第17話:奥義の継承!
里での修行が佳境に入ったある日のことである。
それぞれが修行、研修、現場管理に励んでいる最中、空の色が突如として一変した。
雷雲と共に現れたのは、かつてトオルたちを苦しめた「サンダーバード」――よくもまあ、また現れたものである。
「総員、警戒! 電撃が来るぞ!」
ゲンの叫びと同時に、サンダーバードから猛烈な電撃が放たれる。
しかし、ゲンは慌てず前に出ると、その両腕を広げて【守護障壁】を展開した。
「ぬんッ!」
光が道場一帯を包み込み、凄まじい電撃をすべて無効化する。その光景に、トオルは感激する。
(テロップ:スキル【守護障壁】をラーニングしました)
そして、トオルは即座に反撃に転じた。
「遠距離攻撃ならこれだ――【サンダー】」トオルの指先から電撃が走る。
雷属性を宿すサンダーバードにとって、同属性の攻撃は有効ではなかったが、さすがにびっくりしたようで、トオルを見つめている。
「トオルさんのサンダーでも無理だったか ……でも、こいつはどうだ!」
声を上げたのはカイルであった。
魔物の位置を冷静に見極め、弓に「闇属性」の魔力を付与し、弦を限界まで引き絞った。
「こないだの借りに利子を付けて返してやる! 受け取れ!!」
放たれた矢は、サンダーバードの翼の付け根を正確に貫いた。
闇の侵食により飛行バランスを失った魔物は、叫びを上げて地上へと墜落する。
「カイル、やるじゃない!」
エルナが驚きの声を上げる。
カイルは「ふっ、見てくれたか、エルナさん……」と心の中でガッツポーズを決め、追撃の合図を出した。
「トオルさん、師範! 今だ!」
地上に落ちたサンダーバードに対し、トオルとゲンが同時に踏み込む。
ゲンの一撃必殺の拳と、トオルの重圧を乗せた剣が同時に叩き込まれ、ついにサンダーバードはその場で息絶えた。
静寂が戻り、歓喜に沸く修行場で、ゲンが重い口を開いた。
「……トオルよ、すまなんだ。お主に雑用ばかりを押し付けたのは、わしの私情じゃ。意固地になっていた。わしはかつて、家族を……」
ゲンは自らの悲劇的な過去と、守るための武を求めた経緯を静かに語り聞かせた。
そして、トオルの目を見据えて問いかける。
「わしはこの守護障壁の練成に生涯を捧げた。
……お主にこれを継承しようと思う。待たせたな」
ゲンが再び、障壁を練り上げる。
するとトオルは、ゲンの隣に立ち、まったく同じ構えをとった。
するとトオルの周囲に、ゲンが展開したものと寸分違わぬ、強固な光の障壁が立ち上がった。
「な……ッ!?すでに見極めたというのか……!?」
ゲンのみならず、エルナや弟子たちも呆気にとられ、言葉を失う。
しかし、トオルは一人納得したように頷く。
「師範、感謝いたします。ようやく理解しました。やはりあの『修行』こそが、万象の中で真髄を見つけ出すために必要なトレーニングだったのだと。」
「は……? 雑用って、さっき言ったの聞いてなかった?」
「いいえ、聞いておりました。魚を正確に捕らえる『精密動作』、土嚢づくりによる『精神集中』、最適な薪を見極める『構造理解』、巨岩をスムーズに運ぶ『重力移動』、殺戮魔熊への『凶兆感知』。
これらの修行が礎となり、すべてがこの極意に至るための最短ルートであったのだと。」
ゲンは、雑用を都合よく解釈されたことに困惑したが、その資質を前に苦笑いを浮かべた。
「師範。改めまして、感謝を申し上げます」
「……そうか。奥義を継承できたお主がそういうのなら、それが最短ルートなんじゃろ! 弟子たちにも同じ修行をさせ、我が奥義を継承させてみせるぞい!」
やる気に火が付いたゲンの傍ら、厳しい修行の不安を感じた弟子一行は落胆した。
一方、その輪の隅でカイルは呆然としていた。
「……あれ? 俺、さっき闇属性の魔法を初めて披露したんだけど、みんな気づいてない?」
今まで秘匿にしていた闇属性魔法というスキルがお披露目早々、トオルの規格外なインパクトに完全にかき消され、カイルの闇魔法を覚えている者はいなかった。
エルナですら「トオルさんって本当に凄いわ……」とトオルの筋肉と才能に見惚れている始末である。
カイルは、静かに肩を落とすのだった。
こうして、トオルは師範の究極奥義をその手に収めた。
エルナを除く一行は新たなスキルを加え、よりたくましく成長したのであった。
次回、2026年2月26日19時10分更新です!
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