第10話:クエストの洗礼!
「ねえダーリン、次のデートスポットが楽しみね~!もちろんアージェンでも腕を組んで歩いてくれるよね?」
「(リノめ、そうしているのも今のうちよ……フフフ、絶対にトオルを逃がさないわ。この規格外な物件、私の手でしっかり掴んでおかなきゃ!)」
エルナは野心を瞳に宿し、その傍らで、カイルは普段のクールな装いからは想像もつかないほど私的な情熱を内に秘めていた。
「(……俺もエルナさんとデートがしたい!……)」
こうして、それぞれの恋心を胸に、一行は再びアージェンへと降り立った。
アージェンの商人ギルドは、以前にも増して熱気に包まれていた。
扉を開け受付カウンターへ向かうと、エルナが丁寧に頭を下げた。
「あの……私たちはアージェンでの依頼を受けるのが初めてなのですが、何か初心者向けのお仕事はありませんか?」
受付嬢は、以前「黄金竜の鱗」を持ち込んでギルドを震撼させた一行であることを即座に思い出し、背筋を正していくつかの依頼書を提示した。
「え、ええと……皆様のようなお方には本来、よりすべての案件をご提示差し上げたいのですが、商人ギルドの規定によりまして。アージェンでの実績がゼロの状態では、まずはこうした『雑用依頼』からステップアップしていただくルールとなっておりまして……」
「いえ、問題ありません!何事も信頼の積み重ねが重要ですから!」
トオルは新入社員のような清々しい笑顔で快諾し、やる気に満ち溢れていた。
しかし、現実は非情だった。
トオルの「鋼の肉体」と「規格外なパワー」は、繊細さが求められる雑用業務においては、全く不向きだったのだ。
古びた民家の補修(DIY)を頼まれれば、歪んだ釘を正そうと金槌を一振りしただけで、柱を破壊してしまい、庭の草むしりを頼まれれば、雑草と共に地面の石畳まで丁寧に剥ぎ取ってしまった。
「申し訳ない。力の加減の仕方が分からない。……あ、その割れた花瓶は俺が……あ、拾おうとしたら指の力でさらに真っ二つに……」
「トオル! もういいから、お願いだから動かないで! これ以上、依頼主の損害を増やさないでよ!?私たちの所持金が減っていくばかりだわ!」
エルナの悲痛な叫びが響き渡る中、トオルは次々と「初心者向け依頼」を失敗(というか物理的に破壊)し続け、ギルドにおける彼らの評価は瞬く間に転落した。
夕暮れ時、残された依頼はたった一つ。
「……あとは、これだけです。旧市街の下水道清掃。ここ最近、急に耐えがたい悪臭が市街地まで漏れ出すようになり、緊急依頼を掲示しているのですが……あまりの劣悪な環境のため、どなたにも引き受けていただけず。
ギルド内では『最悪の汚泥案件』と呼ばれています。ですが、これまでの損害を完全に相殺し、お釣りがくるほどの報酬を出すことを、ギルドが責任を持って保証いたします」
受付嬢が申し訳なさそうに出した依頼書を、トオルは「これこだ!」とばかりに受け取った。
「下積みや泥臭い仕事こそがビジネスマンの基本。新入社員の頃、徹夜で資料作成をさせられたり、無茶な雑用をさせられたことを思い出すよ。ここなら壊して困るような繊細な備品もなさそうだ。思う存分、依頼をこなせるな!」
「……いや、トオル。これ報酬は異常に高いけど、生存率がゼロに近い『死の依頼』だったりしないの?」
エルナの冷静な指摘も、やる気に火がついたトオルの耳には届いていなかった。
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