第20話:動き始めた魔の手!
ガーゴイルの大群を退けたエストーレの町に、ようやく平穏な空気が戻った。
崩れ落ちた建物の瓦礫や、砕け散った時計塔を前に頭を悩ませる住人は多かったが、それでも彼らの顔には「生存」を勝ち取った安堵の表情が浮かんでいる。
時折、小規模な魔物の襲撃はあったが、町全体が壊滅の危機に瀕するほどの事態は初めてのことであった。
カイルは、トオルと出会ってからの出来事を家族に伝えた。
魔物に襲われて倒れていたところを救われたこと。そして、今や町一つの予算ほどの富を手にしていること。
それを聞いた母は「お金」に、そしてミラはトオルという「救世主の男性」に、それぞれ瞳を輝かせた。
カイルは、この旅で手にした金貨の大半を母へ手渡した。
「これで、ひとまずの生活は大丈夫だよね。ミラと一緒に美味しいものを食べようか」
「まあ、カイル……。あなたに親孝行してもらえる日が来るなんて……!」
家族の生活基盤を整え、カイルはようやく一つの責任を果たした心地であったが、ふと気にかかることを口にする。
「ところで、父さんは? ガーゴイルとの戦いで自警団にでも協力しているのかい?」
母の顔が少し曇った。
「それが……あなたが旅立ってから一年ほど経った頃、ふらっとどこかへ行ってしまったのよ」
「なんだって……あの放蕩親父め」
カイルは怒りを覚えたが、今はまず家族との無事な再会を喜び、英気を養うことに決めた。
そこへ、エストーレの町長をはじめとする有力者たちが、トオル一行の前に現れた。
「あの巨大な守りの魔法はいったい何だったのか。あれで一気に風向きが変わった……。町を救ってくれて、本当にありがとう」
長たちは深く頭を下げ、歓迎の印として町で一番の宿を紹介してくれた。
もちろん、命の恩人への感謝を込めた厚遇である。
翌日、一行は町の復興に向けた話し合いの場に招待された。
そこでエルナが立ち上がった。彼女はアシュレ村の村長の娘として、復興資金の援助を申し出たのである。
「もちろん、ただの慈善事業ではありませんわ。わが村とエストーレの間で、物流や技術の相互協力を結ぶことを条件とさせていただきますわ。これに応じてもらえないなら、支援は限定的なものとさせていただきます!」
エルナは持ち前の勝気な姿勢で、アシュレ村にも利益が出るよう、半ば強引ともいえる巧みな交渉で復興支援と、アシュレとの交流を約束させた。
こうして、エストーレの町は誇り高き時計台の再建へ、復興の一歩を踏み出したのである。
◇
一方。
魔王軍の幹部が居城を構える、絶望の山脈。
「……部隊が壊滅しただと?」
重厚な玉座に座る者が、不機嫌そうに声を低めた。
「報告によれば、『光と雷の魔法』を使う者が現れ、我々の重力魔法を無効化。ガーゴイルのリーダーのキキュウはその者に倒され、そこから一気に押し返されたとのことです」
「そいつは一体何者だ。練りに練って企画した『エストーレ崩壊祭』が台無しではないか、そしてキキュウまでも」
立ち上がったのは、トオルにも勝るとも劣らない鋼のような筋肉を持つ2m超の巨漢、武力の幹部「バーサーカー」であった。
彼は野獣のような赤い瞳を、北の空へと向けた。
「その光と雷の魔導士とやらを調査しろ。……準備が整い次第、俺が出る。俺の筋肉で、その魔法もろともひねり潰してやる」
トオルの知らぬところで、魔王軍による調査が開始された。
エストーレ復興の裏側で、武力の幹部の魔の手が迫りつつあるのであった。
次回、2026年2月28日9時10分更新です!
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