対決 賭け
22:10
邑の『風刃絶臨覇』で床は細切れになり、下の階に落ちて土煙が起こり、邑もいつの間にか、翼を広げ、クリス達もゆっくりと下へと降りた。
十六階に着いた邑達は、翼を閉じると上の階で爆発音が聞こえた。
瞹と天空はハイタッチをした。瞹達が仕掛けた爆弾が作動したのだろう。
『こちらANGEL2。ANGEL1応答してください』
「どうした」
邑の応答にレイは答えた。
『十五階から一階までの階段に通じる通路の防火扉を作動、敵の足止めをします。階段から行ってください』
「了解、ANGEL2」
『後、エレベーターを破壊してください。敵の足止めにもなります』
「了解!」
レイの指示を天空に伝える。
「部屋を出る時は、クリスと俺が前衛、瞹と天空は後衛だ。途中で天空はエレベーターに、手榴弾を投げて入れろ」
「了解」
「それじゃ……行くぞ!」
邑とクリスが部屋を出ると、敵はまだ居なくT路地の曲がり角まで来た。
クリスが天空を呼ぶと、エレベーターと階段から敵兵が来た。
「居たぞ!撃て撃て!」
エレベーターから降りて来た敵兵は、正面の部屋に入りながらアサルト・マシンガンを撃ってきた。
邑達は通路を少し下がりながら、サブレッサー付きのマシンガンを撃った。
「急に銃撃戦ですか!!」
「交戦なんて直ぐだろ!!」
と、クリスは瞹に言いながら曲がり角からマシンガンを撃って、引っ込んできた。
「邑!交代だ!」
交代して邑が撃っている間に、クリスはマガジンを交換した。
クリスは、撃鉄を引くと瞹に言った。
「瞹!お前、爆弾付きナイフとか持ってきているか?」
「ありますよ!」
瞹が腰から出した投げ用ナイフは、持つ所に爆薬が付いていた。
それを見たクリスは、邑の隣に駆け込んだ。
「邑!爆弾で奴等を倒すぞ!」
「OK!」
クリスは邑と交代し撃ち始め、邑はマガジンを交換しながら、瞹を呼んだ。
「瞹!こっちに来い!」
瞹は邑達の所に来ると、クリスは撃つのを止めて敵兵の銃撃をやり過ごし、
「俺が手榴弾も投げる。それに向ってナイフを投げろ!爆発力を高めるぞ!」
「了解!」
邑は手榴弾を三つ出して、一つに纏めて敵兵が銃撃を一瞬止む瞬間を待っていた。
そして、敵の激しい銃撃がほんの一瞬だけ止んだ。
「(今だ!!)瞹っ!」
邑は瞹に叫び、体半分を曲がり角に出して、手榴弾を投げてから体を下に沈めて戻るのと同時に、邑の後ろから瞹が横跳びし、爆薬付きナイフを手榴弾と奥の壁へ、右手で二本投げながら手前にあった柱の影に隠れた。
エレベーター手前には手榴弾が転がり、エレベーター前にある部屋から、敵兵が攻撃しようと出てきていた。
「爆弾!!戻……っ」
「遅いよ……チェック!!」
瞹は敵兵の言葉を遮り、邑達の居る通路へとジャンプして、空中で回転しながら、もう一度ナイフを手榴弾に投げ、刺さると同時に手榴弾とナイフが勢い良く爆発、爆風で近くにあった部屋にも、ドアを吹き飛ばして爆炎が踊り込んだ。
階段の方にも爆炎は走り、壁に刺さっていたナイフも連鎖反応で爆発、威力は倍増した。
影に隠れていた邑達は、廊下に出ると天空とクリスは、辺りを見渡した。
「かなりの威力だ。敵はコナゴナだな」
「だな。そのおかけで通路は炎上している」
二人は階段のある奥の通路を見た。通路は黒く焦げ、一部では壁も炎上していた為、簡単には階段へと行けなかったが、
「大丈夫です、ちょっと退いてくださいね」
二人にお間を割って来たのは瞹だった。
瞹は、炎上している通路を見ると、首だけ後ろを振り向き邑に聞いた。
「邑、やっちゃってOK?」
「いいぞ、やれ」
「りょうか~い!」
クリスと天空は、不思議そうにしていたが、邑は腕組みをして黙って見ていた。
瞹は、右腕を上げて、手の平を広げると、呪文を唱えた。
「《水の王よ。その荒れる水を我が手に集えて、応えたよ》」
手の平には、何処からとも無く荒れくる水柱が立っていた。瞹はそのまま右腕をゆっくり通路に向けると叫んだ。
「水王!爆水鳳!」
その水柱が勢いに乗って、通路に螺旋を描きながら駆け抜け、炎上していた壁に当ると同時にコナゴナに弾け飛んだ。
「これで通れるよ」
瞹は軽やかにターンしながら後ろを振り向くと、天空は瞹の頭を軽く叩いた。
邑は、クリスと共に新しいマガジンを装填し、撃鉄を引いた。
「ああ、天空と瞹は後衛、俺とクリスは前衛で行く!一気に、六階倉庫へ向うぞ!邪魔者は全力で薙ぎ払え!」
「了解!!」
邑の号令と共に、四人は階段へと走ったその時、瓦礫に押しつぶされた腕が目に入った。
「(……皮膚の下は白い腕?しかも緑の液体……まさか)」
邑は横目でそれを確認し、ある事を確証したのだった。
最初の階段は爆発で焦げていたが、下りていくと何とも無く、しかも敵兵は現れず、一気に十階まで下がってきたが、踊り場で邑は足を止め、クリスは邑に聞いた。
「どうした?何かあったか?」
「静か過ぎる……」
その言葉に天空が返した。
「当たり前だろうが。防火扉が閉まっているんだ。来れる訳がねえよ」
天空の言葉に、邑はマイクイヤホンを触り、レイに連絡をした。
「こちらANGEL1、ANGEL2応答せよ」
『ザッ、ANGEL2。どうしましたか?』
「そこから監視カメラの映像を確認出来るか?」
『出来ますが、何処の階ですか?』
「一階から二階、防火扉の周りを見てくれ」
『了解。少しお待ちください』
少しの間を置いて、レイは慌てた声がした。
『一階の防火扉に爆弾を確認!突破するつもりです!!』
「チッ、やはりな……」
天空は「早く行くぞ!」と促したが、それをレイの一言で止まった。
『報告!!同様の動きを他の階でも確認しました!三階・五階・七階!上階は……既に敵兵が倒されています!』
「上階の敵兵が……ANGEL2、九階には誰かいるか?」
『いえ、誰も居ません』
「よし、直ぐ九階の防火扉を開けろ!開く時は一人が通れるまででいい!そこに一旦、隠れてやり過す!」
『了解!!』
レイは、直ぐに九階の防火扉を少しだけ開けると、邑は皆に、
「急げ!中に入ったら、近くの部屋に入れ!」
邑の言葉を聞くや否や、クリス・瞹・天空は階段を飛ばしながら降り、九階のフロアへと入って行き、邑も後を追い通路に入ろうとした時、下から爆発音が連続して鳴り響いて、人間の怒鳴り声が聞こえてきた。
「扉を閉めろ!!」
防火扉は閉まり始め、敵兵が確認しながら階段を探っているので上がってくる前に、扉は完全に閉まったのを確認すると、エレベーター前にあった部屋へと入り、クリス達は部屋の中央にある机を積み重ねてバリケードを作っていた。
バリケードの下には隙間を作り、邑は後ろを確認して隙間から滑り込むようにバリケードの中に入り、隙間を別の机で中から塞いだ。
「クリス、Xキャノンで通路を確認、天空と瞹はドアを見ていろ。幸いドアが一つだけだ。窓のブラインドも降りている」
「邑、敵兵が階段を上がりきったぞ」
「念の為にそのまま監視。ANGEL2、応答せよ」
『こちら、ANGEL2』
「今、上階に敵兵が行った。防火扉が破壊されそうになったら、極力戦闘はせずに窓から“翼”を使い、天海達の所に移動しろ」
『……判りました』
レイの言葉に天空は、
「この言い方は納得してないみたいだぜ」
「……だろうな」
邑も天空の言葉を返した時に、階段を監視していたクリスが叫んだ。
「呑気な事を言っていられないぞ!防火扉に爆弾をセットしている!」
クリスの言葉に三人に緊張が走り、邑はレイに、
「様子は?」
『敵兵が下の階に降りてっています。どうやら九階に集合する模様です!』
レイの報告に邑は悩んだ。
「(なぜ、動きがばれている……やっぱり……)」
そうこうしていると、廊下から鈍い音が聞こえ、防火扉には大穴が開いた。
クリスはXキャノンで敵兵の数を数えた。
「……敵の数は十五人。確認しながら通路に入ってきた。部屋も確認しそうです」
Xキャノンを取り、マシンガンを構え、邑は皆の残弾数を確認した。
「敵兵が入ってきたら、充分に引き付けてから俺とANGEL3がグレネードを投げる。煙と光が収まったらANGEL5と6が先に撃て。ANGEL3と俺は残弾を確認し撃つ。いいな?」
「了解」
三人は頷くと、瞹と天空はバリケードの隙間からサブマシンガンを構え、邑とクリスは、上から直ぐ投げられるように構えた。
それから数秒後、部屋のドアは開き敵兵が五人入ってきた。
これから物語は後半に入ります。
もう少しの間、お付き合いください。