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【鋼の青魔】鋼の肉体を持つ青魔導士~敵の技をラーニングするが、自分を最強の戦士だと勘違い~  作者: ハリネズみ


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第13話:黒猫の交渉術!

 アージェンでの大規模な商取引を成功裏に終えたトオル一行は、次なる目的地をカイルの故郷へと定めていた。


しかし、その道中で一行が到着したのは、切り立った断崖絶壁に囲まれた「拳王府ケンオウフの里」だった。

トオルは、並んで歩くリノやエルナ、カイルを密かに見やり、心の中で呟く。

「(……自分はどんな攻撃を受けてもおそらく効かない。だが、彼女たちはそうではない。早めのリスク対応が必要だ)」仲間を守るための「盾」としての技を身につけたい――。

その強い思いから、トオルはこの里への立ち寄りを希望したのだった。


 「拳王府」の古参であり、かつて大陸全土にその名を轟かせた伝説の武術師として知られるゲン師範。

彼が隠居するこの里は、切り立った崖をくり抜いたような門の向こうに、無骨な雰囲気で佇んでいた。

 その門前に立つだけで、並の武芸者なら足が竦むほどの圧が漂っている。

一見すると好々爺にしか見えないゲンだったが、その身に纏う覇気はトオルをも緊張させる、いわば「大手企業の重役」のような重厚なものだった。

「お主、いい体をしておるな。どのような鍛錬をしてきたのか、興味があるわい」

 ゲンはトオルの鍛え抜かれた胸板を軽く叩きながら、さすが重役といった興味アンテナをトオルに向けた。トオルはその「視察」を真摯に受け止める。

「さて、一体……何用だ」

 地を這うような低い声でゲンは語りかけた。

トオルは一礼し、失礼がないようビジネスマナーを意識して口を開いた。

「初めまして、ゲン師範。私はトオルと申します。本日は、貴殿が保持する独自の防御技術【守護障壁カヴァーリング】の技術指導を仰ぎたく参りました。もちろん、対価については――」

「帰れ!」

 ゲンの怒号が山々に響き渡った。

「お主のような新参者が! 血の滲むような鍛錬の積み重ねで身に着けた我が奥義を、対価を持ち出し、安易に教えを乞うなど失礼極まりない!

 だが、せっかくの来訪だ、里名物のお茶を土産にやるから、早々に立ち去れい!」

 何がゲンの琴線に触れたのか、トオルには理解できなかった。

世代間の価値観の相違、これがジェネレーション・ギャップか、とトオルは肩を落とした。


 トオルがそうして厳しい現実を受け止めようとしている傍ら、交渉担当のリノがそっと耳打ちする。

「(ダーリン、ここは私に任せて!)」

 トオルの視線が、リノが手に持つ濃褐色の瓶を捉えた。

「……ねぇ、おじいちゃま。トオルはあんなこと言ってるけど、私はどんな鍛錬をしたらこんなに若々しくて素敵な肉体を保てるのか、すっごく興味あるなぁ。

 アージェンの古代酒を飲みながら、ゆっくりお話を聞かせてほしいな♪」

 リノは黒猫のようにゲンにすり寄り、猫撫で声を出しながら、女の武器を最大限にアピールした。

「なんと、け、け、けしからん!……」

ゲンはまんざらでもない表情を浮かべ、こう続けた。

「まさか、幻のアージェンの古代酒をまた拝めるとは……」

 リノは、悪徳商人が残した財宝の中に「幻の酒」が混ざっていたことを見逃さず、こっそり拝借していたのだ。さすがは元盗賊といったところか。

 リノは愛嬌たっぷりの笑みを浮かべ、絶妙なタイミングでゲンの懐へと滑り込むと、トオルへ自信たっぷりのウインクを贈った。

トオルが直接的な指示を出すまでもなく、彼女はトオルの利益を最大化するために、自律的に業務を遂行したのだ。

「(ほう……。なかなかやるわね、黒猫。まだまだ私にも活躍の場はきっとくるわ)」

 対抗心を燃やすエルナの傍ら、カイルは「(リノ、ナイス! このままトオルさんと結ばれてくれ!)」と、二人の仲を必死に応援していた。


 ゲンの顔はパッと明るくなり、先ほどまでの重苦しい空気は霧散していた。

「けしからんのは、わしのほうだった。年を取って考えが固着化していたのかもしれん。改めて、お主の……その、用件とやら聞かせてもらおうではないか」

 黒猫娘の柔らかい武器のせいで、心ここにあらずといった口調ではあったが、ゲンは正式にトオルと向き合った。


 こうして一行は里の奥へと招き入れられ、トオルは「防御技術」のレクチャーを受けることになったのである。

次回、2026年2月23日9時10分更新です!


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