表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
風の子と魔法の旅路 ~風のことばを探して~  作者: ましろゆきな
第六章、忘れられた契約の庭

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/57

第二十五話、名のかたち、心のかたち

 霧が深まったかと思うと、(そう)の足元から景色がゆらぎ、次の瞬間、見知らぬ空間に立っていた。


 そこは風が吹き抜ける広大な草原。けれど、どこか現実離れした透明感があり、(そう)の足音さえも風に吸い込まれていくようだった。


「……これは、わたしの心の中?」


 誰もいないはずの空間に、風が囁く。


『これは、名の世界。名に結ばれた者の心が映し出される場』


 響いた声は、どこかで聞いたことのあるような、懐かしさを帯びていた。


 そこに、ヒューラの姿が現れた。けれど、いつもの少年の姿ではない。

 風のように淡く、幼子のようでもあり、同時に年老いた者のような目をしていた。


「ヒューラ……?」


『わたしは、君が名を与えたもの。その名に、君の願いがこもっている』


 ヒューラの姿が揺らぎ、いくつもの形を取る。風、光、子どもの姿、誰かの影……。


『その願いが、私を縛るか、解き放つか──それは、君の魔法次第』


 試練は、名の真の意味を問うもの。

 そして、魔法使いの“心のかたち”を映す鏡だった。


 (そう)は深く息を吸い、自分の胸に問いかけた。


 ――わたしは、なぜ名前を与えたのだろう?


 名を呼ぶということは、その存在を信じ、肯定すること。

 呼ぶことで、存在が力を持つ。


 「ヒューラ……君は、わたしにとって、風そのものだ。

 けれど、ただの力じゃない。僕と共にあって、笑ってくれて、怒って、支えてくれる……“君自身”なんだ」


 その言葉に応えるように、ヒューラの姿が収束し、少年の姿となった。

 その瞳が、風の色にきらめいていた。


『ならば、我も応えよう。名に込められた願いに。君の風として、君の魔法として』


 試練の世界が静かにほどけていき、(そう)の視界が現実へと戻ってくる。


 目を開けたとき、ヒューラとアウラスが見守る中、(そう)の魔法の気配が一段階、深く変化していた。


「……終わったのか?」


「いや、始まったばかりだよ」


 ヒューラが微笑む。


 風は再び吹き始めていた。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。


少しでもそうの物語に風を感じていただけたなら嬉しいです。


次回は、風に導かれ、奏が“都市と国家の境界”に向かう場面が描かれる予定です。お楽しみに!


感想やお気に入り登録をいただけると励みになります。どうぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ