第5話:盗賊の娘!?
罠の仕掛けられた茂みの先には、岩場を切り開いた粗末な集落があった。そこから現れたのは、ボロボロの装備を纏った数人の男たち——盗賊だ。
「おいおい、罠にかかった獲物を見に来れば、大してお金を持ってなさそうな男と女じゃねえか!」
がっかりした表情を浮かべて襲いかかってくる盗賊たち。しかし、トオルの目には彼らが「凶悪な敵」ではなく、「目的を持たず、逐次的な感情に振り回されている若者」程度にしか映っていなかった。
「おっと。……少し、現場の整理が必要だな」
トオルは襲いくる刃を、左手で軽く弾き受け流した。彼が肩を小突くたびに、盗賊たちは衝撃で数メートル吹き飛んでいく。本人は特にスキルを使っていないのだが、受けた側は大型力士の全力の張り手を食らったような衝撃だった。
数分後、地面に転がる盗賊たちの奥に、トオルは集落の惨状を見た。そこには痩せ細った子どもたちと、疲れ果てた女性たちが、怯えながらこちらを見つめていた。
「……なるほど。彼らは進路を決めていないというより、『仕事がなく路頭に迷った元サラリーマン』のようなものか」
トオルは、ふぅと息をつき、拳を収めた。
「人に迷惑をかける盗賊業という非効率な仕事より、もっと安定した職場が必要だな。……村長の娘として、どう思う?」
トオルに促され、エルナも集落の窮状を目の当たりにして深く心を痛めていた。彼らがただの悪党ではなく、食い詰めた末に略奪に手を染めただけの弱者であることを悟ったからだ。
「……そうね。これまでの罪を認め、武器を完全に捨てるというのなら……私たちの村で受け入れることを検討するわ! 今の寂れゆくアシュレ村にとって、若い労働力は喉から手が出るほど欲しいの。畑を耕し、水路を直し、真っ当な汗を流して働く気があるなら、村長である父には私が話をつけるわ!」
エルナの毅然とした、それでいて慈悲深い決断に、盗賊たちは武器を落とし、顔を見合わせて言葉を失った。絶望しかないと思っていた自分たちの人生に、思いがけず差し込んだ更生の光。彼らの心は激しく揺さぶられた。アージェンでの用事を済ませた帰路に、彼らをまとめて村へ連行し、新たな生活の基盤を整えることを約束すると、二人は再びアージェンの町を目指して歩き出した。
その時だった。
「待って!! 私も、私も連れて行って!!」
盗賊頭の娘、リノがトオルの元へ駆け寄ってきた。彼女は先ほど、トオルが毒矢を何事もなく対処し、自分たちの親や兄たちを軽々とあしらう姿を見て、完全に心を奪われていた。
「あなた、格好良すぎるよ! 毒矢も効かないし、何よりこの肉体!! 抱きつきたくなるほど素敵!!」
言うが早いか、リノはトオルの逞しい右腕に飼い猫のように顔をこすりつけた。
「おっと。……こんなかわいらしい女性に気に入られるなんて悪い気はしないな」
トオルは、自分より年若いリノを、一人の女性として丁寧に取り扱う。
「ちょっとトオル! なによその子から、離れなさいよ! 会って早々怪しすぎるんじゃない?」
「やだね! 私はこの人のこと好きになっちゃったんだから! ねえ、アージェンに行ったら私のことを好きにしてくれていいのよ?」
「ああ。冒険に支障がない範囲なら構わない。好きにしてやる」
「支障だらけよ!!」
ベタベタしてくるリノをさらりと扱いこなしているトオル。そのパツパツの「青い旅人服」は、リノがしがみつくたびに筋肉のラインが強調され、エルナをさらにイライラさせた。
「……ま、いいわ。私の彼氏ってわけでもないし。……ん、もう!! さあ、今度こそアージェンの町へ行くわよ!」
新たなメンバー(と一方的な好意)を加え、一行はようやく目的地アージェンに到着した。
盗賊娘のリノをパーティに加えさせていただきました。
真面目な村娘エルナに恋心全開のリノを対照的な二人のヒロインとして、今後のストーリーを展開してまいります。
第6話「酒場での自己紹介!?」へお進みください。
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