2.現場
「櫻井さん、お熱計りまーす……っ!?」
病室に入るなり看護士は驚いた。
傍には、こんな手紙が置いてある。
『神奈川に行きます
櫻井』
看護士はその手紙を取ると慌てて病室を飛び出し、ナースステーションに駆け込んだ。
「そんなに慌ててどうしたの?」
と、同僚の看護士が聞く。
「さっ、櫻井さんがいないんです!」
「えっ!? トイレにでも行ってるんじゃない?」
その問いに看護士は、病室にあった置き手紙を出して見せた。
「何よそれ!? 彼女はまだ絶対安静よ!」
カタンコトン、と音を立て、京急本線が横浜から神奈川間を走っている。
奈々子はその電車の座席に座っていた。
「なぁ、病院抜け出して、本当に良かったのか?」
そう言ったのは、奈々子の隣に座っている久瀬 泰一だ。
「しかし……何で神奈川なんかに?」
「決まってるだろ。俺をこの体にしたスキンヘッドを捕まえる為さ。それに、奈々子の為でもある………」
「為って、奈々子は東京で」
久瀬が言い掛けると、
「あのワゴンが神奈川ナンバーなんだ」
と、奈々子が掻き消した。
「て事は、寺島さんは奈々子を跳ねたワゴンと、寺島さんを殺したスキンヘッドの為に?」
「他に何がある?」
(何って、何て答えれば良いんだ俺?)
そうこうしている間に、電車は神奈川駅に到着した。
「で、あんたが殺されたって言うその現場ってのは何処なんだ?」
そう聞くのは、やはり久瀬だ。
その久瀬に、奈々子はこう言う。
「考え事してるから黙ってろ」
「どうでも良いがあんた、奈々子の声で男口調はやめてくれねえか?」
「何故に?」
「何か、奈々子と他の男が入れ替わったみたいで……」
「似た様なもんだろ。文句言うなら有り金置いて帰れ」
「そんな無茶苦茶なっ!?」
「だったら何も言うな。解ったな糞餓鬼」
その言葉に、久瀬は一瞬キレそうになったが、グッと我慢した。
「おいっ、いつまでそこにいるんだ!?」
と、久瀬の傍から何時の間にかいなくなっていた奈々子は、少し離れた所で叫んだ。
「ちょっ、ちょっと待てよ!」
久瀬は慌てて駆け出した。
神奈川県警捜査一課の取調室では、一人の女性が二人の刑事に話を聞かれていた。
彼女の名は三塚井 小百合。寺島 幹生の彼女である。
「だから、何度も言ってるけど、その日は幹生には会って無いわよ!」
「嘘を吐くな!」
バシンッ!──刑事は机を強く叩き、
「事件当時お前と被害者がもめていたと言う目撃証言があるんだ! お前が殺したんだろ!?」
と、怒鳴り付けた。
「確にあの日、幹生とは喧嘩したけど、殺してなんかいないわよ!」
奈々子こと幹生と久瀬は、道幅狭く、人通りが少ない殺風景な道を歩いていた。
「寺島さん、本当にこの道で合ってるのか?」
「ああ、間違い無え。此処はあの日、俺がスキンヘッドに殺された場所だ」
そう言うと、奈々子は突然走り出した。
「あそこだ!」
「おっ、おい!?」
と、久瀬は慌てて後を追う。
「でっ!」
久瀬は急に立ち止まった奈々子の背中に埋まった。
「何だよ。急に止まるなって」
「此処だ」
「あ?」
「俺は此処で刺殺されたんだ」
本編とは関係無いが、2006年12月の18〜19日の早朝にかけて、入浴中に眠ってしまい、溺れて亡くなった祖母が、2,3日前に俺が風呂に入って何となく湯船見たら、普通に寝てるし!
しかも栓抜いてあって、お湯張って無えのに、お湯入ってる!!
残留思念でも見たか!?
それとも・・・。
あ、不定期ですが、これからは後書きに、作者の実体験談を載せていこうと思います。
以上