第22話:追跡者の正体!
エストーレを後にした一行が、アシュレへの中継地としてアージェンへと向かっていた時のことである。
「……何かが来る。気配を感じるわ」
リノが足を止め、鋭い視線を右手前方の林へと向けた。
「同感ですね。不快な振動を感じます」
カイルも弓を構え、警戒を強める。
木々の暗がりをさらに黒く染めながら現れたのは、血吸蝙蝠の群れであった。
「――【守護障壁】」
トオルが即座に光の障壁を生成し、一行を保護する。
トオルは中剣を抜き放ち、襲い掛かってくる蝙蝠を次々と排除していく。
リノは短剣で、カイルは精密な射撃で、エルナは護身の術で、それぞれ自分に迫る蝙蝠を退治する。
「やっぱりトオルの守りがあると、安心して対応できるわね。助かるわ」
エルナが感謝を口にした、その時だった。
「来ないでー!! 【電気霧!】」
「【熱打撃!】」
後方の街道から、女の子の叫び声と魔法の炸裂音が響いてきた。
「今の声は……ミラか!?」
カイルが驚愕し、声のした方へ駆け戻る。
そこには、だぼだぼの大きなローブを翻し、必死に応戦するミラの姿があった。
「ミラ、どうしてここに!」
カイルが弓で蝙蝠を撃退して駆け寄ると、ミラはもじもじと指を絡ませながら、消え入りそうな声で答えた。
「トオル様に助けていただいたのに、エストーレでは何もお返しができず……いつの間にか皆様が出発されてしまわれました。そして、気づけばついてきてしまいまして……」
「困った妹だ。……皆さん、すみません。俺は一度ミラを送り届けてから、アシュレに向かいます」
カイルの言葉に、ミラは慌ててトオルの方を向き、頭を下げた。
「も、もし、皆様がご迷惑でなければ、私も同行させていただけませんでしょうか! 強力な魔法はまだ使えませんが、一通りの攻撃魔法は使えます! ほら、この通り! 【水塊!】」
ミラが放った水球が、見事に一本の木を水浴びさせた。
「……トオルが一緒なら、そうそう危険なことにはならないでしょうけれど」
エルナが判断をトオルに委ねる。
「まー、そうだな。先日の盗賊を受け入れた件もあるし、エルナも若い人手が欲しいと言っていただろう? アシュレ村に一緒に住んでもらうのもいいんじゃないか」
「は? 少しくらい可愛いからって、ダーリンに守ってもらえるなんて思わないでくれる?」
リノが露骨に頬を膨らませるが、トオルはいつもの清潔な笑顔で続けた。
「別にいいじゃないか。女の子が一人増えたくらい、どうってことないさ。それに、華が増えるのは俺のモチベーションアップに効果的だ」
「「全く!」」 「何にも気づいてないんだから! 」「鈍感ったらありゃしない!!」
エルナとリノの声が重なる。
「よろしいんですか、トオル様。ご迷惑をおかけしないよう、精一杯努めさせていただきます!」
ミラはパッと顔を輝かせた。
カイルは深々と頭を下げた。
「皆様、申し訳ございません。不適切なことがあれば、すぐにエストーレへ連れ戻しますので」 「そんなことはいたしません!」
そんな騒がしい一幕を経て、一行は無事にアージェンへと辿り着いた。
豊富なキャッシュを活かし、今回は貴族御用達の高級宿に宿泊することにした。
アツアツの豪華な料理に舌鼓を打ちながら、一行はミラについて改めて紹介を受けた。
──ミラ。二十歳。カイルの妹。
兄と同じ美しい茶髪をふわふわとしたウェーブヘアにしており、垂れ目で可憐な顔立ちの美少女である。
病弱だったため、幼少期から魔導書を読み耽っていた。その影響で、補助から攻撃まで初級魔法を万能に使いこなせるようになっていた。
師匠もなく、書物だけでその領域に達するその魔法資質は十分なものである。
夕食の話題は、アシュレ村で建てる「トオルの家」の計画へと移る。
「私の屋敷の隣に広い土地があるわ。そこに大きな家を建てましょう」
エルナの提案に対し、トオルは少し考え込んだ。
「いや、将来的に農業も挑戦したいんだ。村の中心ではなく、外れの方が、周囲に気遣うこともない」
「トオルの意向なら仕方ないわね……」
エルナは少し残念そうだったが、こうしてアシュレ村の外れに、トオルたちの新たな拠点が建築されることが決まった。
窓から見える不気味な山脈から、魔王軍の刺客が調査のために出発していた。
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