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風の子と魔法の旅路 ~風のことばを探して~  作者: ましろゆきな
第六章、忘れられた契約の庭

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第三十五話、古き友の再来

 庭に出た(そう)の背後から、ひときわ馴染み深い声が届いた。


「……また、面倒なところに首を突っ込んでるね、(そう)


 聞き覚えのある声に驚いて、振り返る。

 奏の目に映ったのは、あの軽薄そうな笑みを浮かべた男──だが、彼の背後には、もう一人の気配があった。


 「あ……あなたは……。そういえば、まだ名前を聞いてないですよ?」


 拗ねたような奏の言葉に男はおどけたように笑った。


 「そうだったっけ。君の師匠は僕を“リウ”と呼んでいたけどね。──本名は“リアガン”」


 「リアガン……!」


 しれっと流浪人自ら名前を明かされ、(そう)は驚いて名を繰り返す。

 その名を口にした瞬間、背後からふっと風が通り抜けたような感覚があった。


 「それに、あなたは……」


 リアガンと共に奏の前に現れた白い幻のような人。

 今も風をまとって軽やかにそこに立っていた。


 「やあ、久しぶりだね。随分、風との絆が深まったようだ」

 「こっちは僕の、ずっと昔の友人。こいつが勝手にそう呼ぶもんだから、君も使っていいよ。“リウ”でね」


「……“リウ”」


 奏がその名を呼んだ瞬間、今度は風が軽やかに笑ったように舞った。


「そう。僕の名の欠片。今は、それだけでいい」


 奏とリアガンたちが再会を果たしていると、木陰から足音が聞こえた。

 「……(そう)、誰と話しているんだい?」


 イリィアだった。後ろにはアウラスとヒューラの姿もあった。

 「探したよ、(そう)。……あの記録官は、君たちが“名を縛らない者”であるか、正式に示す場を設けるって」


 (そう)は、イリィアたちに向き直った。


 「わかった、行くよ」


 アウラスがリアガンと――もう一人現れた人影に目を留めて、目を細めた。

 「あなたが、リアガン。そして、あなたは……シフ、なのか」


 シフは軽く頭を下げた。

 「そう呼ばれることもあるよ。あなたは、(そう)と共にこの場所に導かれた精霊の伴だね」


 「僕はアウラス。……彼と共に、名の意味を問い直すために来た」


 ヒューラもふわりと風に舞うように近づき、笑みを浮かべた。

 「みんな、名前を持つことで出会ったんだね」


 (そう)は仲間たちの顔を順に見回し、静かに頷いた。

 「ここから先、本当の意味で“名”と向き合う時が来る。……みんな、一緒に来てくれるか?」


 「当然だよ」

 「当たり前でしょ」

 「言われなくても」


 それぞれの声が重なり合い、風が一陣、彼らを包み込んだ。


 ──名を巡る物語は、次の扉を開けようとしていた。

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