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風の子と魔法の旅路 ~風のことばを探して~  作者: ましろゆきな
第六章、忘れられた契約の庭

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第三十六話、契約の名、祝福の名

 “管理の間”の重厚な扉が、風もなく静かに開かれた。


 中は、冷たい光に満ちた広い空間。

 無数の記録棚が並び、その一つひとつに、刻まれた“名”が封じられていた。


 中央には記録官の青年──黒衣の男が待ち構えていた。


 「これが、アラウィンが築き上げた秩序だ」


 青年は広げた手で記録棚を示した。

 「名を得た精霊は、この管理のもとに力を制御され、魔法の安全性と公平性が保たれる」


 アウラスが一歩踏み出した。

 「だが、それは精霊の意思を封じている。力を恐れ、名を“鎖”に変えただけだ」


 「恐れではない。制御だ」青年が鋭く返す。


 「名に責任を伴わせることで、均衡が保たれる。君たちのように“祝福”と呼ぶ曖昧なものでは、社会は機能しない」


 シフがゆっくりと声を発した。

 「名に責任があるのなら、なおさら、名を贈る者にも覚悟が必要だ。君たちは、覚悟を他者に押しつけている」


 ヒューラが(そう)の後ろからそっと前に出た。

 「僕たち精霊は、名前を与えられたことで、はじめて“ひとり”になれる。

 でも、それは独りぼっちになることじゃない。誰かと結ばれることなんだ」


 沈黙が空間に降りた。


 そして青年は、試すように言った。

 「ならば、祝福の名がいかなるものか、見せてもらおう。

 “契約の間”にて、古の精霊たちと向き合う試練を受けるがいい」


 (そう)は静かに頷いた。

 「わかりました。わたしたちは、“名を贈る意味”を証明します」


 扉の向こう、試練の間へと続く通路に、また風が流れ始めた。


 その風は、問いの風。

 そして、祝福の風だった。

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