表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
風の子と魔法の旅路 ~風のことばを探して~  作者: ましろゆきな
第七章、風の塔

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/57

第四十九話、第六層《静謐なる天秤》(後編)

 風の音が消えた。


 祭殿の奥へと足を踏み入れると、空気はひとしおに重く、密やかに閉ざされていた。広間の中央には天秤。その両の皿には何も載っていないが、それ自体がこの空間を律する意志を帯びているようだった。


 ひとつの声が響く。風ではない、塔の内奥に根づく“問いの精霊”のような存在の声。


「問おう、風の名を持つものよ。汝の歩み、秤に値するか」


 (そう)は胸の奥が微かに震えるのを感じながら、正面に進み出た。風の名を名乗った者として、ここで拒めば試練は終わるのだろう。


「……応じます」


 (そう)の言葉に、天秤がわずかに揺れた。まるでそれが返事のように。


「ならば、見せよ。汝の重み、汝の真実。選び取れ。何を手放し、何を保つか」


 そのとき、広間に三つの扉が現れた。それぞれの扉の前には、同行者であるリアガン、リウ、シフが立っている。


 リアガンは、重ねた書を片手に掲げ、静かに(そう)を見つめている。


 リウは穏やかな微笑を浮かべながらも、その眼差しは試すように鋭い。


 シフは、物言わぬまま、まっすぐな視線で(そう)の目を覗き込んでいた。


 塔の声が再び響く。


「いずれかを選び、いずれかを手放せ。試練の名は『重き選択』。その選びが、おまえの真をあらわすだろう」


 ――誰かひとりを「今この場で」失う。そういう類の選択ではないと、(そう)にはわかった。けれど、選んだ者とともにこの層のさらに奥へ進み、選ばなかった者たちとは一時的に分かたれる。彼らとの関係、信頼、理解――それらを量る試みなのだろう。


 誰かひとりと進み、あとの二人とは別の道へ向かう。


 それは単なる選好の問題ではない。誰の力が今、自分に必要なのか。どの関係性が、今ここで試されるべきか。


 リアガン、リウ、シフ。それぞれが、言葉にしない問いをその瞳に湛えている。


 (そう)は目を閉じた。


 ――風よ。問いに応えて、僕の中を渡って。


 胸の奥に風が吹く。これまでの旅路、交わした言葉、理解の種、すれ違いと和解の兆し。それらが、風の中でひとつに編まれていく。


 目を開け、(そう)は歩き出す。


 選んだのは――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ