第23話:安住の地!
アージェンでの滞在も、もはや慣れたものである。トオルたちは生活に必要な物資の調達を効率的に済ませ、出発の準備を整え、アシュレ村へと向けて出発した。道中は特に魔物の襲撃もなく、驚くほど平和な旅路であった。
村の正門に到着すると、顔なじみの自警団員が笑いを浮かべて出迎えた。
「おいおいエルナ、またどこからか野蛮人を連れてきたのか?」
「失礼ね! 今回は正真正銘、仲間よ。この子はカイルの妹のミラ。とっても優秀な魔道士なんだから」
エルナの紹介に合わせ、ミラが丁寧にお辞儀をした。
「ミラと申します。至らぬ点も多いかと思いますが、精一杯働かせていただきます。よろしくお願いいたします」
その可憐で礼儀正しい態度に、自警団の男たちも一瞬で毒気を抜かれ、快くミラを受け入れた。
エルナとトオル、そして村長が家の建設場所についての打ち合わせをすることになり、その間、リノとカイルはミラを連れて村を案内することにした。
「ここが村の広場。あっちが私たちがよく行く食堂だよ」
「……本当に、穏やかな村ですね。兄さんがここを選んだ理由が分かる気がします」
ミラは新調したローブを揺らしながら、初めて見る村の景色に目を輝かせていた。
広場を歩いていると、かつてリノの仲間だった元盗賊団の男たちが、農作業の手を止めて駆け寄ってきた。
「リノ! 帰ってきたか! ……って、そちらの可愛らしいお嬢さんは?」
「随分と、こう……守ってあげたくなるようなタイプだなぁ」
男たちのデレデレした視線に、リノは面白くなさそうに腰に手を当てた。
「あんたたち、鼻の下が伸びすぎ。この子はミラ、カイルの妹よ。狙うんならカイルに許可をもらうことね!」
男たちは「おお! どおりで美人なわけだ」と納得したように頷く。「ミラさん、この村は俺たちがしっかり整備してますから、安心して過ごしてください!」
それを受けたカイルが、男たちに向かって深々と頭を下げた。
「ありがとうございます。妹のことを気にかけていただけて、本当に心強いです。皆さんのような頼もしい方々がいるこの村なら、ミラも安心して暮らせます。心から感謝します」
カイルの誠実な謝意に、男たちは「よせやい、カイルさんの頼みならお安い御用だぜ!」と照れくさそうに笑い、さらにやる気を出し始めた。
村長の正式な承認を得、カイルとミラの兄妹には、ひとまず村の空き家をあてがわれることになった。
その日の夜。
一行は村の食堂に集まり、トオルの家の構造と間取りについて熱い議論を交わした。
「家族もいないし、リビングはシンプルに。しかし、今後農具などを増やすとしたら、入り口付近には大きめの収納スペースも必須だな。休息を大事にしたいから寝室は広くしたい」 トオルが手元の紙に図面を書き出しながら説明すると、エルナやリノが次々と要望を重ねていく。 「来客用の部屋も作りましょう! おもてなしは大事だわ」 「私の部屋はダーリンの部屋のすぐ隣に作ってね!」
賑やかな声が絶えない食堂の隅で、トオルはふと息をついた。これまでの不安定な異世界生活も終わりを告げ、ようやく安住の地を手に入れたと心を穏やかにしたのである。
トオルは、ようやく手に入れた「安住の地」という名のプロジェクトの始動に、深く穏やかな充足感を覚えるのであった。
◇
その頃、ハイウルフのヤマイヌとハイゴブリンのハイゴが調査を進めていた。
「『光と雷の魔法』……とはいったものの、『闇魔法』の痕跡も残っているな」
ヤマイヌは逃げ延びたガーゴイルに残った微かな魔力の残滓を鋭い嗅覚を頼りに、エストーレからアージェンへ向かっている。そしてアージェンに近い山中、ハイゴは小型魔物たちを招集し、情報を集約した。
「どうやら、一行は5人でアシュレに向かったようだ」
「なるほど、魔力が続いているな。この先にはアシュレしかない。きっとそこが彼らの住居だろう」
ターゲットが辺境のアシュレ村に滞在していることを突き止めた。
ヤマイヌとハイゴは直ちに、絶望の山脈に座すバーサーカーのムシャの元へ戻った。
「ムシャ様、ヤツラの居場所を特定しました。アシュレ村です」
「……見つけたか」
ムシャが玉座を叩き、立ち上がる。
「俺の筋肉で冥途へ葬り去ってやるか。はっはっは」
次回、2026年3月2日19時10分更新です!
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