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風の子と魔法の旅路 ~風のことばを探して~  作者: ましろゆきな
第六章、忘れられた契約の庭

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第二十八話、記録なき契約

 青年は、古の風のように静かな声で名乗った。


「名は、いらないかもしれないね。ただ、呼ばれたのは久しぶりだ……」


 その目は、アウラスを真っすぐに見つめていた。


「君が、その名を選んで受け取ったとき。私たちの契約は、もう一度結ばれた。

 でも、それをこの国は望んでいない」


 青年──証人は、契約の庭を一望しながら続けた。


「この庭は、本来、すべての名が祝福として与えられる場所だった。

 だが、いつの間にか“名”は秩序を保つ道具となり、管理され、記録され、力の枠組みに縛られるようになった」


 ヒューラが小さくうなずいた。

「記録なき契約は、それを拒んだ精霊たちと、拒まれた魔法使いたちの最後の約束だったのね」


 アウラスが声をしぼり出した。

「じゃあ、僕は……その失われた契約の残響だった?」


 証人は目を細め、かすかに微笑んだ。

「そう。君は名を持って生まれながら、それに従うことを望まなかった。

 それゆえに、記録から消され、忘れられた。

 でも今、君を呼ぶ声があった。

 それは、新しい契約のはじまりなんだよ」


 (そう)は、その言葉に何か強いものを感じていた。

 名は祝福であり、重さでもある。だが、それをどう使うかは──自分次第なのだ。


 その時、風が強く吹き、庭の一角に古い扉が現れる。

 まるで封じられていた記憶が、次の真実へと導こうとしているかのようだった。


「この先に、記録されたすべての“名”が眠っている。

 アラウィンが今の姿になった、その源流だ」


 証人の指差す先にある扉は、どこまでも静かで、重く、しかし──(そう)には確かに聞こえた。かすかな呼び声が。


 「行こう」と、ヒューラがそっと言った。


 (そう)はうなずき、一歩、扉へと歩を進めた。

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