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風の子と魔法の旅路 ~風のことばを探して~  作者: ましろゆきな
第六章、忘れられた契約の庭

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第三十七話、名を忘れた精霊たち

 試練の間──そこは、静寂に満ちた白い円形の空間だった。

 天井は高く、壁面には古の言葉が刻まれ、中央には円形の魔法陣が淡く輝いていた。


 「この場に招かれるのは、過去に“名”を与えられながらも、名を忘れ、今なお彷徨う精霊たちだ」

 記録官の声が響く。


 魔法陣に光が集まり、やがて幾つかの影が浮かび上がる。形はあやふやで、まるで霧が集まって人影の姿になったようだった。


 (そう)が一歩踏み出すと、影の一体がかすかに反応した。


 「……だれ……わたし……なまえ……?」


 その声は、かすれ、消え入りそうだった。


 ヒューラがそっと(そう)の横に立った。

 「彼らは、自分が何者だったかも思い出せない。でも……名を呼ばれた記憶だけが、まだどこかに残ってるんだ」


 (そう)は静かに目を閉じ、風の流れに耳を澄ませた。

 その中に、かすかな震え、助けを求める囁きがあった。


 「……君の名は……フィンラ……」


 その名を呼んだ瞬間、一体の影がふっと震えた。

 淡く揺れていた霧が少しだけ濃くなり、輪郭が明確になる。


 「フィンラ……わたし……そう、だった……」


 他の精霊たちもざわめき始めた。


 「なまえ……あるの? ほしい……なまえ……」


 (そう)はヒューラ、アウラス、イリィアと目を合わせる。


 「僕たちで、もう一度名を贈ろう。この空間で、“名”が縛るものではなく、解き放つものだと証明するんだ」


 シフとリアガンも静かに頷いた。


 「では……共に、祝福を」

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