第14話:里での修行!
「いいか、新参者よ。一見無意味に思える万象の中に身を投じることで、武の真髄は得られるのだ」
道場の前にある修行場で、ゲン師範の低い声が響く。
トオルに課された修行は、渓流での魚捕り、山の土での土嚢づくり、薪用の木材集め、水源までの道にある巨岩の排除、さらには殺戮魔熊の痕跡調査など――いわば、ただの「雑用業務」であった。
しかし、トオルは至って真面目な顔で、それを独自の理論で解釈した。
「…………なるほど。武道を極めるにはこのような修行が適切なのか。師範、一生懸命取り組みます!」
トオルは青い旅人服を脱ぎ捨て、インナー姿になった。
露わになったのは、日々の鍛錬によって磨き上げられた、パツパツの筋肉である。
それを見たエルナとリノが「ひゃっ!?」と顔を赤らめて両手で目を覆うが、指の間からはしっかりとその「鋼の肉体」を凝視していた。
トオルは黙々と、無意味とも思える修行 (?)を淡々とこなし、夕方には薪火で宴会ができるほどの魚と資材を確保した。
―― 一方、トオルが修行に励んでいる頃のゲン師範はといえば、道場の一室で至福の時を過ごしていた。
「ほほう、これは美味い! リノちゃん、このお酒は見事なものじゃ。どういういきさつかは知らんが、幻の銘酒をまた味わえるとは!」
ゲンは上機嫌に声のトーンを上げ、リノの献身的な「接待」にデレデレと鼻の下を伸ばしていた。
かつて失った娘の面影を彼女に重ねているとは露知らず、周囲から見れば、単に「男には厳しいくせに、若い女子には甘いすけべじいさん」にしか見えない。
しかし、伝説の武術師は、ただ鼻の下を伸ばしているだけではなかった。
彼は接待を享受しながらも、リノのしなやかな身のこなしで「すけべじいさん」の手をすり抜ける天性の資質を瞬時に見抜いていたのである。
「……リノちゃん、お主もいったい何者じゃ。お酒のお礼と言っちゃなんだが、わしの技を学んでみんかね?」
ゲンはリノの目の前で、自身の極意である【残像操作】を発動した。
「え、おじいちゃまが二人!?」
人間業とは思えない、実体と残像がまるで鏡合わせのように並び立つ超常現象を前に、リノは言葉を失う。
「ほっほっほ、そんな反応も無理はない。こうやって残像も動かせるぞ。どっちが本物か分からんじゃろ?わしが資質を見込んだお前さんじゃ、どうじゃ、わしの極意を覚えてみないかね?」
「(え?見分けがつかない……こんなことってあり得るの) は、はい、ぜひともお願いします! おじ……師匠!」
リノは居住まいを正した。
トオルが泥にまみれて「雑用業務」をこなしている間、リノに極意の継承が始まる。
「……ダーリン、あんなに頑張ってるのに。なんだかリノだけズルしてるみたいだね?」
「案ずるな。あやつはあれで楽しんでおる鈍感な男じゃ。いずれ頃合いを見て、技を教えてやるつもりだ」
こうして、ただの雑用 (トオル)と、極意継承 (リノ)という、二つの異なるラインで「里の修行」が進行していくのだった。
次回、2026年2月23日19時10分更新です!
もし少しでも「続きが気になる!」と思っていただけましたら、
・下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援
・ブックマークをポチッと追加
いただき、次のお話をお楽しみください。
皆様の評価ひとつで、私の執筆エネルギーが劇的に回復します!
引き続き、よろしくお願いいたします!!




