第4話:毒矢の洗礼!?
「さあ、出発よトオル! 隣町アージェンへ続く街道に出るために、まずはこの森を抜けるわよ」
翌朝、エルナは意気揚々と歩き出した。トオルは彼女から支給された、青い旅人風の服に身を包んで後に続く。
鍛え上げられた肉体にはややタイトなサイズで、厚い胸筋が生地を逞しく押し上げていたが、昨日の野性味溢れる姿に比べれば、今の彼はずいぶんと清潔感のある「デキる男」に見えた。
道中、森の奥から巨体を持つ「牙猪」が猛スピードで突進してきた。
「おっと、またしても通行妨害か。もしかして魔物の間では通行妨害が流行っているのか?」
初めて見る行動について、ついつい考えてしまうのはトオルの癖だ。
「……なるほど、重心を低くして直線的に加速するわけか」
トオルは迫りくる巨体を避けるどころか、あえて真正面から片手で受け止めた。
ズシンッ! と衝撃が走り地面が爆ぜるが、トオルは微動だにしない。まさに「鋼の肉体」の本領発揮だ。彼は猪の足の運びと、筋肉の爆発的な使い方を至近距離で冷静に観察していた。
「やはり、この肉体は最高だな。これだけの運動エネルギーを正面から受け止められるとは……」
トオルが魔猿との戦いで習得した「震動波」を無意識のうちにその拳に乗せ、猪の眉間へ見舞う。その瞬間、不可視の振動が猪の巨体を駆け抜け、内側から破壊された魔物は声もなく絶命した。
(テロップ:スキル【神速突進】をラーニングしました)
「今のでまた何か掴んだのかしら……。まあいいわ、今の騒ぎで魔物が集まってきそうね。少し予定を変更して、こっちの旧道から向かいましょう。人は少ないけど、少し足場が悪いの」
二人は鬱蒼とした茂みをかき分け、地図に辛うじて載っている程度の古い廃道へと歩みを進めた。
その時だった。
カチッ――という小さな硬質の音が、静かな森に響く。
「……え?」
エルナが足元を見ると、腐葉土に隠された仕掛け糸を踏み抜いていた。
シュッ、シュッ、シュッ!!
周囲の木々から、目にも留まらぬ速さで数本の矢が放たれる。
「危ない!」
トオルは反射的にエルナを抱き寄せ、自らの広い背中を盾にした。
バシィッ! バシィッ!
肉を叩く鈍い音が響き、トオルの腕や肩に三本の矢が突き刺さる。
「トオル! 嘘、私のせいで……!」
青ざめるエルナに対し、トオルは「イテテ……」と少し顔をしかめた程度で振り返った。
「……なんだ。今度の魔物は、ずいぶんと物理的な人工物で攻撃してくるんだな」
「そんなこと言ってる場合!? 矢が刺さってるわよ! ……待って、この矢、先が紫に変色してる……毒矢よ!」
トオルは刺さった矢を一本引き抜き、その先端をじっと見つめた。
「毒……。言われてみれば、刺さった場所が少しピリピリするな。まるでそこだけ電気風呂に浸かっているような感覚だ。……ふむ、筋肉が不規則にパルスを起こしているのがわかるぞ」
「冷静に分析しないで! すぐに全身に回るわよ! 【解毒魔法】!!」
エルナが必死に杖をかざすと、柔らかな緑色の光がトオルの体内を駆け巡り、毒素を霧散させていく。
(テロップ:スキル【デトックス】をラーニングしました)
「おお……これは素晴らしいな。不具合を瞬時に修復するパッチを当てられたような爽快感だ。……なるほど、リフレッシュしたい時はエルナに頼めばいいのか」
「……はぁ? 爽快って、もしかして変な妄想してないでしょうね……」
呆れるエルナを余所に、トオルは鋭い視線で周囲の地形を見渡した。
「……待て。エルナ、動かないでくれ」
トオルが指差す先には、巧妙に偽装された落とし穴の端や、さらに別の仕掛け糸が張り巡らされていた。
「これ……ただの森じゃないわね。明らかに『誰か』が、侵入者を排除するために設置した罠だわ」
トオルは真面目な顔で、刺さっていた矢を拾い上げた。
「単なる野生生物の仕業ではないな。ここには非常に質の悪い『セキュリティ・エンジニア』がいるらしい。……少し、物騒な旅路になりそうだ」
霧が立ち込める森の先、何者かの冷ややかな視線が二人を射抜いていた。
まだそれに気づかぬまま、エルナは無意識のうちにトオルの逞しい腕に寄り添うのだった。
何者かの冷ややかな視線とは、一体何でしょうか?第4話「盗賊の娘!?」へ続きます!
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