表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/10

霧の館5

--- 大広間 ---

担ぎ込まれた僕が目にしたのは、部屋の中央に置かれた長机を囲み、神妙な面持ちをする人々だった。

僕と同様に予期せぬ形でこの部屋へと集められたのか、怪訝そうにしている様子がちらほらと見受けられた。

キリは彼らの注目を充分に集めた事を確認すると、担ぎ上げていた僕を少し乱暴な形で放り投げた。


「紹介するよ」


着地の際にバランスを崩し、よろけながら彼らの前へと歩み出る。


「この子はコガネハラ ユキト君といってね、昨日この街へやってきた商人だ」


彼らは、じっとこちらに視線を送る。

このまま延々と静寂が続くかと思われたが、長机の最奥に座る初老の男が口火を切った。


「.........そんなことはどうでもいい。その坊主が誰で、何者なのか、そんな事を聞きに来た訳じゃあない。」


静かな、しかして骨の隅まで染み渡る様な低音が、僕を刺す。

キリはというと「そうカッかするなよ、アキラ」と、相変わらずの様子だった。

(一体全体何がどうなっているんだ...........)


「あの、突然の事で状況が飲み込めていないのですが。どうして僕はここへ連れてこられたのでしょうか....」


と、キリへと視線を伸ばしながら、大広間へ集まる彼らも含める形で現状の説明を求めた。

するとその言葉を聞いてか、アキラと呼ばれていた男が一層と顔を険しくしながら、わなわなと唇を震わせる。

小さく「こいつ......!」という言葉が漏れ、今にも"殴り飛ばしてやる"という様子だったが、意外にも口を開いたのは別の男だった。


「コガネハラくん、といったね。すまないが状況を説明する前に、君に確認しなければいけないことがあるんだ」


言うと、男は席を立つ。

スラっと伸びた背丈に丸ぶち眼鏡の柔和な顔がついており、歳の頃は先程のアキラという男と比べ一回り若い青年の様に思えた。

そのまま僕の前まで足を運び「この男の顔に見覚えはあるかい?」と、懐から一枚の写真を差し出してきた。


「.......っ!」


彼の差し出した写真には、胸に大きな風穴を開け、血をまき散らしながら倒れている男が写しだされていた。


「ぉえっ!!」


たまらず嗚咽を繰り返し、その場にへたり込む。


「もう一度聞くよ」

「この男の顔に、見覚えはあるかい?」


っ!

一体なんだというのだ。

体が震えるのを必死に堪え、再度彼の言う惨殺死体へと視線を戻す。


「し、しり........ません」


消え入るような声で、青年の問いに答える。


「そうか。君は、この男の顔を知らないんだね」


こくり、と頷く。

彼は、合点がいったように小さく「そうか.....」と呟き、成り行きを見ていた人らへ呼びかけた。


「聞いたかい、やはり彼は知らないみたいだよ」


その場にいる全員が僕を睨む。

助けを求めるようにしてキリの方へと視線をやるが、何やら考えこんでいるようで、まるでこちらに気づく様子ではなかった。


「あのっ、どういうことですか!」

「さっきの写真は一体........」


青年は、僕の問いに答える。


「この写真は今朝撮られたものでね、殺されている男はこの街の管理人なんだよ」

「名を サジョウ セイラ という」


なっ!


「君も、()()()()()()知っているんだろう?」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ