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白蒼月紅譚~二つ月のある世界(種シリーズ①)  作者: 汐井サラサ
番外編:幽霊屋敷に行こう!
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(1)

「幽霊屋敷?」


 私は久しぶりにギルドから請け負ってきた依頼書を食堂の一角でいつものようにお茶していたみんなに見せた。


「そう! 幽霊屋敷っ! 楽しそうじゃない?」


 にこにことそう告げた私に、エミルはにっこりと依頼書を受け取り目を通してくれる。

 ランクがBなのでみんなに協力してもらえないとこなせない仕事なのだ。


 ―― ……勝手に受けてきたのは悪いと思うけど……。


 暑くはない季節だけど幽霊屋敷の調査なんて肝試しっぽくて楽しいと思う。


「マシロはなんでこれがBランクか聞いた?」


 ぴんっと依頼書の端っこを弾いてそういったエミルに、私はううんと首を振る。


 幽霊なんて普通の人じゃどうにも出来ないからランクが高いのかと思っただけだったけど? 続けて首を傾げるとカナイの呆れたような溜め息が聞こえた。


「お前さ、幽霊の正体見たり魔物かなって知ってる?」

「……枯れ尾花なら知ってるよ。怖い怖いと思ってると枯れ尾花でも幽霊に見えるってやつでしょ?」


 少し臍を曲げて答えるとアルファは明るく笑って違いますよー。と、否定した。


「幽霊イコール魔物って話です。要するに魔物だと思われるけど、その正体がハッキリしないから幽霊って感じですね。良いですよ。僕マシロちゃんに付き合います。面白そうだし」


 最初に依頼を聞いたときの私と同じようににこにことエミルの手の中から依頼書を取ってひらひらしたアルファに、今度はエミルがお小言だ。


「アルファ。依頼を受けるのは良いけど、マシロがいく必要はないよね?」

「ええ、私も幽霊の正体みたい」


 思わず挟んだ声にエミルは子どもに話をするようにやんわりと私に口を開く。


「あのね、マシロ。一応Bランクってなってるけど、正体がわからない以上、Aランク級の魔物かも知れないし……まぁ、それ以下ということもないわけじゃないけど……」

「じゃあ、幽霊かも知れないじゃん」


 にこりと口にした私に間髪居れずにカナイのチョップが入った。


 反射的に、痛いっ! と、頭を押さえた私にカナイは気難しそうに眉を寄せる。


「有り得ない。お前、知ってるだろ? ここの人間が死んだらどうなるかくらい?」

「……知ってるよ。種になるんだよね」

「そう。それが魂の塊ともいわれてるんだ。だからその行き先だってお前はよく知ってるだろ?」

「う……ブラックのところです」

「なら、幽霊なんて有り得ないだろ?」


 カナイのいつもながらの正論に、私はうーっと唸った。折角面白い依頼だと思ったのに。


 確かに、ここでは人は死ねば種になるし、それは種屋が回収してしまう。墓はあっても形だけのものでそこに手を合わせるものも話しかけるものも殆ど存在しないだろう。


 残念と肩を落としたところで


「そうとも限りませんよ」

「ひっ!」


 幽霊の話とかしていたから思わず突然現われたブラックに小さな悲鳴を上げてしまった。それに素直にしょんぼりするブラックに謝罪する。


「それはそうと限らないってどういうこと?」


 空いていた私の隣に腰を降ろしたブラックにそう問い掛けると「ああ」と話を始めてくれる。


「何を持って幽霊なんて表現するのかは分かりませんが、私が種を白化した際出来る光の球体は大抵時間と共に消えますが、時々消えないものがあります。面倒なのでそのままにしておくと消えたというよりは居なくなってるものがあるので……もしかしたら」

「それが幽霊?」


 興味津々でそう問い返した私にブラックはにっこりと「もしかすると、ですね?」と頷いた。


「てことはさぁ、ブラックの所為ならブラックが片付けてきなよ。この依頼」


 ぶっすーっとさっきまでノリノリだったアルファがブラックの登場に不貞腐れて依頼書を机の上に、ぱんっ、と、置き私たちのほうへ滑らせた。


 ブラックはそれをひょいと受け取るとにこりと微笑む。


「構いませんよ。マシロも勿論いきますよね? 正体、見たいんでしょう? 幽霊の。この依頼書にも夜間出没すると書いてありますし、夜のデートをしましょう。二人きりで」



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