
顔には防弾マスク、甲高い声に防護アーマーを付けたガシンは紳士のような挨拶をする。
「どちらでもいいわ。それによく生きていたわね、コナゴナに壊してあげたのに」
「確かに!“ブラット・ヴァース”の時はコナゴナにされましたが、しか~し!貴女は私の頭を壊さなかった!それにより前よりも強力で最強の身体を手に入れたのですよ!」
ガシンは甲高い声で叫んだ。
「そう。で、貴方がいるという事は仲間にも行っているのかしら?」
「ええ!そのと~り!聞こえませんか?外からの悲鳴の声が?」
レイは耳を澄ませてみるが何も聞こえず、逆に部屋を見渡した。
「何も聞こえない……まさか!?」
ハッと気付くとガシンは、笑いながらこう言った。
「ハ~ハッハッハッ!気付きましたかな?貴女は私のテリトリーにいるのですよ!!」
「異次元空間!通りで何も外の声が聞こえないはずだわ!」
「そう!ここは異次元空間!時間も空間も全く別世界です!そして、これを御覧なさい!」
ガシンはある映像を見せた。それは外の様子だったが、そこは戦車が燃え自衛隊隊員が血を流しながら倒れており、その中には人影がニ・三人いた。手には人の頭を持っていた。
「こいつ等は、まさかっ!」
「そのと~り!!デス・スコルピオンのアンドロイド!私、ガシンの最高傑作!」
「なんてことを……」
「完成まで大変でしたが、私の技術とある方法で完成しましたよ!!」
「……ある方法?」
「ただのアンドロイドではありません!あの中には、ブラット・ヴァースで死んだ新鋭部隊の隊員達の魂が入っています!!!もちろん貴方達のお仲間の魂も!」
「下での話は本当だったのね!死者を蘇えさせるなんて!」
「フフ~ン、これもA・O・Aである貴方達を倒すため!!そして、貴女も死んでもらい、今度こそ私のコレクションになってもらいま~す!!」
「あんたこそ、誰を蘇えさせたのか言いなさい!!」
「私を倒せたら教えますよ!行け、狂戦士ども!!」
ガシンの声と同時に狂戦士はレイに踊りかかった。レイはサブマシンガンを横に捨てると、鎖の欠片を出しながら叫んだ。
「《運命の鎖よ、我が意思に従え!》」
レイの身体の周りには、無数の鎖が乱雑に周り始めた。
「オソイ!コロス!!」
狂戦士達は上と左右から襲いかかったが、レイは動こうともせずに、狂戦士のパンチを食らった。分厚い防火壁を破る破壊するパンチである。狂戦士達は『コロシタ!』と叫びそうになったが、自分の拳の先を見た。
そこにはレイの姿は無く、代わりに鎖で出来た繭があり、狂戦士達のパンチは鎖の繭に止められ、逆に鎖の繭が弾け狂戦士達を弾き飛ばした。
弾き飛ばされた狂戦士達は何とか着地すると、レイの方を見た。
レイは鎖の繭から出てくると、またレイの周りを鎖が乱雑に回り始めた。
「《ミスティチェーン・防護陣》……貴方方は運命の鎖から逃れられない」
レイはそう言うと、右腕を上げて叫んだ。
「縛りつけろ!《束縛陣》!」
鎖は右腕に絡まりながら狂戦士達に向かい、狂戦士達もそれを払いよけようとしたが、不可思議な動きに惑わされ、避ける事も出来ずに狂戦士達を縛り上げ、縛りつけながら上に持ちあげると、狂戦士達は足をジタバタしながらガシンに助けを求めるような目をしたが、ガシンはそれを黙って見ていた。
「そのまま天井に張り付いてなさい」
狂戦士達が天井に着くと、鎖は天井と一体化して狂戦士達を括りつけた。
「……これでガシンのみ」
レイは右手を降ろしながら言うと、ガシンは怒りながら言った。
「まったく!傷の一つも付けられないなんて!死を持って償いなさい!」
ガシンは、手にした銃で狂戦士達の額を撃ち抜いた。狂戦士達は、ビクッと身体を反応させこれ以上動かなかった。額からは赤い血が滴り落ちて、床には血の池が出来ていた。
「用済みは消していく……昔と変わらないわね」
「そのと~り!彼らは捨て駒!要らなくなれば消す!!決まっていることではないですか~!それにアイス・ドール!!貴女もここで死ぬんですよ!!」
「嫌な決まりごと……貴方に殺されることはないわ!ガシン!」
そう言うと、レイの姿はその場から消え、ガシンの懐へと一瞬にして動いた。
「なにっ!」
「無音移動術“無歩”」
無音移動術“無歩”は、その場から一瞬にして相手の懐へ無歩で行き、瞬間移動したかのような速さで移動する移動術、レイはガシンの懐に入ると、左肩をガシンの腹部に付けて力強く一歩を踏み出し、左肩に力を流した。
「招肚双撞」
全身の力を右肩に集めガシンを吹き飛ばし、ガシンは仰け反りながら壁に当った。
レイは、状態を戻し、追い討ちをかけようとガシンの元に向かおうとしたが、ガシンは急に立ち上がり防弾マスクから出る不気味な赤い目の光を薄めた。
「フム~、今のなかなか良い攻撃ですが、私には効きませんね~」
「そんなの判っているわ。ただ時間が欲しかっただけ……」
「今度はそんな時間は与えませんよ!!」
ガシンは両腕を前に出すと、手の甲から機関銃がせり出て、レイに向けて発射した。
「コナゴナになりなさ~い!」
轟音と共に機関銃が火を噴き、ガシンの足には空薬莢が落ち、レイの周りは弾幕と硝煙の匂いに包まれた。
「アイス・ドールもコナゴナ。ん~コレクションにはなりませんが、魂は大丈夫でしょう」
ガシンは機関銃を止めると、機関銃を手の甲に入れようとしたその時!まだ残る弾幕から影が躍り出た。
「誰がコナゴナですって?」
「アイス・ドール!?生きて……」
ガシンが言葉を言い切る前に、レイはいつの間にか持った棒でガシンの顔面横を殴った。
「グハッ!!」
「ガシンこそ忘れました?私達の“神器”のことを」
“神器”それは、邑達が個人個人しか扱えない武器で、身体の中に粒子となって存在してあるため、名前を呼べば出現し、強力な攻撃ができるのである。
ガシンは数歩ほど横に移動したが、倒れる事無くその場に立ち、レイは棒を回しながら、半身の構えでガシンを睨んだ。
「……そうでした……忘れていましたよ!“神器・水淘棒”を!!!」
「これで貴方の攻撃は防げますよ」
レイの言葉にガシンは、また甲高い笑いをしながら言った。
「ハッ、ハ~ハッハッハッ!確かに、前はその水淘棒で壊されましたね!が、それに基づきこの防護アーマーを作りました!壊すことは出来ませ~ん!!」
ガシンは両腕を広げて甲高い笑いをすると、レイは言い放った。
「その怠慢が敗北へと繋がっているのです!!それを見せてあげますわ!!」
「フン!!突き破れるなら突き破りなさい!この一斉掃射の前でね!!」
ガシンは身体中からあらゆる重火器を出してレイに向って撃ち、同時にレイもガシンに向かって跳び込んだ。
水淘棒を前で回しながら一斉掃射の中を進んだが、弾が身体をかすり、右足の太ももや肩等に当り、激痛で止まりそうになるが、踏ん張って更に加速した。
「(くっ……少しくらい撃たれても大丈夫……あれの射程範囲に行ければ)」
「な・なんで止まらないのです!!」
ガシンは声を上げたがレイは尚も前に進み、そしてガシンとの距離は僅か三十cmになると水淘棒を水平しガシンの機関銃を横に薙ぎ払い攻撃がほんの少しだけ止まった。
それを見逃さずに半身の構えをして溜めた気を膨らませた。
「なっ!!」
「これで最後です!」
気を水淘棒に乗せて放った。
「《牙突連尖!(がとつれんが)》」
「グァーーーーーー!!!」
気を乗せた無数の突きがガシンの身体に浴びせた。
断末魔と共にガシンの身体はコナゴナに吹き飛んで、辺りにはガシンの残骸とガシンの頭だけが残り、レイは肩で息をしながらガシンの頭に近づいた。
「ハァ、ハァ……私があれから修行したのも計算に入れていませんでしたね」
「ハッハッハ。確かにそれは計算には入れていませんでしたよ」
「これで異次元空間も消えたでしょう。最後に言い残すことは?」
「最後?最後の言葉ですか!ハ~ハッハッハッ!では、良い事を教えましょう!アンドロイドには時限装置が組み込まれています!!アンドロイドが破壊され機能停止すると時限装置が作動し、周りの物を吹き飛ばすでしょう!!」
「!!」
「更に、今そのアンドロイドと戦っている二人の男女がいますね!!外のアンドロイドの目から見えていますよ!」
「多恵と天海君!教えないと!!」
直ぐに窓の方へ行こうとしたが、ガシンは最後の抵抗をした。
「行かせませんよ!アイス・ドール!!私と共に道連れになりなさい!!!!!」
「!!」
レイが振り向くと、ガシンの頭は光輝き大爆発を起した。ガシンの自爆だった。
「(邑……)」
爆発の瞬間に邑から貰ったペンダントを握りしめ、同時に外でも大爆発が起こっていた。