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風の子と魔法の旅路 ~風のことばを探して~  作者: ましろゆきな
第五章、名の国アラウィン

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第二十三話、封じられた名の書庫

忘れられた書物の中に、過去の声が眠っています。

封じられた名に触れることで、奏たちは次なる場所へ進む鍵を手にします。



どうぞ、そうの心の旅路を見守ってください。 

 翌朝、(そう)はエイルに導かれ、学舎の地下へと足を踏み入れていた。


 そこには、一般の生徒が立ち入ることのない“封じられた名の書庫”があった。


「ここには、制度にそぐわない名の記録や、かつて禁じられた名の魔法の研究が保管されている」


 エイルは重々しく言った。


「ここで君に見せたいものがある」


 書庫は石造りの古い空間で、壁一面に並ぶ書架には無数の巻物や魔道書が収められていた。

 いくつかの棚には、魔力によって封印された本が浮かぶように漂っている。


 エイルが手を伸ばしたのは、銀灰色の革表紙に、名の記号が刻まれた一冊の古書だった。


「これは、アラウィン建国以前に使われていた“真名の律”だ」


 (そう)はページを開き、目を見張った。

 そこに記されていたのは、名と魔法の本質を問う言葉だった。


「名とは、魂と交わされる誓いであり、他者との絆によって響くもの──」


 その思想は、今の名の制度とは大きく異なっていた。


「……この本の内容、なぜ禁じられているんですか?」


「かつてこの思想に基づいて魔法を行使した者たちは、“精霊と等しく在ろうとした”んだ」


 エイルはゆっくりと答える。


「だが、それは既存の権力にとって脅威だった。名を統制することで支配していた世界で、対等な契約は“秩序の破壊”と見なされた」


 (そう)は思わず拳を握った。


 その時、書庫の奥から風がふっと動いた。


 ヒューラとアウラスが、黙って扉のそばに立っていた。


「ヒューラ、アウラス……いつの間に」


「呼ばれた気がしたんだ。君の気持ちが、ここに向かって伸びてた」


 ヒューラが微笑み、アウラスが静かにうなずいた。


「その本……僕、見たことがある気がする」


 アウラスの言葉に、(そう)とエイルが目を見開く。


「君の記憶のどこかに、かつてこの書があった……?」


「たぶん……僕が名を失う前、誰かがこれを読んでいた」


 その言葉は、名の魔法制度の闇にさらなる深みを与えた。


 エイルは深く頷いた。


「君たち三人は、これから名の魔法の“外”に出る必要がある。古代の地──“忘れられた契約の庭”へ」


 (そう)は、その響きを心に刻んだ。


 ──名を結び、名を呼ぶ意味を、もう一度確かめるために。


 風が、書庫の静けさの中で、そっと頁をめくった。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。


少しでもそうの物語に風を感じていただけたなら嬉しいです。


いよいよ、物語はアラウィンを出て「契約の真実」へと向かいます。

過去と向き合いながら、次の地へ──。お楽しみに!


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