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7.失われし手掛かり

 横浜のとあるスナックバー。ちょっと古ぼけているが、ちゃんとした酒場である。

 表の看板には、<スナック・タカヤマ>とある。

(オッチャンいるかな?)

 と、口には出さず、スナックの扉をあけた。

「いらっしゃい」

 マスターはニッコリとした表情で言った。が、その頭に疑問符が浮かんでいる事は言うまでも無い。何しろ奈々子は未成年なのだから。

「マスター、河内のオッサンは?」

「河内さんならさっき、女の人が訪ねて来られて、一緒に出て行ったよ」

「どこに行ったか解る?」

「解らないなぁ……」

「じゃ、戻って来たら此処へ連絡下さい」

 奈々子はそう言うと、携帯の番号が書かれた紙をテーブルに置いた。

(この番号は確か寺島さんの……。この娘、寺島さんと何か関係が?)

 マスターは意を決して訊く事にした。

「君、寺島さんの知り合いかなんか?」

「櫻井 奈々子。寺島 幹生の妹です」

 と、その時、パアンッと言う音が聞こえた。

(銃声!?)

 それはスナックの裏からだった。

「マスター、裏口は!?」

「そ、そこにありますけど・・・」

 奈々子は裏口に向かった。

ガタンッ!──奈々子は勢いよく扉を開けて外に出た。

 外には40代半ばのオッサンが倒れていた。

 河内だった。

「オッサン!?」

 奈々子は倒れている河内のオッサンに駆け寄った。

(銃弾・・・。撃たれたのか。まだ息があるな)

「オッサン、しっかりしろ!」

「う……う……」

「河内のオッサン、何があった?」

「お……女……撃った……」

「何!?」

「こ……これを……頼む……」

 そう言ってオッサンは、奈々子に小型のMP3プレイヤーを渡した。

「それに……録音……して……ある……」

 オッサンはそう言い残し、力尽きてしまった。

「オッサンッ、オッサーン!」



ガチャッ──奈々子はMP3プレイヤーの再生ボタンを押した。

『アンタ、何を知ってるの? ええっ? 教えなさいよ!』

『い、いやっ、私は何も知らない! 本当なんだ!』

『あの日、私があいつを殺した所、写真に収めたでしょ? その写真を渡せば良いのよ』

『そっ、そんなの知らない!』

『これでも知らないって言える?』

『……分かった。これがその写真だ』

<パアンッ!>

ブツッ──録音はそこで終わっていた。

(写真? 一体、何の? それより、オッサンは何を知っていたんだ? 何か、見てはいけない物を見てしまったのか?)

 そう考え事をしている奈々子に、例の老けた刑事が声を掛けた。

「君、詳しく話を聞かせてくれないかな?」

(恐らく、河内のオッサンは口封じの為、女に殺された。間違い無いだろう……)

「聞こえてるかね君?」

「えっ? あ、スミマセン! ちょっと考え事をしてたもんですから……。 で、私に何か?」

「先ず、河内さんの事、お悔やみ申し上げます。それと、アンタの事色々調べたんですがねぇ……。アンタ、寺島さんの御兄妹なんだそうですね」

「あ、いやあ、参ったなぁ……。刑事さん、そんな事までお調べに?」

「ちょっと気になったもんでね。で、河内さんの事、聞かせてくれないかね? 何でも良いんだ」

「オッサン、死に際にこれを……」

 奈々子はそう言って、刑事にMP3プレイヤーを渡した。

「河内のオッサン、口封じの為に殺されたんです! そのプレイヤー再生してみて下さい!」

 そう言われた刑事は、プレイヤーを再生し、聞き終えるとこう言った。

「確かに、その可能性が高いですな。これ、預からせて貰います。過去の犯罪記録にこれの声紋と一致するものがあるかも知れません」

 そう言うと刑事は、MP3プレイヤーを内ポケットにしまった。

「じゃあそう言う事で、後は我々警察に任せて下さい」

「はあ」

 奈々子は素っ気無い返事をした。

「それじゃあ」

 刑事はそう言うと、スナックを出て行った。

(って、任せてられっかよ)

「マスター、河内のオッサンを訪ねて来た女の事、何か覚えてますか? 例えば、特徴とか」

「うーん、よく覚えてないな。待てよ? 確か、金髪のロングヘアーだったな」

「金髪のロングヘアー? 間違い無い?」

「ああ。この辺じゃ珍しいからよく覚えてるよ」

 それを聞いた奈々子は、

「そんなバカなっ! そんな事あり得ないっ! だって、だって彼女は、小百合は警察に捕まってんだからっ! 一体どうやったら抜け出せるってんだっ!?」

 と、鬼の様な顔をして言った。

「えいマスターッ、アンタが見た女はコイツかぁっ!?」

 酷く荒れている奈々子は、小百合の写真を出して彼に見せ付けた。

「こ、この人ですっ、間違いありません!」

 奈々子は脱力し、椅子に座ってテーブルに伏せった。

 すると急に、

「ハッ、ハハ、ハッハッ、アアハハハハハッ!」

 と、大声で笑い出した。

「面白ぇっ、面白ぇっ! やってやろうじゃんかっ! この事件、絶対解いてやるよっ!」

 そう言うと奈々子は、鬼の様な顔になった。




なっ、奈々子がぶっ壊れた!



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