第15話:弟子たちとカイル!
トオルが「修行(雑用業務)」に邁進し、リノがゲン師範から「研修(極意継承)」を受けている間、エルナとカイルもまた、自分たちにできる役割を模索していた。
拳王府の里には、ゲンの弟子たちが十名ほど在籍し、日々の研鑽を重ねている。
しかし、その生活環境はお世辞にも整っているとは言えなかった。
「……あの黒猫に手柄を横取りされるなんて。私だって、負けていられないわ!」
エルナは対抗心を燃やし、村長の娘として、持ち前の管理能力を発揮し始める。
彼女は弟子たちの劣悪な住環境や、どんぶり勘定だった食料備蓄の状況を瞬時に把握し、生活基盤の改善に着手した。
「そこのあなた! その薪は湿っているわ、しっかり日干ししなさい。それから、この献立は何? 家のお手伝いで料理をしてこなかったの? ……いい、修行も何事も、健全な生活環境から生まれるものよ!」
突然やってきた女傑とも見間違う熱血指導に、当初は戸惑っていた弟子たちだったが、エルナが整えた清潔な住環境と栄養バランスの取れた食事を前にして、すぐに「アネゴ……!」と心酔してしまった。
一方、そんな凛々しいエルナの指導を横で見ていたカイル。
「……やっぱり、エルナさんは最高だ。俺だけじゃなく、弟子たちをもその魅力で虜にするなんて……俺もいいところを見せないと!」
カイルは改めてエルナに惚れ直し、自分も彼女の役に立ちたいと、弟子たちの先頭に立ってお手本のように立ち振る舞った。
エルナの指導を共に受けている最中、カイルは「俺にも何か武道の類を教えてくれないだろうか」と、トオルには内緒で弟子たちに教えを乞うた。
「あんたも学びに来たのか? 弓使いとお見受けしたが、俺たちが教えられることなんてあるかねぇ」
弟子たちは、表面上は応対しつつも、内心では激しい嫉妬を燃やしていた。
整った顔立ち、涼やかな目元、そしてエルナとの立ち位置。
「(なんだこのイケメンは……俺たちが泥にまみれて修行している間に、こんな男がエルナさんの隣にいたのか)」
「(顔がいいだけで得をしてやがる……)」
弟子たちの刺すような視線がカイルに集まる。
カイルはその空気を感じ取り、苦笑いを浮かべた。
「(……ああ、またこの視線か。どこに行っても嫉妬を買ってしまうのか。でも、ここでも逃げてしまえば、エルナさんと旅が続けられない。何とかしなければ……)」
カイルは自らの容姿が招く現状を理解しつつ、弟子たちに同行して食材調達の狩りへと向かった。
しかし、その最中に事件は起こる。
森の奥深く、中型の魔物「殺人蜂」の群れが、大きな羽音を轟かせて、カイルと弟子たちに向かってきていたのだ。
「くっ! 油断した! 囲まれるぞ!」
弟子たちが戦闘に備えたその時、カイルが静かに弓を引いた。
彼は恐ろしく静かに矢を放ち、すでに一匹を鋭く射貫いていた。
「……大丈夫だ。俺の射程範囲なら、任せてくれ」
さらに放たれた矢は、次々とキラービーを射貫いていく。
一射、二射、三射――幾分もかからず、おおよその魔物を地面に落とした。
カイルは緊張を解き、「これで全部かな……?」と呟く。
「ま、まだだ。右に一匹、左後方に一匹、気配を感じる」弟子の一人が伝える。
カイルは弟子の指示した方向に矢を放ち、弱った魔物を弟子たちがそれぞれとどめを刺した。
冷たい目を持つイケメンの手助けもあり、すべての魔物を亡骸とした。
そして、弟子の一人が呟く。
「カイルさん……【気配探知】ってのに興味はないかい?」
「先ほどのスキルか……ぜひ、教えてくれ。射程範囲の気配を探知できるなら、俺にぴったりじゃないか」
共通の敵を倒した達成感もあり、カイルと弟子たちはいつの間にか旧友のような関係になっていた。
邪念のせいで気配探知を怠っていたことはカイルには内緒だ。
その後、謝罪の意味も込め、気配探知の方法を実践した。
目的であった食材調達狩りもこれにより速やかに終えたのだった。
こうして、エルナは管理人として、カイルは旧友として、弟子たちの支持を固めたのであった。
次回、2026年2月24日19時10分更新です!
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